【不登校】小学生のさみだれ不登校は、もう一歩で安定登校!

更新日:2014.12.09

小学生のうちは、毎朝のように学校に行き渋ったり、実際に何日か休んでしまった場合でも、「何日かに一回は登校できる」という子がいます。いわゆる「さみだれ不登校」です。さみだれ不登校は、当センターのカウンセリングでは「安定登校の一歩手前」であると考えています。何日かに一回でも登校できるということは、「イヤなことや不安なことはあるけれど、完全拒否(完全不登校)ではない」ということなのです。

また、さみだれ不登校が何より好都合なのは、週に一回や月に数回の登校であったとしても、学校という「現場」を「身近」に経験しているということです。ずっと休んでしまっている完全不登校の子は、学校という「現場」から遠ざかっている分、登校した時のストレスの記憶自体がかすんでしまっている場合も多いのです。

さみだれ不登校のカウンセリングでは、「登校した日のストレス」を「いかに細かく再現できるか」に重点をおきます。特に小学生の場合、ふつうに「今日はどうだった?」と聞いただけでは「しんどかった」「疲れた」「なんかイヤだった」と、単語表現でしか説明できない子が多いのですが、そんな場合は親御さんの聞き方を工夫していただきます。私どもでは「小道具」と呼んでいますが、壁に貼った時間割をながめながら聞いてやったり、連絡帳の内容を読み上げながら質問してやったり。低学年の子なら「パペット(手にはめて口をパクパクさせるぬいぐるみ)」にお母さんの代わりに聞いてもらうと答えやすい子も。このような「時間割」「連絡帳」「パペット」といった小道具があった方が今日の出来事や感想を思い出しやすかったり、気軽にしゃべりやすいという子もいます。

それ以外にも、聞き出すタイミングやその場の人数や場所など、色々な工夫が必要になる場合もあります。また、子どもさんにもよりますが、大事な話ほど緊張するのか、顔を見合わせて話す・テレビを消して話すというよりは、二人でテレビを観ながら話すとか、中には、ゲームをしながらの方が話しやすいという子もいるのです。

しかし、ここまで複雑、かつ「ゲームをしながら話す」という一般常識から外れたような対応になってくると、親御さんの方がいささか困惑されたり、「ゲーム依存にならないかしら?」と、かえって不安に感じられる場合も少なくありません。もちろん、同じ対応をどなたにでもお勧めしているわけではありません。不登校のカウンセリングでは、親御さんからお聞きした情報をしっかりと分析した上で「その子その子に合った」聞き出し方や注意点などを考えてアドバイスしています。

さらに、その日のストレスを「その日の内に発散できる」ことも重要です。すると、「今日はしんどかったー。でも、お母さんに聴いてもらえてすっきりしたし、明日も行ってみようかなー」が期待できるかも!。これは小学生など低年齢・低学年の子ほど効果が期待できます。ポイントは「登校した日の内に、ストレスをしっかり発散できること」です。この力がついてくることで、「さみだれ登校」から「連続登校」という道が開けてくる場合が非常に多いのです。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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