令和3年みっつの明かり

当センターでは、治療を進めていく中で親子の相性が良くなることは大切な要素のひとつです。 親子関係がうまくいき始めると、その過程で子供には色々な良い変化が起こってきます。 新年はじめは、3組の親子の明るい笑いをお届けしたいと思います。

〈カニばさみ〉

親子関係が良くなってくると、子供が自主的にお母さんの肩たたきをしてくれるようになったという話はよく聞きますが、「カニばさみ」をしてくれた話は聞いたことありますか?!

20代のゆうこさんは以前、自室に引きこもった状態で隠れて過食を繰り返していました。過食をしたあとは不機嫌になり、食材を買ってくる親が悪いと責めました。お母さんは、そんなゆうこさんに対してうまく対応できず、反論したり言い合いになってしまいます。ゆうこさんは部屋に引きこもったり家出をすることもあり、不満が募り分かり合うことができずにお互いが苦しみました。

そんなゆうこさんが、今はお母さんにちょっかいをかけたくて仕方がないようです。お母さんがリビングでTVを観ていると、ゆうこさんがススス・・とやってきます。足でお母さんの体をぎゅっと挟むと、こう言いながら笑いました。
「カニばさみ~ 捕獲~!」

〈カニばさみ〉

                                     

〈ネズミの穴〉

暗くてどこか寂しそうな音楽が小さく漏れている中学生のしょうごさんの部屋の前に、お母さんはそっと夕ご飯を乗せたお盆を置きました。部屋の中に入ることはもちろんドアをノックすることも許されません。しょうごさんは不登校が続いており、家庭内暴力で両親を困らせることもしばしばです。しんどかったとき、家の中で暴れまわり自分の部屋の壁に大きな穴を空けたこともあります。その後のカウンセリングにより再び学校に通えるようになり、気持ちも少しづつ安定しました。食事も家族と一緒にとることができるようになりました。

やがて家族が自分の部屋の中に入ることも拒まなくなると、さっそく入ってきたお父さんに言いました。
「これ、でかいネズミが空けたんや」
しょうごさんが指を指すその先には、かつて自分で空けてしまった大きな穴が。
お父さんは少しはにかみながら
「え~!?お前がどついたんちゃうか?」
と、穏やかに刺激しないよう言いました。久しぶりの何気ない会話のやり取りです。
「いや違うで。まわし蹴りで空けたんや!」
まさにひねった返しです。

しょうごさんは、幼い頃のようないたずらな笑顔でニカっと笑いました。しょうごさんの部屋から流れてくる以前とは違った明るい音楽を、隣の部屋でお母さんが聴いていました。

〈ネズミの穴〉

                                    

〈父親譲り〉

なおきさんの部屋は一日中真っ暗です。誰かと話すことも明かりをつけることもないまま布団をかぶり、ずっと引きこもって暮らしていました。その後は徐々にリビングに出てくるようになり、お父さんお母さんがいる同じ空間でテレビを観れるほどになりました。だけど親御さんは、どんなお笑い番組を観ていても無表情のままなのが気にかかります。

日々は流れていき、ある日「爆笑レットカーペット」を観るなおきさんがクスっと笑うところを見つけました。12月に入ると「M-1グランプリ」を観るなおきさんがははは…と笑うようになり、さらに年末の「ガキの使いやあらへんで 笑ってはいけない○○」の頃には、「父さん、方正おもしろいな!がはははは」とお腹を抱えて笑っていました。

当センターに来所された当初、不安で不安で仕方がないといった表情をしていたお父さんでしたが、
「先生、あいつ声がでかいんですよ!がはははは」
めいっぱい笑いながら、私にそんなことを話してくださいました。「笑い方はお父さん譲りですね」とこっそりカウンセリング中に思ったことは秘密です。最近は夜になると、なおきさんの部屋の明かりがついているそうです。

〈父親譲り〉

                                      

今年は明るい一年になりますように・・・

※ 記事は、当センターに来所されている方々複数の事例をもとに作成しています。登場する名前は仮名であり、ご本人が特定されないようにしております。

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