
お子さんのゲームを取り上げようとして、もっとひどいことになった経験はありませんか。
「パスワードを変えても、隠しても、もう何をしても止められない」
「強引にやめさせるしか方法が思いつかない」
「暴言や暴力まで出るようになってしまった」
今回の勉強会には、こうした状況にいる親御さん数名が参加されました。
勉強会の冒頭、当センターの臨床心理士・福田俊介が、こんな言葉を投げかけました。
「正しい対応を知っているだけでは意味がありません。継続して、高い精度で実践してこそ、初めて効果が出ます」
子どもが変わるには、「知っている」だけでも、「一度やって終わり」でもありません。小さな実践を積み重ねたとき、少しずつ親子関係は変わり始めると福田は話します。
勉強会が終わったころ、参加された親御さんはさまざまな気づきを得られたようでした。
そのリアルな声の一部を、本記事でご紹介いたします。
※本記事は、参加者の皆さんからご承諾を得たうえで、内容を一部調整し、個人が特定されないよう配慮しております。
目次
「何をしても改善しない」――親御さんが抱える共通の悩み

子どもがゲーム・スマホを自力でコントロールできない
端末を隠した。Wi-Fiを切った。パスワードも変えた。それでもお子さんは別の端末を探し出し、夜中にこっそり起き出し、なんとしてでもゲームを続けようとする。
「思いつく手は全部試しました。」と親御さんは肩を落とします。
強引にやめさせようとするほど、子どもの抵抗は激しくなり、暴言を吐く。物を投げる。ドアを蹴る。自分でやめられない、でも取り上げられることも受け入れられない——
気がつけば、ゲームの問題よりも、親子関係そのものが壊れかけていました。
ゲーム依存により生活や学習への影響が出始めている
「夜中の2時、3時までゲームをしています」
「親がそばにいる時だけ何とか自制できるけれど、目を離した瞬間に始まる」
「期末試験の前日でも、教科書を一度も開きませんでした」
昼夜逆転、遅刻、不登校、成績の低下。ゲームへの没頭が、日常生活のあらゆる場面に影響を及ぼし始めています。
「この先どうなってしまうのか」という不安を抱えながら、どうしたらいいかわからない。その板挟みの中で、親御さん自身が少しずつ追い詰められていました。
「ゲームをやめなさい」をやめたら親子関係が変わり始めた

続いて、当センターで10か月のカウンセリングを経て、解決に至った事例をご紹介しました。
【事例】
ゲーム依存×発達グレーゾーン(中学生男子)
名門校へ進学したものの、中学2年生で不登校に
スマホとゲームが生活の中心となり、昼夜逆転。親が声を掛けるたび部屋へ閉じこもり、家族との会話も笑顔もなくなっていった。
親御さんが特に印象に残ったポイントは3つです。
✅ 昼夜逆転を直そうとしない
✅ 重症化しているお子さんに、正論は通じない
✅ ゴールばかりを見ない

このお子さんのケースでは、まず「注意をやめること」から取り組んでもらいました。ゲームも昼夜逆転も、一旦指摘をやめた。それだけで、1ヶ月後には自分からゲームの話をしてくるようになりました。やがて親子の話題が広がり、最終的に登校を再開しました。
重症化しているお子さんには、「やめなさい」という正論はほとんど届きません。まず親子の会話を取り戻し、関係の質を先に回復することが大切です。
ゲームをやめるというゴールだけを追うのではなく、関係を修復していけば、口数が増え、視野が広がり、協調性が自然と生まれてきます。
10か月に及ぶ支援の経過は、ここでは紹介しきれないほど濃密なものでした。参加された親御さんは、ノートいっぱいに講師の言葉を書き留め、何度もうなずきながら耳を傾けていらっしゃいました。
親御さんのリアルな声――グループディスカッションより

