リストカットする子どもカウンセリングで心 を癒すには?家族療法の治療ケース

リストカットする子どもカウンセリングで心 を癒すには?家族療法の治療ケース

自分で自分の身体を切ってしまう「リストカット」は10~20代の女性に多く見られる自傷行為の一種です。病名ではなく、病院では「境界性パーソナリティ障害」「解離性障害」などの診断が下されます。
リストカットの治療は困難というイメージがあります。しかし、淀屋橋心理療法センターでは精神科医と臨床心理士のカウンセリング治療により、治癒に至った多くの実績があります。
7月25日に開催した「親御さんのためのリストカット治療説明会」より一部内容をお届けいたします。

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臨床心理士・福田俊介によるケース紹介

女子中学生のリストカット事例

中学2年生のマキさん(仮名)には月数回のリストカットに加え、窒息しそうな息苦しさに突然襲われる過呼吸の発作があり、不登校の状態が続いていました。

マキさんは繊細で、気をつかいすぎるタイプでした。嫌われたくないという思いが強すぎて、気の進まない誘いでも断ることができません。悩みを親に打ち明けることもできませんでした。

当センターに来所されたお母さんにカウンセリングを開始し、マキさんの性格の理解と対応方法を中心にアドバイスさせて頂きました。

すると、徐々にマキさんに良い変化が見られるようになりました。次第に表情が柔らかくなり、会話が長続きするようになってきました。苦手だった批判もできるようになり、友達の誘いを上手く断れるようになりました。

平坦な道のりではありませんでしたが、まずリストカットと過呼吸が止まり、学校にも徐々に登校できるようになりました。

カウンセリング のケースに関する質問

リストカットをする子どもへの効果的な対応

Q:現在、専門家のところに通っています。子どもは少しずつ良くなってきているのですが、解決までには時間がかかるだろうな、と思っています。ケースに出てきた親御さんのように、親の精神状態を維持するためには何をすれば良いでしょうか。

A:「また落ち込んで泣いていた」「またリストカットをしてしまった」というようなネガティブな情報ばかり注目せず、「会話が増えてきた」「笑顔が増えてきた」など小さな良い変化をカウンセラーと一緒に確認することが一つのポイントです。良い変化を確かめることで親御さんの不安が減り、それがお子さんの精神状態の安定にもつながると考えます。

子どものマイナス感情は受け止めた方が良い?

Q:私の子どもは批判が多いです。私は批判というのを良くないものと考えていましたが、もっとプラスに捉えた方がよいでしょうか。

A:日本には「批判しない」「文句や愚痴を言わない」ことを美徳とする文化があります。しかし、お子さんの性格によっては、批判や文句もしっかり言える方が、リストカットを卒業するための良い方向に向かう場合があります。

リストカットはいつまで続く?

Q:子どもは、リストカットをしたり止めたりを長い間くり返しています。今はおさまりかけて元気になっていますが、このまま様子を見ているのは良くないでしょうか。

A:リストカットは再発が多く波があるので、元気というだけではいずれ調子を崩す可能性が高いです。元気なだけではなく、成長する必要があります。成長というのは、例えば「人の目が気にならなくなる」「ノーと言えるようになる」というような変化が起こっていることです。「成長して元気」ならばその元気は維持され、リストカット(自傷行為)は解決に向かっていくと思います。

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カウンセリングによる克服ケース紹介

リストカットとは何か

リストカットは「死にたくて切るのでなく、切った時の高揚感が欲しくて切る」「現実が戻ってくる気がするから切る」「自分の中のどうしようもないモヤモヤが一時的に晴れるから切る」という説明がされることが多く、そのような理解が広まっています。

しかし、リストカットは治癒までのプロセスがいまだに不明です。病院に相談に行っても曖昧な回答でお茶を濁されることも少なくありません。治療の方法論を持っている専門家は少ないのが実情です。

リストカットする子には「生きづらさを克服しようとして頑張り過ぎているが、その自覚が薄い」という特徴が見られます。生きづらい所から「自分には無理や」と力を抜く生き方もあれば、どうしても這い上がろうと無茶苦茶な努力をする生き方もある。後者の方にリストカットは多いのです。

しかし、本人に「頑張ってますね」と言って「そうですね」と返す子はまず居ません。「私、ぜんぜん頑張れてません」とみんな言います。無理して頑張りすぎているという自覚が無いのです。

「リストカットをどうおさめるか」というのと「生きづらさそのものをどうするか」この2つを考えていく必要があると思います。

次に、当センターで治癒した実例をいくつか紹介します。

高校生(男性)進学校に通うケース

彼は、睡眠時間を削って猛勉強をしていました。テストの2週間前になるとリストカットが始まります。また睡眠が4時間以下になると切っていました。親御さんには「精神的なバランスを保つために一番大事なのは、普段の雑談が上手く回っている事です。良いリズムで話ができることがベースとして大事です。その上で、無理しないようになれたら良いですね。」というアドバイスをさせて頂きました。半年後、ピタッとリストカットが止まり、その後、第一志望の医学部に合格しました。

20代(女性)摂食障害があるケース

夜中にリストカットする事が多いため、彼女の気をそらすため、親御さんは夜中から明け方まで彼女をドライブに連れ出していました。彼女もやはり無理をするタイプで、精神的にボロボロの状態でも「アルバイトの面接に行く」と言います。当センターのカウンセリングにより摂食障害は治癒し、リストカットもおさまりました。

20代(女性)公務員のケース

彼女は、月曜日になると「仕事に行きたくない」と言ってリストカットをします。上司と面談したところ「仕事は抜群にできるが、勤務中ずっと緊張していて、気を緩める時がほとんど無い」ことが分かりました。当センターによる親御さんのカウンセリングと本人の1年間の休職を経て、復職できました。

所長のQ&Aコーナー

Q&A

リストカットをする人の特徴とは

Q:「リストカットをする人、しない人」にはどのような傾向があるかもっと知りたいです。例えば、勉強をし過ぎる人に多くてスポーツ選手や接客業の人に少ない、などという傾向はありませんか。

A:リストカットは、ジャンルを問わず「自分を限界まで追い込み、なかなか休めない」タイプに多いという印象があります。特定の職業に多い、あるいは少ないという強い印象はありませんが、知恵を絞らなくてはならない「企画職」には多いかもしれません。

親とカウンセラーの協力体制が大切

Q:リストカットをする子どもが家でイヤホンを外さず、自分の世界に浸っており、親とは会話をしようとしません。どう対応したら良いでしょうか。

A:お子さんと話をする時間は全くゼロでしょうか。どこかで話をする時もありませんか。例外を見つけて大事に育てていくと、子どもから「お母さん、どこ行ったの?」と寄ってきたりもします。どうやってそこまで持っていくかが、カウンセラーの腕の見せ所です。

リストカット治療説明会を終えて

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参加者の皆様からは「ケース紹介など、具体的な内容で経過が良く分かり、理解しやすかったです」「講義を聞くだけでなく、こちらから質問なども出来て、とても充実した時間でした。小人数も良かったと思います」「心理士さんの話を初めて聴きました。話し方が柔らかくて相談しやすいだろうと思いました」など、多くの感想を頂きました。

参加者の皆様には、猛暑の中お越し頂き、また多くのご意見やご質問を頂き、誠にありがとうございました。

2024.05.20  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》公認心理師 益子玄一郎

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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