スマホ・ゲーム依存治療説明会 体験レポート
ゲーム依存を抜け出すために ~“しゃべること”の深さ~

更新日:2025.08.01
スマホ・ゲーム依存治療説明会 体験レポートゲーム依存を抜け出すために ~“しゃべること”の深さ~

淀屋橋心理療法センターでは、子どものゲーム依存症(ゲーム障害)でお困りの親御さんに向けて、ゲーム依存症に関して学ぶ会を定期的に行っています。

今回は6月30日に「スマホ・ゲーム依存治療説明会」が当センターで行われました。親御さんのほか、今回はお孫さんのためにもと祖父母さんもご参加くださいました。平日の午前中にも関わらず、参加者の半数がお父さんだったことも同説明会では初めてのことで印象的でした。

臨床心理士・福田俊介によるネット・ゲーム依存症の「カウンセリングによる回復ケース」や精神科医・福田俊一によるゲーム依存症を克服するためのアドバイス、Q&Aコーナーを設け、どうすればゲーム依存から脱却できるのかをそれぞれのご家庭のケースに合わせて考えていきました。

◆ 講師プロフィール ◆

所長・医師

福田俊一(ふくだ しゅんいち)

大阪大学医学部卒。 大阪大学精神神経科、大阪府立病院神経科にて精神医療に取り組む。 米国フィラデルフィア・チャイルド・ガイダンス・クリニック(P.C.G.C.)にて家族療法をS.ミニューチンに師事。 住友病院心療内科、大阪厚生年金病院神経科、大阪市立小児保健センター精神科に勤務。 厚生省・神経性食思不振症調査研究班メンバー(1984~1986年) 大阪大学医学部非常勤講師(2013年)

カウンセラー

福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

臨床心理士・公認心理師(国家資格) オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science) 自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業 不登校過食症リストカット で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー

ゲーム依存症に陥りやすい性格がある?

10時30分、いよいよスマホ・ゲーム依存治療説明会が始まりました。

スマホ・ゲーム依存治療説明会が始まります。:カウンセリング(スマホ・ゲーム依存)

初対面同士、少々お堅い雰囲気からのスタートだったので、まずは臨床心理士・福田俊介が「ここ、笑うところですよ!」と笑いを挟みながら、自身の半生について語りました。

そして、さっそく本題へ。

「自分のペースに執着する」

「気持ちの切り替えに時間がかかる」

これらはゲーム依存症のお子さんに多く見られる特徴と臨床心理士・福田俊介。

実際、親御さん複数人が「うんうん」と頷いていらっしゃいました。その個性がちょっぴり強めなお子さんには、こうすれば正解だ、という単純な対処法はありません。それぞれの個性に合わせて対応していく必要があります。

そこで、当センターでカウンセリングを通して実際にゲーム依存が回復した2つの事例について発表しました。

【ケース1】 まるで家庭内別居のようだ! と父が嘆いた
ゲームばかりで家族と交流しない発達障害がある中学生男子

【ケース2】 お母さんは腕に傷を抱え、精神安定剤を服用
ゲームでイライラ。暴言や暴力を振るう中学生男子

これらの問題を抱える親御さんに当センターがどのようなアドバイスをし、お子さんをゲームの世界から現実の世界へと引き戻すに至ったのか。回復までの険しい道のりを、当時のお子さんの発言、行動など具体的な様子を交えて臨床心理士・福田俊介が話しました。

回復までの険しい道のりを、当時のお子さんの発言、行動など具体的な様子を交えて臨床心理士・福田俊介が話します。:カウンセリング(スマホ・ゲーム依存)

ゲーム依存から子どもを救い出す“親子の会話”

ゲーム依存の治療法に「子どもと話し合ってゲームの使い方の約束を決める」、「ゲームそのものから物理的に離す」といったものがありますが、中~重症の依存状態のお子さんには効果が得られない。むしろ無理やりゲームを取り上げることは逆効果になりかねない、と当センターでは考えています。

・お子さんへの声のかけ方や話の聞き方、接し方の技術を親が習得する

・親の精神状態が良好である

この2輪が揃うことによって、お子さんに安心感を与え、成長を促し、ゲーム依存を克服していきます。

臨床心理士・福田俊介が答えました!Q&Aタイム

では、具体的に親子でどんな会話、やりとりをするべきなのか…?

事例を紹介した後のQ&Aタイムでは、早速そんな質問が飛び交いました。

「これは間違えた意見かも…」など気にせず、自分が思ったことをどんどん発言してくださいね! というのが当センター流。徐々にその雰囲気に慣れてきた親御さんからは積極的な発言が次々と! 特に、今回はお父さんの参加が多かったので、厳しい社会で生き抜いているからこそ湧いてくであろう「この世知辛い世の中でわが子はどうなってしまうのだろう?」といった疑念、パートナーである奥さんとの相違などが挙がってきました。

そこで、それぞれのご家族に添ったQ&Aのコーナーのやり取りの一部をご紹介します。

Q1. キレながらゲームをしている不思議

(Q1)子どもはキレながらゲームをしています。そもそもゲームが好きでやっているのでしょうか? ゲームしかやることがないからなぁなぁでやっているのでは?

