重症の過食症治療説明会 体験レポート
〜やせることに代わる心の支えを作る〜

更新日:2025.12.03
重症の過食症治療説明会 体験レポート〜やせることに代わる心の支えを作る〜

2025年10月14日(火)
重症の過食症治療説明会 体験レポート
~やせることに代わる心の支えを作る~

淀屋橋心理療法センターでは臨床心理士・福田俊介と精神科医・福田俊一とともに、ゲーム依存症、リストカット、癇癪などお子さんのさまざまな症状について親御さんと学ぶ会を定期的に行っております。

今回は10月14日に「重症の過食症治療説明会」が当センターで行われました。
臨床心理士・福田俊介によるカウンセリングによって過食症の症状が治まった事例紹介や、精神科医・福田俊一が伝える過食症の重症化を防ぐヒント、親御さんの疑問にお答えするQ&Aコーナーを通して解決の糸口を親御さんと一緒に考えていきます。

◆ 講師プロフィール ◆

所長・医師

福田俊一(ふくだ しゅんいち)

大阪大学医学部卒。 大阪大学精神神経科、大阪府立病院神経科にて精神医療に取り組む。 米国フィラデルフィア・チャイルド・ガイダンス・クリニック(P.C.G.C.)にて家族療法をS.ミニューチンに師事。 住友病院心療内科、大阪厚生年金病院神経科、大阪市立小児保健センター精神科に勤務。 厚生省・神経性食思不振症調査研究班メンバー(1984~1986年) 大阪大学医学部非常勤講師(2013年)

カウンセラー

福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

臨床心理士・公認心理師(国家資格) オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science) 自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業 不登校過食症リストカット で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー

過食症の“重症”の症状とは?

過食症の“重症”の症状とは?:カウンセリング(過食症)

今回は過食症のなかでも“重症の方”に的をしぼった説明会。

当日はお母さん単身のほか、夫婦でのご参加もありました。

今年で42周年になる当センターでは、過去にさまざまな過食症のケースと対峙してきました。過食症は重症化してしまうと、うつやひきこもりなど、ほかの症状を併発してしまう場合があります。

説明会冒頭では、臨床心理士・福田俊介より

  • “重症の過食症”とはどういった状態なのか
  • なぜ過食症の治療は難しいのか

という2点の問いかけがありました。
みなさんはこの問いに対してどのように考えましたか?

下記は長年の経験から導き出した当センターの見解の一部です。

重症の過食症とはどんな状態?

  • 「私の過食はお母さんのせいだ!」など過食を人のせいにして大暴れし、仲の良い親子関係が崩れてしまう
  • 重度のうつ、家出、自殺未遂などを起こし、家族をふりまわす
  • 過食費用が1ヵ月30万円など生活に支障を来たす額にのぼる

過食症はなぜ治すのが難しい?

  • 「それ以上食べない方がいいよ」といった直接的なアプローチが効かない場合が多い
  • 過食を止めたい気持ちはあるが、その根っこにある問題(詳しくは当記事にて)を解決することには興味がない人が多い

過食症を治すには?事例とともに考える

過食症を治すには?事例とともに考える:カウンセリング(過食症)

直接的なアプローチに効果がない過食症。しかも、重症の場合は周囲の家族はどのように接したらよいのでしょう?

説明会では、当センターで実際にカウンセリングを受け、重症の過食症を克服した方の事例をスライドショーでご紹介しました。

ご家族がお子さんに対してどのような声かけをしたのか。どのような関わり合いを通してお子さんの過食がなくなっていったのか。事例には過食症の解決への大きなヒントが隠れています。

実話ですから親子の会話、やりとりが非常に生々しいのですが、「そうなんだよね」「なるほどな」と共感や関心を持って頷かれている親御さんの姿が多く見受けられました。

例えば、印象的だったのがパン事件

印象的だったパン事件:カウンセリング(過食症)

説明会参加者:カウンセリング(過食症)説明会参加者
我が家でも同じようなことがありまし。

と参加者から共感の声が上がりました。

「過食症の人はパンを口の中に詰め込む人が多い」と臨床心理士・福田俊介。
事例で登場したパン事件を簡単にお話すると…

過食症A子さん:カウンセリング(過食症)過食症A子さん
パンを見ると詰め込んで食べてしまう。
お母さん:カウンセリング(過食症)お母さん
わかった。パンはもう買わないようにする。

しかし、お母さんはある日、パンを買ってきたうえに、そのパンを隠すことも忘れてしまい…。
不運にもA子さんがパンを見つけてしまい、全部たいらげてしまいます。

過食症A子さん:カウンセリング(過食症)過食症A子さん
私がパンを全部食べちゃったのは
お母さんのせいだ!
太ったらどうしてくれるんだ!!

さて、この事件ですが、なぜ娘さんはこんなにも怒ったのでしょう?
娘さんは、自分の思い通りにならなかったから怒ったのでしょうか?
それとも・・・。

“お母さんが約束を守らなかったこと”に対して
悲しみ、怒りが込み上げてきた
、という視点でこの事件についてもう一度考えてみてください。少し違った景色が見えてきませんか?

臨床心理士:福田俊介臨床心理士:福田俊介
過食症の方のなかには“約束を重んずる人”が 多いという印象を持っています。
守れないことは約束しないほうがトラブルになり にくいでしょう。

事例紹介の際にはカウンセラーが「なぜだと思いますか?」と親御さんたちにお話をふることがあります。その際、「間違っていたらどうしよう」といったことは一切気にしないでくださいね。間違えたっていいのです。

当センターで開いているのは講演会ではなく“みんなで学ぶ会”。みんなで一緒に考えて、悩みを分かち合う場になってくれたらうれしいです。

悩みを分かち合う場になってくれたらうれしい:カウンセリング(過食症)

さて、事例紹介が終わった後はQ&Aコーナーです!

