家庭内暴力

(子から親、兄弟間)

大きく分けて2パターン

軽症

軽症パターンは、親が子どもにとって痛い所を突いてしまい、それに対して子どもがうまく反論できないために暴力という手段に出ている。

重症

重症パターンの場合は、子どもが過去の恨みや将来の不安を抱えている。そして将来に絶望して暴れるのですが、その暴力の程度がすごく激しい。重症になると、親が刺激していなくても本人が怒ってくるので、刺激しないように気をつけるだけでは暴力の解決に至らないのです。

実は・・・ 重症の方が意外と解決しやすいことも多いです。なぜかと言うと、親御さんの危機感がとても高いからです。そのため、こちらが差し上げたアドバイス通りの対応を、親御さんが早く身につけて下さるのです。 また、親御さんの危機感(緊張感)が高いと、カウンセラーが気付きを促す言葉を親御さんに少し伝えるだけで、「この状況の時は子どもにこう対応すればいいな」というふうに、自らどんどん気付いていって下さるということも多いです。すると、お子さんの荒れ方の頻度や程度に変化がみられ、家庭内暴力の解決の兆しが見えてきます。 ⇒ 家庭内暴力の五段階

どんな人が家庭内暴力をするのか?

どういう人が家庭内暴力を起こすのかというと、やはり執着心の強い人です。 執着心が強い人には、ひとつの物事をやり遂げる、興味のあることに高い集中力を発揮するというプラスの側面と、いつまでも何かが気になってしまうというマイナスの側面があります。 そして、どうすれば自分の人生をより良くできるのか、それを掴みあぐねている人が多いです。“何とかしたい”という気持ちがあるものの、どこに発揮したら良いのか分からない。故に、そのエネルギーを家族にぶつけてしまっているのです。 彼らの主張の裏にあるのは 「俺は悪くない」 「俺は親の言う通りにしただけだ」 「だれが俺を貶めた」 という(親に分かってほしい)気持ちです。 また、暴れている時だけ人に対して本音や溜め込んだ気持ちを吐き出せるため、その方向に行ってしまうということもあるでしょう。今までうまく自分の気持ちを表現してこられずにいたのです。 普段は人目を気にする人が多いです。しかし、興奮すると見境がなくなってしまい、近所に怒号が聞こえてしまっていても止まらない場合もあります。 家庭内暴力(配偶者間を除く)を起こす人のうち、勤めていて、ちゃんとした社会生活を送れている人は一部です。多くが引きこもりの人です。 学生で家庭内暴力をしている人は、学校では割と大人しく素直な子なので、学校の先生が家庭内暴力をしていると知って驚くというケースが多いです。 割合としては男性の方が多いですが、なかには女性もいます。 暴力の矛先が兄弟へ向かうケースもあります。兄弟に対して支配的、強権的に振る舞い、自分のルールを押し付けたりします。

なぜ家庭内暴力をしてしまうのか?

きっかけは?

家庭内暴力のきっかけは不登校や引きこもりなど、人生における何か挫折をきっかけに始まることが多いです。

理由は?

  • 子どもが親に対する過去の恨みを溜め込んでいる
  • 自らの将来への不安(絶望感)が強い
  • 自分の気持ち(イライラやモヤモヤ)のぶつけ方が分からない、解消の仕方が分からない
  • などが挙げられます。 中には、暴れている時だけ親が自分の話をちゃんと聞いてくれたり注目してくれるから、暴力行為をするという人もいます。

    家庭内暴力の被害

    物に当たる

    ・コップを投げる ・テーブルを叩いて大きな音を出す ・イスを投げて冷蔵庫を凹ませる ・テレビの液晶を壊す ・壁を殴って40cm四方の大きな穴をあける ・本やアルバムを破く ・皿を床に落として割る ・カーテンを切り刻む ・窓ガラスを割る ・親が大事にしている物を壊す、あるいは捨てる など

    親への暴力

    ・足で親の腿や脛を蹴る ・親に向かって物を投げてくる ・脇腹を蹴り上げる ・馬乗りになって暴力を振るう ・親の顔を拳で殴る ・興奮して包丁を持ち出し暴れる ・肋骨を骨折させる など

    親御さんにお会いすると、身体に青あざができていることがあります。

    休息を奪う

    夜中に急にスイッチが入って「お前ら起きろ!!」と親を無理やり起こす。こういった子どもは、穏やかに過ごしていると思っていたら、突然不機嫌になったりするので、親は何を言ったら怒り出してしまうのか、常にハラハラしています。

    緊張が和らぐことがありません。 親への暴力

    親は逃げようとするが・・・

    親は子どもの暴力に耐えられなくなり、親戚の家やホテルなどに逃げる。しかし、逃げられないように出口を塞ぐ子どももいます。 また、母親に対してのみ暴力を振るう子どもがいます。父親が不在の時を見計らって暴力を振るうのです。耐えきれなくなった母親が逃げると、風呂場まで追いかけてくる子どももいます。父親が残業や出張となったら、母親は怖くてたまらない。「お父さん、お願いだから帰ってきて」と泣いて電話をかける母親もいます。 緊張が和らぐことがありません。 母親がターゲットになることが多いのですが、母親という弱い所を責めて、実は父親をターゲットにしているということもあります。ある意味で母親を人質とした上で、父親に「○○買ってこい。言うこと聞かなかったら・・・」と迫ってきたりします。

