子どもの不登校の解決において多くのお母さんが見逃している大事なこと

子どもの不登校の解決において多くのお母さんが見逃している大事なこと

目次

1.全国の小中学校での不登校者数が過去最多
2.今回の記事で焦点を当てるのは、不登校の子どもを持つ“お母さん”です
3.お母さんは、常に先の見えない不安と戦っている
4.不登校 お母さんのモチベーションは無限じゃない
5.不登校 お母さんが見逃しがちな“大事な事”とはなんでしょうか
6.過酷な坂道を登っている途中で、何かに気がつけるか

【1.全国の小中学校での不登校者数が過去最多】

全国の小中学校での不登校者数が過去最多

文部科学省が公表した「問題行動・不登校調査」で、2022年度の全国の小中学校での不登校の児童の数が過去最多を記録しました。

不登校の要因で最も多かったのは何だと思われますか?

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
一番多い要因は、無気力や不安(51.8%)で、全体の約半分を占めています。
無気力や不安というものは、とても曖昧で正体が掴みづらく
親御さんにとっても対応がとても難しい要因ではないでしょうか。

【2.今回の記事で焦点を当てるのは“不登校の子どもを持つお母さん”です】

焦点を当てるのは“不登校の子どもを持つお母さん”

これまで、不登校のお子さん自身のことや、当センターのカウンセリングについてなど
たくさんの不登校に関する記事をHPで公開してきました。
(過去の記事は、一番最後にリンクを貼らせていただきます。ぜひご覧ください)

今回は主に、日々、不登校のお子さんと接している“お母さん”に焦点を当てて
お話させていただきます。もちろん、“お母さん”だけではなく、“お父さん”と当てはめていただいてもお読みいただけます。

【3.お母さんは、常に先の見えない不安と戦っている】

お母さんは、常に先の見えない不安と戦っている

〈子どもを前に、元気にふるまうお母さん〉

「今日、この子は朝起きてくれるだろうか」
「明日こそ、学校に行ってほしい」
「この子が不登校になったのは私の責任でもあるのかな」
「この子は将来どうなってしまうのだろう」
「早く解決しなければ!時間がない!」

不登校の子どもを持つお母さんは、常に焦りを感じていたり、先の見えない不安を抱えていることと思います。
しかし、そんな様子を子どもに感じさせないように、気丈にふるまったり、元気に話しかけながらお子さんを励ましている、一生懸命なお母さんも多いのではないでしょうか。

〈色々なことで不安を抱えるお母さんの声〉

以前、当センターの不登校説明会に参加されたお母さんがお話してくださった、不安の声の一例です。

[ 以前、とあるメンタルクリニックに通っていた頃の不安 ]
担当のカウンセラーは「なぜ不登校になってしまったのか?」という現状を聞いてくるばかりで具体的なアドバイスはあまりありませんでした….

▶▶今後もここに通い続けて、本当に解決するのかな?という先の見えない不安

[ “見守りましょう“という不安 ]
「不登校の子どもに対し、「学校に行きなさい」「勉強しなさい」などと言わないで、ゆっくり見守ってあげましょう」という世間の情報の通り実践していたが、一向に登校する気配がなく、どんどん時間だけが過ぎていくので焦ります・・・

▶▶見守るだけで本当にいいの?という不安

お母さん達のお話を聞いていると、常に子どもの心配を抱えている中で、仕事や家事もこなさなければならない・・・
お母さん自身がゆっくり心を休める時間がとても少ないように思いました。

お母さんがこのような状態であると、お子さんにはどのような影響を与えてしまうでしょうか?

【4.不登校 お母さんのモチベーションは無限じゃない】

気持ちを奮い立たせ続けることは難しい

〈気持ちを奮い立たせ続けることは難しい〉

不登校でもっとも辛い思いをしているのは子ども自身です。
しかし、子どもが全く良い方向に変化せず、不登校の解決に希望の光が見えてこないと、
どんなに一生懸命頑張っているお母さんでも、やがて疲れてしまいます。

当センターで不登校のカウンセリングを受けている親御さん(※淀屋橋心理療法センターのカウンセリングは、お子さんご本人ではなく親御さんが来所されます)でも、
効果の表れ方が顕著ではない初期の頃は
「先生、このやり方を続けていて本当に大丈夫でしょうか・・・?」
と、モヤモヤする不安を打ち明けてくださる方もいらっしゃいます。

「先生、このやり方を続けていて本当に大丈夫でしょうか・・・?」

お子さんへの適切な対応は、根気強く続けることが大切ですが、
目に見えるような良い変化が子どもに表れない限り、お母さんがモチベーションを保つことは簡単なことではありません。

そのため、せっかくアドバイスを実践していても、効果が表れる前にやめてしまう事や、続ける事自体を忘れてしまう場合も多いのです。
それはとても勿体ない事なのですが、お母さんが自分の力だけで気持ちを奮い立たせ続けるのは、とても難しいですよね。

〈カウンセリングの役割は、お母さんのためにも〉

お母さんの精神状態を良い方向に保つためにも、カウンセリングは重要な意味を持ちます。

カウンセラー側から見ると、「あともう少しで良い芽が出てくるのに・・・」というタイミングであるにも関わらず、挫折してしまうお母さんがいらっしゃるのですが、
これはやはり、お母さんが子どもの変化を感じられていない事が大きな要因の一つだと思われます。

