明るい不登校

急増する「明るい不登校」

不登校になった初めのころは部屋にこもったり、親と口をきかなかったT夫。今ではTVをみて笑ったり、雑談もできるほどに落ちついてきた。気分のムラもなく学校に行っていないことを除けばいたって普通。そんな「明るい不登校」がここ五年ほどで急増しています。

不登校が生み出す「不協和音」

子どもが不登校になると親子関係や教師との関係がギクシャクしてきます。最初のころは親も教師も必死になって「どうしたんだ」「何で学校に行かないんだ」と問いただします。しかし、当の本人は理由を答えないばかりか、学校の話がでるたびに顔色が険しくなったり物にあたったり。担任の先生が訪問しても、何となくそわそわして会話が続かなくなります。やがて、お互いに気をつかったり、言いたいことをガマンするように。すると、少しずつ明るさが戻ってきて雑談には応じるようになってくる・・・。初めのころと比べると、ずいぶんと落ちついているし、話もしやすくなってきた。学校の話をだすとまたイヤな雰囲気になるだろうな・・・。

「見守りましょう」は要注意!

ほんの数年前まで不登校といえば大問題でした。世間体は悪いし、親も子も焦りと罪悪感でいっぱいでした。不登校=腫れ物だったのです。ところが、その数の急増とともに、不登校に対する社会の認識は一変しました。「無理じいはいけません」「本人の自立を待ちましょう」「様子を見守りましょう」といった意識が親や教師はもとより、専門家の間にさえ浸透してきたのです。おまけに昨今の大検ブームが「学校だけが全てではない」という選択肢の多さをもたらしました。もちろん、このような対応や大検制度が悪いわけではありません。「不登校になる」「再登校しない」にはそれなりのわけがあるわけです。なのに「学校の話題をさけたがる」。重要な部分が不明確なまま放置することで、かえって不登校の長期化をまねいてしまうおそれがあるわけです。

意外とやっかいな「明るさ」

「学校に行かないのなら、せめて家の中では明るくしてほしい」、誰もが願うことでしょう。しかし、ここに大きな問題点がひそんでいます。人間には喜怒哀楽があり、何かでつまずいた時には「怒」や「哀」の感情が高まってきます。もちろん不登校も例外ではありません。私たちのカウンセリングでも、うまくいくほどに、怒(不満・批判)、哀(不安・迷い)などが、子どもさんの口からどんどん飛び出すようになります。これは、いかなる感情でも自由に話せる環境(関係)ができてきたからなんです。「明るさ尊重主義」は、これらの感情にフタをしてしまう可能性があるのです。「○○が嫌い」→「そんなこと言わないで」、「○○が気になる」→「気にしないで、大丈夫よ」。このような発言にフタをすることで、出しやすい感情がますます制約されていくわけです。

アドバイス編

子どもさんへ:不安に向き合える力を

一番大事なことは問題点を棚上げにせず、じっくりと悩むことです。根気がつづかなければ、親や教師の力を借りることも必要です。相手を聞き役にして、頭に浮かんでくる感情をどんどん話すわけです。「○○に腹がたつ」「○○がイヤ」「○○が気になる」「○○ができないんじゃないか」といったマイナス感情を出すことで、不安に向き合う力がついてきます。何日にもわたってトコトンはきだしているうち、「よし、こうしよう」という解決策が浮かんだり、「まあ仕方がないや」というひらきなおり精神がついてきます。

親御さんへ:経験不足の子どもへ積極的な援助を

いくら明るくても不登校は不登校。これを人生の危機としてとらえる必要があります。親と比べると子どもは何事にも経験不足です。危機を脱するにはどうしても親の力が必要になります。不安から逃げたい気持ちを親の力で向き合える力に。会話の主導権をとらせてあげることで、その芽は確実に伸びてきます。会話の中に不安がでてくるだけで力はついてくるのです。仕事に忙しい父親も休みの日には子どもの好きなことを一緒にやってやったり、日ごろの母親の努力をねぎらったり。役割分担しながら協力し合うことでさらに効果が上がります。

先生方へ:日ごろの情報交換と再登校時のサポートを

学校とのパイプがつながっているだけで、親の積極性もちがってきます。なにより、家族だけで孤立して取り組むより担任の先生が気にかけてくれることで安心感につながります。日ごろからクラスの情報を流していただいたり、電話や訪問で何気ない話をしていただくだけで、「学校」への意識の風化を防いでくれるのです。再登校の話が出てきたときも同様です。日ごろからのパイプがつながっていると、親や子どもにとって「校門まで迎えにきてほしい」「クラスメートに○○と言っておいてほしい」など、段どりにいての援助をお願いしやすくなるのです。

学校の先生からみた「明るい不登校」チェックリスト

家族とは雑談ができているようだ。

一日中、好きなことをして過ごしているようだ。

家庭内で「学校・登校・勉強」といった言葉がタブーになっている。

訪問しても趣味の話なら十分にできる。

学校の話を向けるとはぐらかされる。

不登校の理由が見あたらない。

「楽しい・うれしい」といった表現はできる。

「不満・文句」をほとんど言わない。

どんな質問をしても、じっくりと悩まない。

2019.04.17  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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