不登校の「壁」を成長の「扉」に変える関わり方

更新日:2026.02.16
不登校の「壁」を成長の「扉」に変える関わり方

本記事は、2025年12月1日に淀屋橋心理療法センターで開催された「不登校を乗り越えるための親御さん向けカウンセリング説明会」の内容をもとに執筆しています。 

当日はアットホームな空間の中で、それぞれ親御さんが抱えてこられたお悩みについてじっくりと向き合う時間となりました。

この記事では、説明会で語られた内容の中から、特に親御さんの心を動かした「精神科医と臨床心理士の想い」と、「子どもへの関わり方のヒント」についてお伝えします。

今、ご家庭で悩んでおられる親御さんにとって、ひとつでもヒントになれば幸いです。ぜひ最後までお読みください。

◆ 講師プロフィール ◆

所長・医師:福田俊一(ふくだ しゅんいち)

所長・医師

福田俊一(ふくだ しゅんいち)

大阪大学医学部卒。 大阪大学精神神経科、大阪府立病院神経科にて精神医療に取り組む。 米国フィラデルフィア・チャイルド・ガイダンス・クリニック(P.C.G.C.)にて家族療法をS.ミニューチンに師事。 住友病院心療内科、大阪厚生年金病院神経科、大阪市立小児保健センター精神科に勤務。 厚生省・神経性食思不振症調査研究班メンバー(1984~1986年) 大阪大学医学部非常勤講師(2013年)

カウンセラー:福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

カウンセラー

福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

臨床心理士・公認心理師(国家資格) オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science) 自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業 不登校過食症リストカット で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー

不登校で悩む親御さんの体験談

「子どもが何を考えているのか、わからない」
「なぜ学校に行きたくないのか、話してくれない」
「好きなことがなく、ゲームばかりしている」

今回参加された親御さんは、そんな切実な悩みを抱えて会場にいらっしゃいました。 参加された親御さんの体験談を一部ご紹介します。

小学生の女の子の親御さん
不登校の理由がわからない(小学生の女の子の親御さん)
「週に1回、特に月曜日になると学校に行きたがりません。理由を聞いても答えず、家では宿題や歯磨きも親が言わないとやりません。放っておいた方がいいのか、強く言った方がいいのか、対応に迷っています」
中学生の男の子の親御さん
2学期から行きたくない(中学生の男の子の親御さん)
「中学生の2学期から急に不登校になりました。友達が迎えに来ると行けるときもありますが、なぜ行きたくないのか理由は明確に話してくれません。どのような関わりをもったらよいか悩んでいます」

共通する悩みを持つ親御さん同士、深く頷き合う場面も多く見られました。
普段のお子さんとの関わりの中で、出口の見えないトンネルにいるような心境であることが伝わってきました。

不登校のお子さんに見られる原因

不登校のお子さんに見られる原因:カウンセリング(不登校)

なぜ、お子さんは学校に行こうとすると、動けなくなってしまうのでしょうか。

説明会では、不登校のお子さんに多く見られる心の特徴について、臨床心理士・福田俊介より詳しく解説がありました。

  • 感受性が強く、繊細
  • 人の反応や評価に敏感
  • 自分の本音を言葉にするのが苦手

親御さんは、お子さんのこうした姿を見ると「もっと強くならなきゃ」「打たれ弱すぎる」と心配されるかもしれません。

しかし、臨床心理士は「こうした特性は、決して弱さや問題ではありません」と強調しました。

これらは、関わり方次第で大きな力(才能)にもなり得る、その子の「持ち味」そのものです。
お子さんの性格を無理に「直そう」「変えよう」とするのではなく、まずは親御さんがその特性を深く理解し、活かしていくことが大切です。

臨床心理士:福田俊介
お子さんの性格にピタッと合った声かけを見つけることが、最も重要です。

不登校は「無気力」から起こるのか?

