
「カウンセリングに行けば、娘は変わるのでしょうか?」
お子さんの摂食障害に悩む親御さんから、こうした言葉をよくいただきます。
カウンセリングというと、苦しい気持ちを受け止めてもらう場所というイメージを持たれることが多いようです。
もちろん、それも大切な役割のひとつです。
ただ、摂食障害の回復には、「話を聞く」だけでは届かない部分があります。
当センターでは、本人を変えようとするのではなく、親御さんとの日常の関わり方を見直していくことで、摂食障害の回復を目指しています。
なぜなら、摂食障害には「変わりたいのに変われない」という、特有の心の仕組みがあるからです。
この記事では、当センターのカウンセリングの考え方を通して、摂食障害の回復に必要なことをご紹介します。
※この記事は、2026年4月14日に当センターで行われた過食症治療説明会の内容をもとに作成しています。
淀屋橋心理療法センターのカウンセリングは、家族の日常から変化をつくるカウンセリング

一般的には、摂食障害のカウンセリングというと、苦しんでいるご本人が受けるものだと思われがちです。
しかし当センターでは、親御さんにお越しいただくことを基本としています。
それは、「本人が自分の内側を変える」のには限界があるからです。
当センターでは、問題の中で繰り返されているパターン、とくに家庭内での日常のやり取りを丁寧に見直し、親御さんが少しずつ対応を変えていくことで、お子さん自身も気づかないうちに変化が現れてきます。
そのために「何をどう変えればいいのか」を、カウンセラーと親御さんとで一緒に整理していくのが、当センターのカウンセリングです。

「変わりたいのに変われない」――摂食障害特有の心の仕組み

摂食障害を抱える方が「変われない」のは、意志が弱いからではありません。
食にこだわりを続けることが、本人にとって何らかの切実な役割を果たしているからです。
たとえば拒食・痩せへのこだわりは、客観的には自分の健康を傷つける行為に見えます。
しかし本人の中では、「痩せていることこそ価値がある」という考えが、非常に強固になっていることがあります。
まるで「痩せ教」とも言えるような絶対的な価値観の中に、本人は生きているのです。
一方、過食症では「痩せたい」という思いとは裏腹に、過食を繰り返してしまいます。
それは、食べることによって、学校や職場での対人緊張など、「外で溜まった生きづらさ」が一時的に和らぐように感じられるからです。
このように、摂食障害の症状は「本人を守るための、切実な手段」として機能しています。
だからこそ、正論や励ましの言葉はなかなか届きません。
説明会で語られた、親子の行き詰まりの実例
当センターでは、定期的に過食症・拒食症について治療説明会を行なっています。
説明会では、臨床心理士・福田俊介が「本人を変えようとすると、かえって行き詰まってしまう」というお話をさせていただきました。
実際、親御さんはお子さんを思うからこそ、「正しいこと」を伝えようとされます。
しかし摂食障害では、その“正しさ”が、かえって本人を追い詰めてしまうことがあります。
ある親御さんは、お子さんがアルバイト先での不満を話した際、「あなたにも悪いところがあるんじゃない?」と諭していたそうです。
もちろん、それはお子さんを成長させたいという親心から出た言葉です。
ですが本人にとっては、「家でも本音を出せない」と感じることにつながり、結果として過食が強くなってしまうことがあります。
・「パンを食べない」という約束を破ってしまったお子さんに対して、「全部食べたの?」と叱ったことで、激しい反発や家出に発展してしまったケース。
・「原因になっているピアノを辞めて別の道を考えてはどうか」と提案しても、「私にはこれしかない」と強く拒否され、親子関係が平行線になってしまったケース。
このように、親御さんが「良くなってほしい」と願って関わるほど、本人との間に行き詰まりが生まれてしまうことは少なくありません。
過食や拒食に向かっている強いエネルギーは、本来、その人が生きるために持っている力でもあります。
当センターでは、その力を無理に抑え込むのではなく、安心できる家庭の関わりの中で、少しずつ「生きるエネルギー」へと変わっていけるよう関わっていきます。

「心の火」を灯し直す――家族との日常から生まれる回復

精神科医師・福田俊一は当センターのカウンセリングが目指すのは、食事の量を管理することではなく、本人の内側に眠っている「生きるエネルギーの火」を灯し直すことだといいます。
そのために重視するのが、家庭という場所です。
親御さんがお子さんの「一番の理解者」となり、本人が安心して家庭で本音や不満を吐き出せるようになること。
それが、「痩せ教」といったような極端な支えを必要としない心の土壌をつくっていきます。
「家族の前では自分らしくいられる」とお子さんが感じられるようになると、少しずつ外の世界への関心も戻っていきます。
そして、好きなことや趣味に対して生き生きとした情熱を取り戻していきます。
その火が灯れば、生きるエネルギーはひとりでに健やかな方向へと伸びていくのです。
ただ実際には、過食や拒食に向かってきた強いエネルギーと、本人が本来持っている「生きる力」との間で、大きなせめぎ合いが起こります。
その中で親御さんが、不安や混乱を抱えながらも、お子さんの苦しさを理解し、関わりを続けていけるかどうか。
そこが、回復の大きな分かれ目になっていくのです。
「食べる・食べない」という症状を超えて、本人が本来持っている力を引き出していくこと。
それが、当センターが目指している摂食障害のカウンセリングです。

カウンセリングを検討されている方へ

「うちの子は、カウンセリングに行くと言わないと思う」
そんな声もよくいただきます。
当センターでは、親御さんだけお越しいただき、カウンセリングを受けていただきます。
そして、親御さんとカウンセラーとで、お子さんとの問題のパターンを少しずつ理解し、日常での関わり方を見直していきます。
すると、それまで動かなかった状況が、ゆっくりと変化し始めてゆきます。
「本人が来られないから難しいかもしれない」
そう感じておられる親御さんも少なくありません。
「このままでいいのだろうか」
「親として、何かできることはないだろうか」
そう考えながら日々お子さんの過食症、拒食症に向き合っておられる親御さんにこそ、一度ご相談いただきたいと思っています。

摂食障害(過食症・拒食症)についての記事はこちら
・摂食障害を親子で卒業するための、具体的な接し方のコツや回復のステップがわかりやすくまとまっています
摂食障害(過食症・拒食症)のページ
https://www.yodoyabashift.com/symptom/anorexia/
・アドバイスすると拒絶される…。そんな親子のすれ違いをどう変えていくのか、具体例とともに解説した記事です。
摂食障害の娘にどう接すればいいのか「もう疲れた」と感じる親御さんへ伝えたいこと
https://www.yodoyabashift.com/column/26240/
・摂食障害の娘さんと向き合い続けた母親の体験を、担当カウンセラーと医師が振り返りながら解説している動画です。
摂食障害回復事例 専門家対談動画
https://www.yodoyabashift.com/column/25679/
・動画でも取り上げた、母親による摂食障害克服体験談の原作記事です。
親子がどのように回復への道を歩んでいったのか、その始まりが綴られています。
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記| vol.1 「またみんなで食事ができるようになりたい!」
https://www.yodoyabashift.com/column/25202/