事例紹介のあと、少人数のグループに分かれて意見交換を行いました。その一部をご紹介します。
「強引にやめさせる」は逆効果だとわかっていても

スマホを取り上げようとして、パスワードを変えられて、また怒鳴って。その繰り返しで、私自身がもう限界に近い状態でした。
話を聞いて一番響いたのは、「正論が通じない時期もある」ということ。正論より先に、小さな約束を守れた時を褒める、小さな変化を喜ぶこと。頭ではわかっていたはずなのに、毎日必死すぎてその余裕がありませんでした。
視点を変えるだけで、私自身が少し楽になれる気がします。まず、怒鳴らない一日を作ってみます。
ゴールばかり見て、途中経過を見られていなかった

「学校へ行けるようになること」「ゲームをやめること」ばかりを考えていました。だから、今日も行けなかった、今日もゲームをしている、と結果だけを見ては焦り、イライラしていたんだなと。
講師のお話の中で、「子どもの笑顔が少し増えたり、会話がいつもより長く続くことを喜んでいたら、ゴールへは必ずたどり着きます」と聞き、それも回復への小さな一歩なんだと気づきました。
ゴールを見るのをいったんやめて、「今日の子どもを見る」ことをやってみます。
参加された親御さんは、ご自身のお子さんの姿と事例を重ね合わせながら、「今まで結果ばかりを見ていた」「関わり方を変えてみたい」と、それぞれ新たな視点を持ち帰っていらっしゃいました。
親御さん同士で共有された「うまくいった関わり」

参加者の皆さんは、これまでにもさまざまな関わり方を実践されてきました。
「子どもの話を最後まで聞くようにしていました」
「ゲームを取り上げるのではなく、約束を決めました」
実際に、一時的に会話が増えるなどの小さな変化もあったそうですが、その状態が長く続かず迷われていました。
その中で「これはうまくいった」と話された親御さんの取り組みをご紹介します。
親御さんの小さな成功事例

うちの子はスマホを10時間以上やり続けて暴力もふるう状態でした。スクールカウンセラーや心療内科、オンラインでもカウンセリングを受けました。
ゲームで興奮した子どもが「今すぐ買ってきて!」と暴言を吐き、物を投げたりするようになって。私も怖くて応じてしまうことがありました。でもスクールカウンセラーから「全部聞き入れなくていい。できることだけ対応し、それ以上は子どもに任せましょう」と言われて実践しました。
「ここまではお母さんがする。でも、それは自分でやってね」とできる範囲だけ応じ、それ以上は子ども自身に任せるようにしました。すると興奮が長引かず、親子ともに落ち着いて過ごせる時間が少しずつ増えてきました。
ディスカッションでは、このようにリアルに悩む親御さんと情報を共有できるところも、メリットの一つです。
なぜ「雑談」が暴力やゲーム依存の回復につながるのか
先ほどのお子さんのように、ゲーム依存から暴力へ移行するケースは少なくありません。
「親子関係を修復するために、今日からできることはないだろうか」
そんな親御さんへ向けて、次の事例で雑談の重要性をお伝えしました。
雑談が子どもの成長を支える理由

安心して話せる親子関係という土台ができることで、子どもは徐々に成長し、自制心や協調性、問題解決力などが育っていきます。その過程で、愚痴や不満が言えることは回復のサインと言えます。
「簡単にはいかないかもしれません、相手はロボットではなく、人間です。よくなったり悪くなったりを繰り返して解決に至ります。ですが、当センターが提唱する精度の高い雑談を積み重ねることで、ゲーム依存や暴力などの改善につながっていきます」と福田はまっすぐに語ります。
親御さんの気づき「雑談しているつもりだった」
「うちは雑談はできていると思っていました。」
「ゲームの話は楽しそうにしてくれる。でも、イライラや不安な気持ちは話してくれない。」
参加された親御さんは、食事中に学校の話を聞いたり、子どもが夢中になっているゲームの話に合わせたりと、会話はしていたそうです。


