11月18日(金)に、
親御さん向け過食症治療説明会を開催しました。
拒食症と過食症の人の違い
「拒食症は命に関わるけれども、本人の自信は保たれていることが多いのが特徴。
それに対して、過食症は命に関わることは少ないけれども、
気分が暗くなり鬱々としている人が多いのが特徴です。
摂食障害という同じくくりの中で、なぜこんなにも特徴が異なるのでしょう?」
※勉強会冒頭 所長・福田からの問いかけです。
今よりも素敵な自分になるために、
痩せることに強いこだわりを持っているという点では、
拒食症も過食症も同じです。
ですが、拒食症と過食症では痩せるという目標に対して、
成功しているか(拒食症) 失敗してしまっているか(過食症)の大きな差があり、
前述したような異なる特徴が生まれるのです。
過食症の人は、痩せたい!という強い気持ちがあるのに、
どうしても食べたい!という強烈な食欲に負けてしまい、
大量に食べて吐いてを繰り返すことをやめられません・・・
自分の理想(痩せて素敵になっている自分)とは真逆の現実(過食してしまっている自分)に、
気持ちが落ち込んでしまうことが少なくありません。とてもつらいことですよね。
過食症のお子さんを何とか助けてあげたくて、
お子さんの望むヘルシーな料理を作ってあげたり、
菓子パンやお菓子など、過食してしまいそうな食材を家に置かないようにしたり、
親御さんは様々な努力をしていらっしゃることでしょう。
ですが、
「いろいろ試してみたけれども全くうまくいかなかった」
「うまくいったと思っても、また突然過食してしまって・・・」と、
苦しい胸の内を語ってくださる親御さんはたくさんいらっしゃいます。
お子さんから過食がなくなり、毎日をイキイキ楽しく過ごせるようになるには、
何が必要なのでしょうか。
臨床心理士・福田俊介によるケース紹介
《ケース1》
過食した後に当たり散らす 20代女性
《ケース2》
Noと断われず、
職場のストレスで過食が止まらない 30代女性
※ケース紹介では、当センターで治療を受けられた方が、どのように回復されていったのか
個人情報に配慮しながら紹介させていただいています。
過食症治療で大切なのは、
お子さんの性格やペースを理解して認めてあげること
お子さんの性格に合った対応を根気強く続けること
こう語るのは、臨床心理士の福田俊介です。
お母さんは、何でもテキパキ時間に余裕をもって準備したいタイプだけれど、
息子さんは、おっとりしていて、準備はギリギリなタイプだったり、
お父さんは、嫌なことはNo!とはっきり断れるタイプだけれど、
娘さんは、周りの人に気を遣いすぎて断りきれないタイプだったり・・・
家族といえども、性格や生活の段取りの仕方・ペースなどは1人1人違ったりしますよね。
お互いの性格やペースを尊重して認め合い、
みんなが無理なく楽しく生活していけるのなら、こんなに幸せなことはないと思います。
ですが、“わが子”に関しては、保護者という責任もありますし、
お子さんの将来を思って、親の立場で子どもと接しようとすると、
「こうしなさい!」と、親の価値観を押し付けてしまいがちになってしまう時があったりしませんか?
私はよくあります・・・
そのたびに反省します・・・(筆者は2児の母です)
心では子どもの考えやペースを尊重してあげようと思っていても、
なかなか現実は思い通りにはいきませんよね。
この、お子さんの性格や親子のペースの違いを理解して、上手にお子さんを尊重してあげるということは、 子育てだけでなく、過食症の治療でもとても大切なポイントとなります。
ケース紹介では、
親子の性格やペースの違いがうまくかみ合っていなかったところを、
時間をかけて少しずつ整えていくことから始まり、
親子の相性を最大限にチューニング(調整)して、
お子さんの自信がものすごく高まり、
お子さんが親御さんに本音や不安・どうして過食を止められなくなってしまったのかを
語れるようになることで、
長年止められなかった過食を克服できたケースをご紹介しました。
過食症克服への道のりは
素人がフルマラソンを完走するようなもの?
以下は、勉強会での一幕をまとめたものです。
“なぜ過食してしまうのか・過食しないためにはどうしたらいいのか”
という視点とは違った角度から治療を進めていきます」
どうしてそうなってしまったのか、原因がわからなければ治療できないのでは?」
むしろ、どうしてこうなってしまったのか、
自分でもわからないという方もたくさんおられます。
過食症はとても根が深く、簡単には治りません。
まずは、お子さん自身が自分の心と向き合えるように、
親御さんがじっくりと時間をかけて上手にサポートしてあげることが大切です」
まずは、お子さんの性格や親子のペースの違いなどを
親御さんとカウンセラーで確認しながら、
お子さんが話をしやすい親子関係をつくっていきます。
言葉では簡単なように聞こえますよね。
『ウチはもうできている』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ここでの話しやすい関係づくりというのは、
治療の効果を上げるための会話ができる関係づくりなのです。
これが違和感なく自然にできるようになるには、
親御さんに根気強くアドバイスを実践していただくことと、
定期的なカウンセラーからのフィードバックが不可欠です。」
過食を完全になくすというところまで持っていくには、時間と労力がかかります。
その長い道のりを、親御さんだけで走り切ろうとすると、
途中で心が折れてしまったり、違う道に迷い込んでしまったりしてしまいます。
そうならないように、定期的に軌道修正をするのが私たちカウンセラーの役割なんですよ」
このやり取りを聞いていて、
過食症の治療とは、素人がフルマラソン完走を目指すようなものなのかな?と私は思いました。
私の趣味はランニングですが、あくまでも素人の趣味なので、
コーチや伴走者なしでフルマラソン完走を目指しましょう!と言われたら、途方に暮れてしまいます・・
フルマラソンに限らず、受験や資格取得など、
何か大きな目標達成を目指している時は、
自分を正しい道に導いてくれる専門家にそばにいてほしいものですよね。
過食症の完全克服も大きな目標です。
親御さんだけで頑張ろうとせず、専門家を味方につけるのも目標達成の大きな近道になるかもしれません。
お子さんを助けるには、親御さんの力が不可欠です。
お子さんのために頑張る親御さんのために、私たちの力が少しでもお役に立てたら、
こんなに幸せなことはありません。
この度は、当センターの過食症勉強会にご参加いただきましたありがとうございました。
参加してくださった親御さんにとって、良いきっかけとなりましたら幸いです。