(俊介A)ゲームが心底好きな子もいるでしょうが、現実から逃れる手段でしている子もいます。ゲーム依存症の中には「対人緊張」を抱えている子も多く、外では疲れきってしまう子も。まずは家族と会話するのも楽しいと思ってもらうことが大事です。そしたら、ひまな時に家族と会話しようかなと、その子の選択肢も増えるのです。

Q2. 不登校でゲームをするわが子。甘えでは?

(Q2)私たちの時代は厳しく接することが当たり前でしたが、今はそういう時代じゃないんですよね。そうはわかっていても、不登校でゲームをしているわが子を見ていると、それは単なる甘えでは? と思ってしまいます。

(俊介A)ひとつ、誤解を解きますね。厳しくして効果が出る子には厳しくしてあげても私はいいと思います。しかし、お父さんのお子さんのように、厳しくしてもうまくいかない子にはほかの対応をおすすめします。ほかの対応というのは、治療説明会の事例で紹介したものを参考にしてみてください。なかには、子どもに自信をつけてあげようとたくさん褒める親御さんがいらっしゃいますが、もし、お子さんに響いていないようでしたら、褒めすぎるのは辞めた方がいいでしょう。かえって逆効果になるからです。

Q3.部屋に引きこもってゲーム。会話ができない

(Q3)ゲームをして自分の部屋に引きこもっています。昔はよくしゃべる子だったのに、今は話しかけようとすると「うざい」「でていけ」と言われます。

(俊介A)自分のタイミングが大事な子なのではないでしょうか。1日の中に必ず本人の機嫌のいい時、本人が喋りたいタイミングがあります。子どもの様子をよく観察して、喋りかけるタイミングを大事にしてみてください。

ここで、親御さんにお伝えした情報を整理していただくための10分間の休憩をはさみます。

ゲーム依存を“突き抜ける”という考え方

ゲームに執着するエネルギーや、その子の持ち味をいかしてあげるには?所長で精神科医の福田俊一:カウンセリング(スマホ・ゲーム依存)

さて、最後は所長で精神科医の福田俊一の登場です。

ゲームに執着するエネルギーや、その子の持ち味をいかしてあげるには?

「ゲームを辞めさせなければ」と躍起になるのではなく、目の前のお子さん本人の持ち味を生かすにはどうしたらいいのか、という親の視野を広げるヒントが話の随所にありました。

\ 精神科医・福田俊一 から親御さんへアドバイス /

「集中しすぎる個性」にストップをかけずに思い切り伸ばす!

ゲームにものすごく熱中してしまい、やめられないお子さんの個性を伸ばすためには、お子さんにブレーキをかける、というよりも“育てる”という考え方にチャンスがあります。

成長とともに、ゲーム以外の物事にも興味の幅が徐々に広がっていきます。
そのすごい集中力が悩みの種だったのに、いつの間にかその子の武器になっていた、という非常に良い治り方をした事例が当センターにはたくさんあります。

精神科医・福田俊から親御さんへアドバイス

子どもは自己コントロールが未熟である

子どもは自己コントロールが未熟である:カウンセリング(スマホ・ゲーム依存)

こうして約2時間にわたる治療説明会が幕を閉じました。

今回このレポートを書かせていただいたのは新人の徳島です。6月に採用され、今回が初めての治療説明会でした。

私自身、ゲーム依存症になったら「ゲームを物理的に離す」以外に方法はあるのだろうか? 親子の会話でゲーム依存症を治療していく、というのはどういうことだろう? と正直疑問に感じていたのですが、具体的なケースや、みなさんのQ&Aを聞いていくうえで「そういうことなのか」と自分の中で腑に落ちました。

今回はお母さんよりもお父さんの参加率が高かったのですが、臨床心理士・福田俊介は質疑応答を通して、効果の即効性、すぐに結論を出したがる傾向がお父さんにはあると改めて認識したそうです。すぐに成果を出す! という仕事モードが抜けきれない部分があるのかもしれませんね。

「ゲームは1日1時間まで」と約束したはずなのに時間が守れない。自分で決めたのに破るのはどうなのだろう? それを臨床心理士・福田俊介と精神科医・福田俊一は「子どもは思春期で自分のコントロールが難しい年ごろ。まずは成長させなければいけない」と話してくれました。もう中学生、されど中学生。まだ十数年しか生きていない子どもを大人と同じように扱いがちなことに私自身もハッとさせられました。社会人を経験しているからこそ、「社会はそんなんじゃ通用しないわよ!」と子どもについつい厳しくしてしまうのです…。治療説明会を通して普段の子育てに力みすぎていた自分に気が付けましたし、子どもへの接し方で活かせる良質なヒントを多く得られたと実感しています。

現在開催予定の治療説明会はこちら

https://www.yodoyabashift.com/study_session/

過去の治療説明会記事一覧はこちら

勉強会・カウンセリング治療説明会過去レポート

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記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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