「ゲームをやめさせる」ことよりも、まずは子どもの世界に興味を持ち、親子のコミュニケーションを見直すことが、子どもの成長につながるのではないか――そんな気づきを持ち帰られた親御さんが多くいらっしゃいました。
Q&A|勉強会を通して質問コーナーを設けています
グループディスカッション後には、多くの質問が寄せられました。ここでは、その一部をご紹介します。
※ここで紹介する内容は一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。実際の対応はそれぞれのご家庭やお子さんにより異なります。

Q1. イライラする前に自分でゲームをやめられるようになるには?
うちの子はイライラしながらも画面に向かい続け、続けるほどさらにイライラしていきます。「もういいや」と自分で切り替えられるようになるにはどうしたらいいでしょうか。
A. 「話を受け止めてもらえた」という体験が、心の余裕を育てます。
人は心に余裕がないと、自分をコントロールすることが難しくなります。しかし、親子の会話が増え、安心できる関係が育つことで、「イライラしそうだからもうゲームをやめておこう」という判断が自然とできるようになります。
ゲームを無理に止めさせるよりも、まずは安心して話せる親子関係を築くことが、お子さんの成長を育み、自制心を育てる第一歩になります。
Q2. 雑談だけでゲーム依存は改善するのでしょうか?
A. 雑談はゴールではなく、深い話につながる入り口です。
雑談そのものがゲーム依存を治すわけではありません。
大切なのは、子どもが安心して話せる関係を築くことです。
いきなり悩みを打ち明けられる子どもはほとんどいません。まずはゲームやYouTubeなど身近な話題から会話を重ね、「この人なら話しても大丈夫」と感じられる関係を育てていくことが大切です。雑談は、そのための大切な土台なのです。
Q3.「雑談」から「深い話」へつなげるにはどうしたらいいでしょうか?
A. 雑談の比率を「子:親=7:3」にすることを目指してください。
深い話をするためには、まず家庭で「悪口や不満」を言える環境を作ることが大切です。
先生や政治家、アニメのキャラなどの文句を子が言った際、正論で返さず「それは腹立つね」と同調して聞いてあげると、「この人は否定しない」という信頼が生まれ、数ヶ月後に悩み(深い話)を打ち明けてくれる可能性が高まります。
終わりに|臨床心理士の言葉と親御さんの感想

今回の勉強会では、「何とか子どもを回復へ導きたい」「この状況を変えたい」と、切実な思いで参加された親御さんの姿がとても印象的でした。
筆者が特に心に残ったのは、臨床心理士・福田俊介の次の言葉です。

ゲーム依存の背景には、学校での人間関係や発達特性、心の傷、生きづらさなど、子ども自身が抱える苦しさが隠れているケースが多いです。
ゲームは、その苦しさから一時的に逃れるための居場所になっている場合もあります。
この言葉を聞き、ゲームをやめさせることだけに意識を向けるよりも、子どもの真の苦しさに目を向け、安心して話せる親子関係を少しずつ築いていくこと。
その関わりが子どもの成長を支え、自制心を育て、結果としてゲーム依存からの回復につながるのだと改めて感じました。
最後に、参加者の方々から寄せられた感想の一部をご紹介します。

今まで子どもとどのように関わってきたのかを振り返る事ができました。
私自身のタイミングでの声かけは、意味がない場合が多いことに気づきました。
すべてのお話が参考になりました。さっそく子どもへのアプローチを変えていきたいと思います。

我が子は重症化しているタイプだと思うので、最初は参考になるかなと思いました。
しかし、自分と子どもの関係を振り返ると、雑談しているつもりで、その雑談の中には本人を指摘することも含まれていたと反省しました。
元気には波があり、元気だと思ってもそれは成長していなかったことに気付かされました。
今回の勉強会が、ご参加いただいた皆さんの解決のヒントになれば幸いです。
当センターはいつでも親御さんの味方です。一人で抱え込まず、必要なときには専門家の力も借りながら、お子さんに合った関わり方を一緒に探していきましょう。
淀屋橋心理療法センターでは親御さん向けの勉強会を定期的に開催しています。ご興味がございましたらぜひご参加をお待ちしております。
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