過食症に関する疑問を臨床心理士・精神科医が回答! Q&Aコーナー

過食症に関する疑問を臨床心理士・精神科医が回答! Q&Aコーナー:カウンセリング(過食症)

当センターの治療説明会では、臨床心理士・福田俊介と精神科医・福田俊一によるQ&Aコーナーを設けています。親御さんから挙がった質問を一部ご紹介したいと思います。

(Q1.)正論を言っても通じず、途方に暮れる

(Q1.) 過食症本人に対して一般的な正論が通じず、話し合いにすらなりません。どうしたらよいのでしょうか?

臨床心理士:福田俊介臨床心理士:福田俊介
例えば、親御さんが「何言ってるの!?」と思うようなことをお子さんが発言したとしましょう。すると、親御さんは「それはダメでしょ!」と反射的に否定しがちです。そうすると、お子さんは 「私の 話、あんまり聞いてくれないのかな」と思って殻に閉じこもってしまいます。ですから、正論を言うことよりも「そういう風に考えているんだね」と、まずはお子さんの思いを受け止めてあげることを 大切にしてみてください。そういった対応を地道に続けていくと、親子の会話に変化が現れるはずです。

(Q2.)過食症の子どもとの同居・別居

(Q2.) 一人暮らしの子供が過食症です。子供のためにも同居するべきでしょうか?

精神科医師:福田俊一精神科医師:福田俊一
一⻑一短です。同居のメリットは、お子さんと接する機会が増え、解決への糸口が見つけやすくなること。デメリットは、お子さんの不機嫌に振り回されたり、依存されたりする可能性があることです。電話を定期的にしてお子さんの話を聞いてあげるなど、別居でもできることをまずは試されてみてはいかがでしょ う。同居を決めた際は、変な依存関係に陥らないよう初動が肝心です。

(Q3.) 過食症と発達障害

(Q3.) 過食症本人が発達障害です。発達障害と過食症の関係性はありますか?

精神科医師:福田俊一精神科医師:福田俊一
発達障害が、というよりは“生きづらさを感じている人”と過食症 は関係があると思います。人間もともとの性格は変わりません。ですが、その性格なりに成熟させることはできます。当センター では親子のコミュニケーションを通して過食に頼らなくても大丈夫な状態へとお子さんの成⻑を促していきます。

(Q4.) なぜ過食症本人の来所は不要?

(Q4.) なぜ淀屋橋心理療法センターでは過食症本人ではなく、家族がカウンセリング対象なのですか? 本人にカウンセリングをしてほしいのですが…。

臨床心理士:福田俊介臨床心理士:福田俊介
この質問はよく聞かれます。理由のひとつとしては、カウンセラーとご本人が直接対話したとしても、ご本人の考えや行動は変わりにくいのです。
また、過食症のご本人はモチベーションが持続せず、継続して通えないことが多いという理由もあります。

我々は生きづらさを感じているお子さんが自分の性格をうまく乗りこなして活き活きと輝けるよう、ご家族に対応のアドバイスをお伝えします。ゴールへの道は決して平坦ではなく、うねうねとした細くわかりづらい道ですが、ご安心ください。私たちがガイドします。一緒に頑張っていきましょう。

過食症治療説明会を終えて。参加者の感想は…

過食症治療説明会を終えて。参加者の感想は…:カウンセリング(過食症)

こうして約2時間の治療説明会が終了しました。

参加してくださった親御さんはそれぞれどのような感想お持ちになられたのでしょうか?一部をご紹介させていただきます。

まさに娘の事例を聞いているような感じでした。先生のお話を聞きながら自分自身の子供に対する対応を振り返ってみて、よくなかったな...と思いました。/具体的なケースに沿ってわかりやすかった。希望が持てました。:カウンセリング(過食症)

過食症からの脱却。“やせることに代わる心の支えを作る”とは?

「摂食障害の方は、痩せることで自分を輝かせようと思い込み、日々本能である“食欲”との戦いに明け暮れています」と精神科医・福田俊一は語ります。

自分を輝かせるには、内面を磨く、服を買うなどさまざまな方法がありますよね。ですが、摂食障害の方は痩せることでしか自分は輝けないと思い込んでしまいます。その様子はもはや「痩せる宗教」を崇拝する信者。一筋縄ではいきません。

そんな重症の過食症の娘さんを抱えたお母さん渾身の直筆ルポが当センターのホームページにアップされています。実際にお母さんが当センターに通われ、娘さんは過食症を克服しました。

「やせることに代わる心の支えを作る」とはどういうことなのかが、このルポを読めばわかります。全部でvol.5まである超大作、よければご覧くださいね。

【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記| vol.1 「またみんなで食事ができるようになりたい!」
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記| vol.2 「紗月にうまく対応するのは難しい」
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記| vol.3 大荒れ、嵐の始まりと収束
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.4 親子和気あいあい
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.5 断る勇気が持てた!卒業に至るまで
淀屋橋心理療法センターの治療説明会
月2回、定期開催(その時々で取り上げる疾患は変わります)しております。

「いきなりカウンセリングでは不安な方」や、当センターが「どんな雰囲気か知りたい」といった場合も大歓迎です!少しでも気になる説明会がございましたら、ぜひ一度お越しください。

▶ 最新の治療説明会日程はこちらをご覧ください。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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