「うちの子はゲームばかりして、他に好きなこともなく、無気力な状態です」

実際に説明会でも、そんなお悩みの声があがりました。

ではなぜ、無気力に見える状態になってしまうのでしょうか?
精神科医・福田俊一は、お子さんの心の背景には次のような状態が隠されていると話します。

  1. 自分の「持ち味」が出せていない: 本来は素晴らしい個性を持っているのに、自信を失い、その使い方がわからなくなっている。
  2. エネルギーの枯渇: 外の世界(学校など)で戦うためのエネルギーが切れてしまっている。
  3. 不安と緊張: 無気力に見えても、内心は強い不安や緊張と戦っている。

まずは、お子さんの抱えている「壁」を親御さんが理解し、「怠けているわけではないんだ」と認めてあげることがスタートラインです。

そして、適切な会話を重ねていく中で、少しずつお子さんが成長していくサインを見つけていくことが大切です。

そのプロセスの中で、少し元気になって学校に行けたことで安心する親御さんもいらっしゃいます。でもそれでは、本当の心の成長とは言えません。

では成長するとはどういうことでしょうか?

成長とは困難を乗り越える力

成長とは困難を乗り越える力:カウンセリング(不登校)

当センターでは、「元気」だけではなく「成長を促す」という考え方を大切にしています。

親御さんは、子どもが笑っていたり元気そうだと安心し、塞ぎ込むと不安になります。しかし、臨床心理士・福田俊介は「元気(調子の良さ)は波があるため、当てにならない」と断言します。

たとえば具体的に見ていただきたいのは、以下のような「内面的な成長」です。

  • 気持ちの切り替えが早くなったか(嫌なことがあっても引きずらなくなったか)
  • 弱音や本音が言えるようになったか(強がらずに親に甘えられるか)
  • 親に交渉ができるようになったか(自分の都合を伝え、NOと言えるか)

このような成長のサインを見逃さず、お子さんの「生きる力」が育っているか。
学校に行く・行かないだけを指標にして一喜一憂せず、我が子がイキイキとした生活が送れるような成長の仕方をしているかを、長期的な視点で見ることが大事です。

不登校のお子さんの「成長」を支える親の関わり方

不登校のお子さんの「成長」を支える親の関わり方:カウンセリング(不登校)

では、その「生きる力=成長」を支えるために、家庭で何ができるのでしょうか。
今回の説明会で強調されたのは、「親子の会話」の重要性です。

ある参加者の方から、こんなご相談がありました。

親御さん
「学校に行くときと、行かないときがあります。行けた時はホッとするけど、明日からまた行かないかもしれない…。そのような不安定な状況でどんな声かけをしたらよいか悩んでいます。」

プレッシャーを与えない褒め方のコツ

学校に行けたとき、親御さんの心情としては「やっと行ってくれた」「学校へ行けたことが成長」と捉えてしまうかもしれません。
そして、「ようできたね!偉いね」などと声をかけていないでしょうか。

「これはベストな対応ではありません」と精神科医・福田俊一は話します。
この褒め方だと、「明日も行けるよね」という無言のプレッシャーを与えてしまう。お子さんの心の中に「また行けなかったらどうしよう」という気持ちが生まれてしまうのです。

では、どう声をかけたらいいのでしょうか。

例えば、「えっ!? 行けたんや」と、ただ驚くことです。
(こちらの対応は、お子さんのタイプにもよります)

これは「期待していなかった(行けるなんて思っていなかったよ)」というニュアンスを含み、プレッシャーを与えない褒め言葉になります。

参加された親御さんは、メモを取り、深くうなずきながら聞いていました。

参加された親御さんは、メモを取り、深くうなずきながら聞いていました。:カウンセリング(不登校)

親御さんの「会話」を変えるための工夫

さらに、臨床心理士・福田俊介よりいくつかのテクニックをお話ししました。その一部をご紹介いたします。

  • お子さんの興味を引き出す
    「真面目な話」ではなく、お子さんが興味のある「楽しい雑談」から始めましょう。「親と話すのは楽しい」という感覚を取り戻すことが、信頼関係の修復や、やる気の回復につながります。
  • 会話の比率は「親3:子7」
    親は話しすぎず、聞き役に徹します。親御さんが「お子さんの言葉を待つ」心の余裕をみせることで、お子さんはポツリと本音を吐き出すことが多くなります。

