拒食症 親の対応 問題の中心から離れた所に解決の鍵がある

12月10日金曜日、第1回目の「拒食症勉強会」を開催いたしました

以前は「摂食障害勉強会」を開催していたのですが
今回は拒食症に的を絞った勉強会でした。

拒食症に的を絞った勉強会

拒食症 親の対応:勝てるところで勝負をする

拒食症のお子さんは、日に日に痩せていきます。
親御さんは心配のあまり、
「少しは食べようよ」「痩せすぎて心配やわ」などとお子さんに言うと、
お子さんは不機嫌になってしまい、うまくいかない。
同じ様な事を何度も繰り返してしまっている。
そんなことはありませんか?
拒食症のパターンは強敵です。

この様な状況に関して、当センター所長で医師の福田は
勝てる所で拒食症と勝負をしましょう」と親御さんにお伝えしています。

拒食症のお子さんに対して、
どうしても問題の中心である“体型”や、“食べる” “食べない”の話をしてしまいがちですが
当センターでは、問題の中心から少し離れたところで勝負をします。
その方が拒食症パターンに勝ちやすいからです。

問題の中心ではなく、少し離れた周りからの勝負に勝っていくと、
子供さんにイキイキ感が戻り、自信がつき、パワーがつき
中心にある痩せていなければいけない気持ちが溶けてくるのです。

所長の福田から、お子さんの心の中心にある痩せていなければいけない気持ちが
どの様に勝負をすることで溶けてきやすくなるのか説明がありました。

臨床心理士 福田俊介による事例紹介

〜「もう病院やカウンセリングには行きたくない」〜

拒食症のAさんは、これまで近所の心療内科や大学病院に行きました。
しかし、なかなか自分に合った先生が見つからず、病院疲れをしてしまいました。

もう絶対に病院やカウンセリングは行かない」という Aさんに困り果てた親御さんは、
本人の来所が不要なカウンセリングを探され、当センターを見つけられました。

摂食障害の人たちの多くは、甘えたり、弱みを見せるのが上手ではないのですが 

親御さんが当センターのアドバイス通りにお子さんに接していただくと
様子が少しずつ変わってきました。

Aさんが、お母さんの肩に頭を乗せてきたり、
お母さんの布団に入ってくるようにもなりました。
私な、本当は寂しかってん」など、
少しずつ今まで言えなかった事も言えるようになってきました。

私な、本当は寂しかってん

親御さんが当センターに来所されてから3ヶ月後
「娘が明るくなってきた感じがします」と、お母さんがおっしゃいました。

 Aさんは確かに変わってきました。

しかし体重は下がり続けています。
親御さんから当センターに問い合わせの電話を受付けた時が30kg
 当センターに初めて来所していただいた頃が29kg
 元気になってきた3ヶ月目で28kgです。

本音を言えるようになってきた A さんはこう言いました。
治りたいし・・・治りたくないねん。

Aさんは、体重が戻ってしまったら、「もう親は私に注目してくれない」
「きっと良くないことが起こる」などと、不安に思っているのでしょう。

しかし諦めなかった親御さん
当センターに来所され、5ヵ月経った頃、
Aさんは、大学の友達と撮った写真を家族のグループ LINE に送ってきました。
(摂食障害になってから 自分が写真に写ることをとても嫌がっていたのに、何かが違うな。
自信がついたのかな?)と、親御さんは驚かれました。

体重が増えだしたのは、この頃からです。

その数ヶ月後、摂食障害を克服した Aさん
よく食べるようになり、元気だった頃の体重に戻りました。

体重が戻ると、拒食に負けた様に感じるお子さんも見られるのですが、
Aさんは、自分から選んで食べる様になったので、負けた感じになりません。
過食も全くありません。

元気に授業に参加し、サークル活動が終わった後は友達とファミレスで盛り上がります。

そんなある日のこと。
友達が、「ガストにしよ」と言いました。
Aさんはそれに対して、
「今日はサイゼリヤの気分やわ。先週もガストに行ったから、今週はサイゼリアにしない?」

今までは、体重が増えなかっただけでなく、
友達に嫌われることを気にして、自分の意見を言えなかったAさんが
上手に自分の考えを言えるようになりました。

※Aさん ご本人は一度も来所されず、拒食症を克服しました。

ご本人は一度も来所されず、拒食症を克服しました。

ご質問のコーナー

・娘が体重計に乗ってくれない
・母親の私にたくさん食べさせようとしてくる
などのご質問をいただきました。

一般的な回答は出来ましたが、そのご家庭によって状況が違いますので
より具体的な対応策がお知りになりたい場合は、
当センターにカウンセリングにお越し下さい。

より具体的な対応策がお知りになりたい場合は、当センターにカウンセリングにお越し下さい。

<親御さんが落ち着いて対応できるうちに>

所長の福田は言います。
お子さんの身長が157㎝の場合、体重が35kg以上あれば
心配な中でも、親御さんは落ち着いて対応することができる場合が多いです。

一方で、体重が35kgを下回ってしまうと、親御さんは落ち着いて対応できず、
カウンセリングがなかなか軌道に乗りにくくなってしまいます。
そのため、早めに来所されることを強くお勧めします 。

2021.12.23  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊介 戸塚光子

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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