子どもは、日々少しずつ良い変化を起こしているはずです。
しかし、四六時中子どもと一緒に生活をしている・・・ましてや大きな不安を抱えている中で
お母さんがしっかりと変化を感じ取ることは、容易なことではありません。

〈カウンセリングで頭の整理〉

当センターでは、子どもの良い変化に気づいてもらう一例として、お母さんがカウンセラーと一緒に頭の整理をすることがあります。

お母さんの頭の中の大半を、不安やイライラが占めていて、子どもの良い変化を見逃している

子どもの会話や行動などを見直し、整理する事によって、お母さんはイライラよりも良い変化の方に目がいくようになる

お母さんが、子どもの小さな良い変化を見つけられる心理状態だと良いですね。

【5.不登校 お母さんが見逃しがちな“大事なこと”とはなんでしょうか】

お母さんが見逃しがちな大事なこと

たくさんのお母さんのお話を聞かせていただく中で、実はとても大事だと感じた事があります。
それは、お母さんの精神状態がうまくいっているかどうかが、お子さんが不登校を克服すること(良い変化を増やし、成長させること)に、とても重要な影響を与えているということです。

そこを見逃すわけにはいきません。

子どもの心の状態や、学校に行けない事が心配なあまり、お母さんはついつい自分の精神状態を後回しにして、我慢してしまうところがありませんか?

また、子どもの不登校を解決するための具体的な技術(どんな言葉をかけたら良いのか?何をしてあげたらいいのか?・・・など)ばかりに気をとられてしまい、自然体で笑うことが少なくなっていませんか?

不登校を解決するために、お母さんは必死に頑張っている事と思います。
また、もちろん具体的な技術もとても大事なことでもあります。

しかし、それと同じくらい、お母さんのやわらかい表情やしぐさも、
子どもにとってとても大事なことなのです。

ギリギリタイプの娘さんと、テキパキタイプのお母さんの場合

ギリギリタイプの娘さんと、テキパキタイプのお母さんの場合

子どもの良いところに気づけていない時

子どもの良い変化に気づき、認めることが出来た時

【6.過酷な坂道を登っている途中で、何かに気がつけるか】

最後に、あるお母さんから頂いた印象的な言葉を載せたいと思います。

これは以前の不登校説明会で、臨床心理士・福田俊介による事例発表を聞いた後の、お母さんの感想です。

※不登校説明会の事例発表では、不登校のお子さんと親御さんの関わりの中から、《どのようにしてお子さんが成長し、不登校を克服していったのか》《どのような困難があったのか》を、わかりやすくお話しています

子どもの状態がうまくいっていない時は、先が見えなくて常に不安でいっぱい。

子どもに何をしてあげたらいいのか・・・?
私の何が悪かったのか・・・?

だけど、子どもの状態がうまくいった後、後ろを振り返って見てみると
答えは、実はとてもシンプルだったことに気づくと思う。

子どもをしっかり見てあげて、否定しない。
多分それだけで良かったんだ、と。

だけど、親の感情や考えが入ってくることによって
今ある問題が複雑になって難しくなるのかもしれない。

複雑に絡んだ親の感情や考えをほどいてあげることによって
子どもが自分の力で乗り越えられるようになるのかな、と思った。
(一部、言葉を変えています)

このお母さんは、不登校の子どもを持ち悩んでおられました。
言い換えれば、過酷な坂道を登っている途中です。
しかし、この事例を聞いたことで、子どもが成長している未来、不登校を克服している未来を想像することができたようです。

子どもが不登校になると、きっとどんなお母さんも、子どもと同じように心を痛め、苦しむと思います。そんなお母さんの気持ちの不安や焦りや先入観を解く事が、時に子どもの心を解きほぐす事のきっかけになるのではないかと、お母さんはおっしゃいました。

不登校説明会の事例発表を通して、お母さん自身が何かを感じてくださったこと・新しい発見に気がついてくださったことを、とても嬉しく思います。

《 ※過去の記事はこちらから・・・↓》

現在、不登校カウンセリング説明会のレポート記事は全21記事ございます。

✿ お子さんの性格を認め、小さな変化を見逃さない~春休みを有効に過ごすために~
https://www.yodoyabashift.com/column/19790/

✿ 子どもの不登校はカウンセリングで治るのか
https://www.yodoyabashift.com/column/19207/

✿ 不登校の解決に導く、親と子の3つのステップ
https://www.yodoyabashift.com/column/17722/

✿ 学校に行きたがらないお子さんの朝の起こし方
https://www.yodoyabashift.com/column/18149/

✿ 【不登校】心配で不安な親は子供に逆の対応をしている?
https://www.yodoyabashift.com/column/17448/

淀屋橋心理療法センターでは、定期的に不登校治療説明会を開催しております。
また皆様のお役に立てるような、不登校に関する記事をHPに掲載しています。

最新の情報をお届けさせていただきますので、
ぜひ 【淀屋橋心理療法センター 公式LINE】 をご登録ください。

2023.11.05  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》湯浅愛美

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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