【不登校】小学校低学年・中学年の「同伴登校・親子登校」

毎朝一緒に登校してやったり、授業中でも近くで見守ってやったり別室で待機してやったりと、「同伴登校」とはまさに「親子密着登校」といった感じです。以前は「小学1、2年生」の定番の再登校のステップの一つだったのですが、このところはお母さんの活躍の仕方を工夫していただいたり、子どもさんのタイプ・性別によっては「小学5年生」ぐらいまで応用できるようになっています。

同伴登校は、お母さんにとって「時間」をとられるだけでなく、授業中に過ごす場所がどこかによっては「夏は汗だく、冬は冷えとの戦い」という過酷な条件を強いられることもあります。それでも「私が一緒だったら行けるというなら!」と、毎日毎日がんばっておられるお母さんがたくさんおられるのです。

もちろん、不登校のカウンセリングでは少しずつでもお母さんの負担が軽くなることを視野に入れてすすめます。同伴登校しているうち、子どもさんが「担任の先生」「クラスメート」、「授業」などに少しずつ慣れていくことで、学校に対する安心感が生まれて(=登校不安が減って)きます。すると、「お母さんの同伴の必要性」が次第に低くなっていくのです。

一方、お母さんが同伴している時だからこそできることがあります。それは「学校」という「現場」を子どもさんと一緒に体験していることです。子どもさんの表現力はもちろんのこと、学校での一日の記憶を再現するには限界があります。しかし、お母さんが一緒に現場を目にされることで「○○君はしょっちゅう先生に叱られてるねー」「担任の先生って授業中は早口なんだねー」「前の席の子がしょっちゅう振り向いてたけど、嫌じゃなかった?」など、お母さん目線での感想(観察)を話してやることもできるのです。子どもさんにすると「日常のこと」「一つ一つは大きなストレスではないこと」などはなかなか記憶に残りにくいもの。そこをお母さんが補ってあげるわけです。

やがて、お母さんが途中から帰ってしまっても、お母さんから教わった見本を元に「今日の○○君はこうだった」「今日は前の席の子はねー」と話せるようになってくればしめたもの。このような「登校した時のストレスを上手に表現・再現できる力」は安定登校・継続登校には是非とも必要です。こうしてお母さんがついていてやらなければならない時間が短くなってくると、ついには「一人立ち(一人で登下校)」という形にもっていくこともできるのです。

2014.12.04  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

2014.11.20

1.【不登校】小学生の不登校。再登校後のフォローもしっかりと!

不登校だった子がようやく登校する気に。これまで、クラスメートや担任の先生からこまめに連絡をもらい、休みの日には遊びに誘ってもらったり。一方の親御さんもカウンセリングでのアドバイスを受け、必死な対応の毎日だったと思います。 […]

2014.11.21

2.【不登校】会話の少ない時は「テレビ」などを活用して!

子どもさんが不登校やひきこもりになると、親子の会話も減ってしまうことがあります。一生懸命話しかけると嫌がられ、同じことを何回か言うと「しつこい!、うるさい!」の一言どまり・・。会話が少なくなると家庭の雰囲気も次第に暗く・ […]

2014.11.21

3.【不登校】小学生の不登校。「保健室」を拠点に教室登校へ

学校には行っているものの、なかなか教室には入れず、まずは保健室に。小学生の中には「保健室」を拠点とし、そこから少しずつステップアップしながら「教室」登校にこぎつけるケースが意外と多いのです。 数十人を受け持っている担任の […]

2014.11.26

4.【不登校】小学生の不登校。自分から友だちを誘えない内気な子

小学生の不登校の子は、学校(授業)のある時間帯は家でひっそりしているものの、放課後になって友だちから遊びの誘いがかかると、すんなりと行ける子がいます。放課後や学校の休みの日ならば近所の公園で遊ぶこともできるし、自宅で数人 […]

2014.12.04

5.【不登校】小学校低学年・中学年の「同伴登校・親子登校」

毎朝一緒に登校してやったり、授業中でも近くで見守ってやったり別室で待機してやったりと、「同伴登校」とはまさに「親子密着登校」といった感じです。以前は「小学1、2年生」の定番の再登校のステップの一つだったのですが、このとこ […]

2014.12.09

6.【不登校】小学生のさみだれ不登校は、もう一歩で安定登校!

小学生のうちは、毎朝のように学校に行き渋ったり、実際に何日か休んでしまった場合でも、「何日かに一回は登校できる」という子がいます。いわゆる「さみだれ不登校」です。さみだれ不登校は、当センターのカウンセリングでは「安定登校 […]

2015.01.18

7.【小学生の不登校】二学期の終わりに再登校できた子への親の期待

なかなか再登校ができなかった子でも、小学生の場合、二学期の後半、特に12月になると随分と授業内容が緩やかになるようです。 面談・懇談のある一週間は午前中だけの授業。それに、担任の先生の配慮によっては、「お楽しみ会」や「ク […]

2015.05.19

8.【小学生の不登校】担任の先生の「これる時にきたらいいよー」という配慮が報われない時

担任の先生の中には、毎日お忙しいにも関わらず、不登校の子がいつでも来れるようにとの配慮から「いつ来てもいいからねー」と、子どもを思いやった言葉をかけてくださる方がおられます。もちろん、そのお陰でちょっとずつ学校に行き始め […]

2015.07.09

9.【小学生の不登校】弟や妹をいじめる子

小学生の不登校の子にとって、気になる事は「再登校」「勉強の遅れ」「友だち」だけとは限りません。意外と家庭の中にも気になる事があるのです。その一つが「弟・妹」たちです。 特に弟や妹が小さい場合(0才~幼稚園)、どうしても母 […]

2016.03.01

10.【小学生の不登校】わざと親に叱られようとする子(暴言・暴力)

「わざと悪いことをして母親に叱られよう」という、いわゆる「親の気を引く行動」は、幼児(幼稚園児)や小学校低学年の子に多くみられる傾向です。子どもさんがまだまだ小さくて、親の方が力や口で勝っているうちは、「手のかかる子だな […]

関連記事

2013.12.25

【不登校】「別室・放課後登校」と「冬休みまでの登校ペース」

今年は遅い学校でもクリスマスまでには冬休みに入ったようです。「別室登校(保健室登校・会議室登校・カウンセリングルーム登校)」や「放課後登校」をしてきた不登校の子にとってもしばしの骨休みです。 一方、親御さんにとっては、こ […]

2014.12.05

家庭内暴力の相談で 母と兄と妹の三角関係

中学一年と小学4年の兄妹間の相談です。 お前は○○(妹)だけが大事なんだろ ○○ばかりに買ってやってるじゃないか 等お母さんに対する兄の暴言がどんどんひどくなってきました。親の目の届かないところでは妹に対する暴力もエスカ […]

2024.04.25

リストカットをするお子さんの心理と
説明会でお話しした内容の問題集5問

「イキイキと学校のクラブの部長を務めていると思っていたわが子が、実はリストカットをしていて、子供部屋のゴミ箱に、血の付いたティッシュが捨ててあるのを見つけてしまった。」「学校の先生から、あなたのお子さんはリストカットをし […]

記事一覧へ