ゲーム依存症・ひきこもりを乗り越えるには?子どもの持ち味を武器に

更新日:2025.05.29
ゲーム依存症・ひきこもりを乗り越えるには?子どもの持ち味を武器に

「自分の子どもは、心の病気なのではないか」

ゲーム依存症やひきこもりのお子さんを抱え、深く悩まれた結果、淀屋橋心理療法センターのホームページに辿り着かれたことと思います。

この記事では、ゲーム依存症とひきこもりの現状、当センターが大切にしているゲーム依存症やひきこもりの捉え方や、ゲーム依存症やひきこもりのお子さんに多い「執着性気質(過集中)」についてもお伝えしております。

当センターでは、こういったお子さんの持ち味を武器に変えて、イキイキと生きていけることを目指して治療にあたっております。ぜひ最後までお読みになってみてください。

※この記事は、2022年3月25日に淀屋橋心理療法センターで行われた治療説明会を基に執筆しています。

急増しているゲーム依存症・ひきこもり

急増しているゲーム依存症・ひきこもり

ゲーム依存症の患者さんやひきこもりになる人の数は、年々増え続けています。

ここでは、ゲーム依存症やひきこもりの現状、問題点を把握するとともに、親御さんの抱えている不安についても一緒に考えていきましょう。

ゲーム依存症(ゲーム障害)の現状

日本におけるゲーム依存症(ゲーム障害)は、若い世代を中心に依存傾向が強まっている状況です。

厚生労働省が2019年に行った全国調査によると、新規ゲーム障害患者数は、2015年度の251人から2019年度には856人へと、5年間で約3.4倍に増加していることが報告されています。
特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降は、外出の機会が減ったり、自宅で過ごす時間が増えたりした影響もあり、ゲームに触れる時間が増え、依存のリスクが高まった可能性があります。

出典:厚生労働省

また、2019年にWHOがゲーム障害を「ICD‐11」という国際疾病分類に疾病として認定したことで、「このままゲームを続けさせていいのだろうか」と悩んでおられる親御さんも少なくないのではないでしょうか。

ゲーム依存症(ゲーム障害)に対する親の不安

ゲーム依存症に対する親御さんの心配事は、多岐にわたります。例えば、

・学業への影響
・昼夜逆転など、生活リズムの乱れ
・長時間のプレイによる視力低下や運動不足
・不規則な食事

など、お子さんの学業や成長へのご心配が多いことがわかります。

「少し注意をすると、子どもから感情的な反応が返ってくる。どう接したらよいかわからない……」

長時間ゲームに集中する我が子に対して、勉強面や生活面での不安は尽きないものですよね。

親御さんが、お子さんのゲームに対し感じていること、例えば、

・どこに価値を感じているか
・何を楽しんでいるのか

こういった点を親御さんが十分に理解されていないと、共感することが難しく、結果としてご心配や苛立ちにつながってしまう、そのような状況もおありでしょう。

実は、毎日の親子のやりとりやたわいもない会話のなかに解決のヒントが隠れている のです。淀屋橋心理療法センターのカウンセリングでは、親御さんからお聞きするエピソードを基に、専門的なアドバイスを行っております。

ひきこもりの現状と問題点

ひきこもりになる人の平均年齢は、年々高くなる傾向が見られます。

特定非営利活動法人 KHJ全国ひきこもり家族会が2023年度に行った調査によると、本人回答者の平均年齢は42.8歳と、2019年度調査の34.4歳に比べて、8歳ほど年齢が上がっていることがわかりました。

1回目のひきこもり期間は平均8.6年と比較的長いことも特徴です。また、ひきこもりの最長期間は40年に及ぶケースも報告されています。

このように、ひきこもりの長期化により、本人だけでなく家族の高齢化や社会復帰の遅れにつながるなど、社会的・経済的困難が起きていることが大きな問題です。

出典:特定非営利活動法人 KHJ全国ひきこもり家族会 2023年度ひきこもり実態に関する調査報告書

平成29年度ひきこもりに関する全国実態アンケート調査の報告

ゲーム依存症・ひきこもりをどうとらえるか

ゲーム依存症・ひきこもりをどうとらえるか

ゲームに異常に執着する、あるいは、部屋から全く出てこようとしない、そんなお子さんの姿を目の当たりにして、

「うちの子は病気だ。もう何を言ってもだめかもしれない」と諦められたり、

「薬を飲んで手っ取り早く治せないか」

と、考えておられる親御さんもいらっしゃるかもしれません。

しかし、淀屋橋心理療法センターでは、ゲーム依存症やひきこもりを、必ずしも「病気」という一面的な見方だけで考えてはおりません。

これらを単に「ゲーム依存症=病気」と結論づけるのではなく、「ゲーム依存症=自分をうまくコントロールできない状態」として捉えて向き合い、治療を進めております。

筆者は、その向き合い方に、当センター所長であり精神科医・福田俊一が長年大切にしている「家族療法」や「薬を使わない治療」に対する思いが詰まっていると感じました。

「全く薬を使わない治療」について、当センター所長であり精神科医・福田俊一が動画でも詳しく説明しております。あわせて、こちらもご覧ください。

🎥 家族療法カウンセリング 全く薬を使わない治療 | 淀屋橋心理療法センター

ゲーム依存症・ひきこもりの子どもに多い執着性気質(過集中)とは?

ゲーム依存症・ひきこもりの子どもに多い執着性気質(過集中)とは?