説明会に参加されたお母さんの中にも、「子どもと同じゲームのアプリをダウンロードして、それをきっかけに会話を増やすことができた」と、体験談をお話いただきました。

こうしたひとつひとつの親御さんの歩み寄りが、お子さんの心を開くきっかけになることを感じました。

(※ご紹介した事例はすべてのお子さんに当てはまるわけではありません。お子さんの特性には個人差があり「これをやったから正解」というわけではありませんので、専門家のアドバイスを参考にしてくださいね)

臨床心理士・精神科医のQ&Aコーナー

臨床心理士・精神科医のQ&Aコーナー:カウンセリング(不登校)

参加された親御さんから、説明会の中であがった質問を一部ご紹介します。

Q1. 兄弟で不登校です。とくに弟に手がかかり兄弟の仲も悪く対応に困っています。

(臨床心理士・福田俊介A.) 不登校のご家庭で、ご兄弟の仲が悪くなってしまうことは決して珍しいことではありません。ご兄弟が安心して過ごせる家庭環境を整えていくことは、とても大切なポイントです。お子さんそれぞれの性格を当センターで分析し、適切な声かけをしていくことで、「わかってもらえた」という安心感が生まれやすくなります。こうした関わりを積み重ねていくことで、少しずつ気持ちが落ち着き、結果的に兄弟関係がやわらいでいくケースも多く見られます。

Q2. 普段の生活でも、親がやれといってもやらないし、放っておいてもやらない状態で一体どうしたらいいのかわからない状態です。

(精神科医・福田俊一A.) 言ってもダメ、言わなくてもダメという状況で、かなり行き詰っていますね。このような状態は不登校のお子さんにしばしば見られます。こうした場合、次に第3の道を探す必要があります。それは、お子さんの心を成長させること。そのための具体的な声かけの工夫については、個別にアドバイスを行っています。

Q3.ゲームの時間を制限したほうがいいのでしょうか。

(精神科医・福田俊ーA.) 一律に制限するのではなく、お子さんの様子を伺いながら判断します。ゲームの時間を制限しても大丈夫だと判断できればそのまま進めますし、逆に制限することで裏目に出てしまうと判断する場合もあります。これらはケースバイケースですので、状況に応じて専門的に判断していきます。

親御さんへメッセージ

最後に、この説明会に初めて参加した筆者が、最も心に響いた言葉をお届けします。

「不登校は、お子さんを成長させるチャンスです」

親御さんが若く体力があるうちに、早めにつまずいてくれた。だから今、こうして向き合うことができます。

私たちが目指すのは、お子さんの目が輝き、自分の言葉でストーリーを生き生きと語り出す瞬間です。 そのために、お子さんの特性を分析し、本来の「持ち味」を活かしてあげる声かけを一緒に探していきましょう。何度も何度も会話のやり取りを添削しながら、解決の糸口を見つけます。

私たちは、イキイキと問題解決に取り組めるお子さんに育つように、親御さんを全力でサポートしたいのです。

参加した親御さんに向けられた、力強い言葉。家族療法を通して多くのご相談を解決に導いてきた確信の言葉なのだと感じました。

そして、親子の会話の持つ力の大きさに気づくことができました。

子どもが受け身ではなく、自分から積極的に話せるように育つには、「淀屋橋流・親子の会話のトレーニング」が、非常に効果的な方法であると、精神科医・福田俊一は熱く語っていました。

無理に学校へ戻そうとするのではなく、まずは安心して羽を休められる場所をつくること。その土台があってこそ、子ども自身の力で、再び前に進むエネルギーが育っていくのだと思いました。

まずは私自身も、我が子に口うるさく言うのをやめて、もっと「どうでもいい雑談」を大切にしよう、と心に決めました。

淀屋橋心理療法センターは親御さん向けの治療説明会を定期的に開催しております。ご興味のある方はぜひご参加ください。

▶ 最新の治療説明会日程はこちらをご覧ください。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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