    子どもの要望

    「俺の就職口を探してこい!」 「今すぐ金を用意しろ!」 「嫁を1週間以内に見つけてこい!」 中にはこういう無理難題を言ってくる子どもがいます。 つまり親に対して「俺の人生、お前らが何とかしろ!」と訴えているわけです。 物に当たる

    親のNG対応

    家庭内暴力に対するNGは当然、反論することです。あるいは、子どもに「あんた、そんなの気にしすぎやで」など言ってしまうこともNGです。 また、親は何を言ったら子どものスイッチが入ってしまうだろうかと心配しているので、その結果、黙ってしまうことがあります。しかし黙ったら黙ったで「何か言えや」と責めてくる子どももいます。 お子さんの状況と性格によって、親御さんの言動に対する反応が変わってきますので、親御さんには、お子さんに合ったきめ細かい対応が求められます。

    警察を呼ぶこと

    警察を呼ぶ親御さんは多いです。もちろん緊急に呼ばなければならない場面があります。しかし、たとえ警察が来たとしても、警察官に対しては冷静に対応できる子どもが多く、結局のところ警察官も帰ってしまう。警察が帰ってから「お前ら、よくも警察を呼んだな」と親を責めてくる場合もあります。 警察を呼ぶこと

    子どもから離れた場合の電話連絡はとても大事

    親御さんが身の安全を守るために、子どもから逃げなければならない場面もあります。裸足で逃げ出し、ホテルやアパートを探す親御さんもいます。 ただ、逃げた時に子どもから何度も電話がかかってきて、「タダじゃ済まないぞ」と脅されることがあります。この子どもからの連絡を無視すれば、あとから「何で電話に出なかった」と責められる。反対に、電話に出たとしても何かひどいことを言われる。 逃げた時に子どもから何度も電話がかかってきて、「タダじゃ済まないぞ」と脅されることがあります。 こういった難しい場面で、どう対応するか。当センターには、親御さんに伝えられるノウハウがあります。 まずお子さんから離れた場合に、親御さんから電話連絡をすることはとても重要です。

    親御さんからの電話連絡は、要件を伝えたり、子どもを落ち着かせるためだけでなく、会話の仕方によって子どもを成長させるチャンスにもなります。 離れている時は関係改善のまたとないチャンスです。 なぜなら、親御さんは暴力を振るわれる心配がないため、怯えることなく直接会っている時より落ち着いて、親子間のコミュニケーションを図ることができるからです。 離れた瞬間から関係改善は始まっています。

    なぜ親が電話連絡をするのか? 家庭内暴力をする子どもには、親への依存心見捨てられ不安があるからです。 お子さんから離れると言うことは、やむを得ない決断だろうと思いますが、お子さんとの関係を切ってしまっては、親子の関係は(恨み)で止まってしまいます。 電話を通じてどのように安定した関係を構築するか?は、かなり専門的な助言が必要な場合が多いと思います。 子どもを家に置いてきた罪悪感を感じるよりも、どのようにコミュニケーションをとったらいいのか工夫を始められるのが大切です。 また、当センターにアドバイスを求められたとしても、一度で完璧なアドバイスなどできません。 親御さんとお話しして経過を見ていく中で、お子さんにあったコミュニケーションの取り方が見えてくるのです。 辛抱強くお子さんとの関係を穏やかなものに作り直したいと思われる方は、当センターにご相談ください。

    最近増えている相談ケース

    ゲームやスマホの利用をきっかけとした家庭内暴力の相談が増えてきています。 ⇒ ゲーム依存症 ゲームやスマホの利用をきっかけとした家庭内暴力の相談が増えてきています。

    当センターの治療方針

    当センターの治療方針は、暴力を何とか凌ぎながら、子ども自身の良い持ち味を伸ばしていくことです。そのために、まずは徹底的に性格分析です。どういう性格の子どもなのか、それが分かった上で親御さんにどう対応していただくか、的確にアドバイス致します。徹底的な性格分析なしに、的確なアドバイスはあり得ません。 家庭内暴力を起こす人は、自分の人生をより良く生きたいという思いはあるのに、自信が持てない人です。ですので、彼ら自身が“自分にはまだ伸びる芽があるのだ”と気づき、希望を持てるようにしていく必要があります。そうすると将来への見通しも立てられるようになっていきます。 そのためにはご家族の協力が必要です。ご家族の協力があれば、暴力と違った表現方法を身につけることができます。将来への不安やモヤモヤした気持ちを言葉で上手に親に伝えられるようになると、それが自信に繋がったり不安の解消になるのです。 ご家族の協力が必要です。 また、当センターは本人抜きで治療を進められます。(ご家族のみの来所で、本人抜きのカウンセリング治療に長年の実績があります)この点は大きいと思います。なぜなら、家庭内暴力をしている人が、自ら治療のレールに乗ることは稀だからです。本人抜きでも解決に至ったケースが沢山あります。 そして、当センターは“できるだけ親子離さずに”の方針です。 もちろん、暴力の酷さ、危険度、親の疲労度、時間の余裕(3ヶ月凌げるかどうか)を鑑みて判断しなければなりませんが、親子を離さず効果的なコミュニケーションを図り、家庭内暴力の解決を目指しています。 当センターの治療のゴールは暴力が治まるだけではありません。 暴力に走る前のお子さんに戻るのではなく、困難を乗り越えて精神的に一回りも二回りも成長したお子さんになることを目指し、カウンセリング治療に臨んでいます。 困難を乗り越えて精神的に一回りも二回りも成長したお子さんになることを目指し、カウンセリング治療に臨んでいます。

最終更新日:2023.3.29

こちらの記事の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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