対人恐怖症・対人緊張症タイプの不登校

「対人恐怖症・対人緊張症」とは・・・

「人と目が合わせられない」「周囲の視線が気になる」「人と話をするとドキドキする」「自分の態度が相手に不快感をあたえているのではないか」。このように、人と接する時の辛さ・しんどさを訴えて来所される方々が後を絶ちません。対人恐怖症・対人緊張症の種類には、顔が赤くなる「赤面恐怖」、目つきが気になる「自己視線恐怖」、イヤな臭いをだしていると思う「自己臭恐怖」などがあります。

「対人恐怖症・対人緊張症」は男女を問わず、10代の中高生から20~30代のサラリーマン・OLなど、比較的若い年齢層にみられるのが特徴です。共通点は「自分が相手にどう思われているか」が第一の関心事で、それが絶えず意識の根底にあるため、相手と自分との距離感をうまくつかむことができず苦しんでしまいます。対人恐怖症・対人緊張症とは、人間関係(相手と自分)の場において、自意識過剰が引き起こすやっかいな産物なのです。

学校では緊張しっぱなし

学校に通っていると、授業中、休み時間、教室の移動、給食時間、登下校の途中など、緊張する場面が至るところで待ちかまえています。そんな子がかけ込みやすいのが保健室。ところが、休み時間になると急にざわついたり、養護の先生に対して緊張することだってあるのです。学校にいるうちはほとんど安らげないと言えるでしょう。

治そうとする努力が逆効果に

他の不登校と比べ、対人恐怖症・対人緊張症タイプの子はカウンセリングに通うのをあまりイヤがりません。また、学校の先生の問いかけにも素直に応じ、自分の緊張感を細かく話す子が多いようです。それは「自分のことを詳しく知ってもらった方が治りやすい」と考えているからです。その上、自分の感情がすぐ顔や動作に出てしまいます。ここが大きなポイントなのです。緊張感を「詳しく話す」という事は、相手に「詳しく知られる」ということです。詳しく知った相手は常にその子のことを気にかけ、「どうや?」「大丈夫か?」など、よく言葉をかけてくれるようになります。こうすることで、緊張感が二人の間でよりいっそう「意識化」されることになります。詳しく話すほど、話す相手が増えるほどに余計に緊張感が増してしまうという逆効果を招いてしまうのです。

他の不安が隠れていることも

「この緊張感さえ取れればいい。他に困っていることは何もないんだ」。そんな子は実際には少ないものです。対人恐怖症・対人緊張症のきっかけをお聞きすると「授業中、ふと顔をあげたら友達と目が合ってしまった」「通学電車の中で女子高生が自分をみて笑っていた」など、それをきっかけに視線が気になるようになったという方が多いようです。しかし、実はそのきっかけとなるきっかけが存在するのです。「そろそろ受験を考える時期だけど、将来何をやりたいか今一つ決まらない」「今まで常にトップクラスの成績だったのに、他の子にぬかされるようになった」などです。今まで順調にきた子ほど自分の「あせり」や「いきづまり」は認めたくないものです。やがてその気もちは「漠然とした不安」に姿を変えてしまい、本人の意識から消えていってしまうのです。

アドバイス編

「罪のないウソ」でピンチをのりきる

対人恐怖症・対人緊張症の相談にこられる子は、カウンセラーの質問には何でも素直に答えてくれます。つまり、対人恐怖症・対人緊張症の子には「正直者」が多いのです。「正直すぎる」といっても過言ではありません。ここを調整するのが解決の第一歩です。私どもでは「罪のないウソ」でピンチを乗り切ることをお勧めしています。たとえば、友だちからカラオケを誘われて断りたい時「行きたいけど、その日は用事があるんだ」といった調子です。こうすることで「無理につきあって余計にしんどくなる」「正直に断って気まずくなる」といったことが防げるのです。罪のないウソによって相手を傷つけずに自分を守ることができるわけです。他にも、何か質問された時に正直に答えすぎず「まあまあ」「ぼちぼち」などの「あいまい表現」を使うのも一つの手です。自分の使いやすい言葉を二つ三つ用意しておくだけで、気楽に友だちと接することができ、会話も無理なくできるようになります。

自分のいきづまりを認められる子に

今まで順調路線できた子ほど、ちょっとしたピンチ(不安・失敗など)に弱いところがあります。それは、「ピンチからの脱出」に慣れていないからです。その分どうしても自分自身のいきづまりを認めにくくなってしまいます。その結果「対人恐怖症・対人緊張症があるから勉強が手につかない」という意味づけをしてしまうのです。そんな時は「趣味など自分の関心のあることをよく聞いてくれる先生」が効果的です。思う存分にしゃべっているうち本人の気もちの中に「安心感」がうまれます。この安心感が潜在意識の中にある不安や弱音を呼び起こしてくれます。「勉強の遅れが気になる」「進路がなかなか決められない」といった本来の不安が出てくればしめたもの。先生の方から「よく言ってくれたね」と一言添えていただくとより効果的です。根が正直者ですから次から次に不安を話すうち自分のいきづまりを認められる子になります。

学校の先生からみた「対人恐怖症・対人緊張症タイプ診断」チェックリスト

普段からあまりウソをつかない。

ウソをついても表情などですぐにわかる。

自分の声・表情・話し方などを気にする。

友達の輪の中にいてもあまり楽しそうでない。

時々机に顔を伏せている。

もともとまじめで優等生タイプである。

最近、急に成績が下がってきた。

授業中はあまり顔をあげない。

時々周囲を気にしてキョロキョロしている。

話し方が単調で会話があまり盛り上がらない。

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