何かに強いこだわりを持つことを「執着性気質」と呼び、過集中は、この執着性気質が特定の対象に強く現れる状態を指します。

執着性気質や過集中は、ゲーム依存症やひきこもりの状態にある方に見られる傾向のひとつと言われています。

ここでは、そのような特性を持つ方々に対する精神科医・福田俊一の想いをお伝えするとともに、執着性気質や過集中の持ち味を深堀りしていきましょう。

ゲーム依存症やひきこもりは「生きづらさの問題」

淀屋橋心理療法センターに通われている方のなかにも、なにかに執着するあまり、ご本人やご家族に大きな負担がかかっているケースが多く見られます。

好きなゲームをクリアするためなら、睡眠時間を削ってでもやり続ける
欲しいフィギュアを集めるために、莫大なお金をかけてしまう

近ごろは、「執着しすぎる」などの性格の話をさせていただいた途端に、親御さんが発達障害ではないかと心配されたり、発達検査でグレーゾーンと言われて不安になられたりする場合が多く見受けられます。

当センター所長である精神科医・福田俊一は、

性格に難点があれば、すぐに発達障害だと決めつけてしまう
発達障害の診断が、本人が生涯背負っていくレッテルのようになってしまう

…このような世の中の現状を、危惧しています。

先ほど述べましたとおり、当センターではゲーム依存症やひきこもりを「感情をうまくコントロールできない状態」と捉えています。

特定の個性や性格を持つ人のなかには、「執着」や「がんこ」が人一倍強く表れる人もおられます。そのため、人より生きづらかったり周りの対応が難しかったりすることが問題です。

しかし、そのようなお子さんでも、「ご自身に眠っている芽を伸ばしていくことによって、自分らしくイキイキと生きる道筋を作ることができる」と考えております。

執着性気質(過集中)の持ち味を伸ばす

対人恐怖や不安が強いお子さんは、いったん不安を感じると、それがなかなか解消されず、物事に執着する傾向にあります。そのような気質を持っていると、ご本人は「生きづらい」と感じてしまう場合も多くあるでしょう。

しかし執着性気質は、その人の生き方をマイナスにすることばかりでは決してありません。

こだわりが強いということは、「熱心」であり「物事を徹底して考えられる」ことができる……また、責任感や正義感が強い方もおられるでしょう。

執着性気質にも良さがあり、そして、その子の性格や気質をうまく使いこなし、自分をコントロールできると、生きやすくなる方もたくさんいらっしゃいます。

問題は、その気質とうまく共存できずに、つまずいて行き詰まっているということです。

淀屋橋心理療法センターでは、さまざまな理由で「生きづらい」と感じ、社会に出ることが困難なお子さんが、自分の持ち味を武器にして元気に生きていく事ができるような手助けを得意としています。

「ゲーム依存症を治したい」親御さんそれぞれの思い

「ゲーム依存症を治したい」親御さんそれぞれの思い

臨床心理士・福田俊介によるケース紹介の人気コーナーでは、

・ひきこもり
・ゲーム依存
・不登校
・摂食障害

など、毎回治療説明会に合わせたさまざまな内容で、克服までのストーリーを紙芝居風にわかりやすくお話 ししています。

今回の記事では、ケース紹介を通して、臨床心理士・福田俊介と親御さん達が実際に交わした会話の一部をご紹介します(ケース紹介については、過去の治療説明会の記事をぜひご覧ください)。

「みなさんは、どんなことに悩まれていますか?」

臨床心理士・福田俊介が親御さんたちに質問を投げかけると、さまざまな言葉を返してくださいました。

(プライバシー保護のため内容は一部変えております)
・うちの子どもはゲームが大好き。

生活はゲームが中心で、他の事には興味がない。だからゲームを取り上げるのはこわい。子どもに何も残らなくなってしまうのではないか。

・親戚やママ友に、「ゲームを取り上げたほうがいい」と言われる。でも、私は「余計なお世話!なんとか違う方法で解決したい」と思っている。

・私(妻)と夫で考え方が違う。夫は、引き剝がしてでもゲームを取り上げたがっている。夫婦で考え方が異なるとしんどい。

など……。

引きこもりやゲーム依存のお子さんをお持ちの親御さんなら誰しもが、不安や疑問を抱えていらっしゃると思います。

その言葉や想いは、とても心に突き刺さるものがありました。

「お悩みを本音で話してくださることが嬉しい」臨床心理士・福田俊介の想い

お悩みを本音で話してくださることが嬉しい」臨床心理士・福田俊介の想い

「どうにかしてゲームをやめさせたい」

「ゲームを無理矢理やめさせたくない」

親御さん方の考え方はさまざまです。しかし、共通して伝わってくるのは、親御さん達は、お子さんのことを心から心配し大切に思っている、ということです。

親御さんの言葉を受け、臨床心理士・福田俊介は、

「みなさん、お悩みを本音で話してくださって嬉しかったな」
そう感じたそうです。

お子さんを心配する親御さん方の愛情や熱い思いこそが、カウンセリングを成功させるうえでとても大切だからです。

淀屋橋心理療法センターの親御さん向け治療説明会のご紹介

淀屋橋心理療法センターの親御さん向け治療説明会のご紹介

淀屋橋心理療法センターの治療説明会は、親御さん方のお役に立てる情報をお伝えする事はもちろん、親御さん方が意見を言い合える、気持ちをリラックスできる、そんな場所を作る事も心がけています。

治療説明会では、このほかに精神科医・福田俊一によるQ&Aのコーナーを設けております。

ご自身のことはもちろん、他の方のお話に耳を傾ける機会ともなります。また、普段なかなか触れることのない、新しい意見や考え方に出会えるかもしれません。

なお、【淀屋橋心理療法センター 公式LINE】から、当センター主催の治療説明会のお知らせや、最新記事の更新などを発信しております。どうぞ、あわせてご覧くださいませ。

「治療説明会に行ってみたいけど、どんな雰囲気か不安……」という方は、こちらのページで治療説明会の様子をわかりやすく紹介していますので、ご参考になさってください。

>>>親御さん向けの治療説明会

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記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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