無意識に頑張り過ぎている子どもたち

―親御さんのためのリストカット治療説明会を開催しました-

3月18日(金)に、
親御さんのためのリストカット治療説明会を開催しました。

ご興味のある方は、是非、当センターに足をお運びください。

“リストカット”

この言葉の意味が分からない方はどれくらいいらっしゃるでしょう?
おそらくとても少ないのではないでしょうか

「イジメられているつらい日常から逃れるため」
「失恋した相手の気を引くため」
「ただただ日々の仕事がつらくて・・・」

リストカットは、成人女性や思春期の中高生に多い印象がありますが、
最近では、小学生にもリストカットをしている子が増えていると聞きます。
言葉としてはとても一般的に知られている“リストカット”ですが、
“その効果的な治療方法について”はどうでしょうか

リストカットは治らない?

“リストカット”と聞いて、皆さんが思い浮かべるイメージはどんなものがあるでしょう?

  • インターネットで検索すると、傷跡の画像が沢山出てきて怖い
  • 自分の体を傷つけるくらいだから、心の傷もかなり深いのだろう
  • クセになって何度も繰り返し、抜け出せなくなるのでは? など、

不安や怖いイメージをされる方が多く、
治すことの難しい心の病と捉えている方も少なくないでしょう。

“リストカット”の治療方法についてインターネットで検索してみると、
傷跡をきれいにするための整形外科などの情報がとても多く出てきますが、
カウンセリングや心のケアを中心に行っている医院や施設は少なく感じました。

繰り返される自傷行為によってできてしまった傷跡は、外科治療することできれいになるでしょう。
一方、リストカットを繰り返さないようにするには、心のケアがとても大切です。
それなのに、どうして心の治療をしてくれるところは多くないのでしょうか。

リストカットをする人の心の治療方法については、専門家の中でもさまざまな意見があり、 「こうすれば良くなる」という具体的な治療方法が、一般的にはあまりはっきりしていません。

自信の身体を傷つける行為を繰り返していて、対応が難しいため、
積極的に治療を受け入れてくれる医院やカウンセリング施設が少ないのが現実です。
※死に直結するほどの重症ケースは割合として多くはありませんが、リストカットの傷の深さや頻度・本人の深刻さはさまざまで、とてもデリケートな問題なので慎重に診断しなければいけません。

そんな現実に、「お子さんを何とか治してあげたい」と願う親御さんは心を痛めていらっしゃるでしょう。

当センターでも、長年、リストカット治療の難しさに直面してきました。

そして、さまざまな臨床経験を積んだ結果、
リストカットする子の多くに共通するある特徴があることがわかりました。

無意識に頑張りすぎている子ども達

「リストカットをやめられないお子さんは、頑張りすぎている子が多いです。
 でも、本人は自分が頑張りすぎていることに気づいていない。
だから頑張ることをやめられず、どんどんしんどくなってしまうのです」と、
所長で医師の福田は話します。

頑張りすぎているからしんどくてリストカットがやめられないなら、
頑張るのをやめたらいいのでは?と思われるかもしれません。

でも、やめられないんです。
なぜなら、本人は頑張っていることに気づいていない
もしくは、頑張る事をやめられないのですから。

では、どうしたら頑張りすぎることをやめられるのでしょう?

軽視されがちな雑談の大切さ

リストカットを治療するために、当センターがはじめに注目すること

それは・・・
お子さんとの日常の雑談です

「リストカットをするようになった原因がわからないと治療できないのでは?」
「雑談なんて中身の無い話ばかりで、治療の役に立つとは思えない」
と、思われる方もたくさんいらっしゃるでしょう。

実は、雑談にはお子さんについての大切な情報がたくさん詰まっていて、
問題解決のヒントがたくさん得られるのです。
雑談を通して親御さんがお子さんへの理解を深め、問題を解決へ導くためには、
ただ、話をすればいいというわけではありません。
少しのコツを覚える必要がありますし、それを長く継続する親御さんの根気が必要です。

ケース紹介では、雑談がどのように大切なのか・どのように治療に関わってくるのかについてもご説明しました。

雑談を大切にした治療方法で
何度も繰り返していたリストカットの問題が解決したケース

ケース紹介は、臨床心理士の福田俊介よりご紹介させていただきました。

心配性で緊張しやすい性格の中学生の女の子・Mさんは、
甘え下手で、親御さんに悩みをあまり相談できません。

学校でも無理をしてニコニコしていたMさんは、
月に何度もリストカットをするようになり、
手首を切ったときの安堵感から、やめることができなくなっていました。

カウンセラーは、
お母さんとMさんとの雑談の時間を大切にしてもらうようにして、
Mさんの性格に合った対応方法や雑談の仕方をアドバイスしていきます。

そんな中で、Mさんの暗かった表情は少しづつ明るくなり、
Mさんが話してくれる内容も少しづつ増えていきます。

会話も増え、明るくなったMさん
「良かった。リストカットもしなくなった」と
親御さんが安堵していたら。。また、リストカット。。。

しかし、親御さんが丁寧に対応を続ける中で
最後は本当にキレイに治りました。

ケース紹介では、リストカット解決の難しさと
しっかりと解決するには、
お子さんに一番身近な親御さんが、
根気強くお子さんに合った対応を続けることがとても大切
というお話をしました。

親御さんの思いに応えるために

お子さんのリストカットという衝撃的な出来事は
目をそむけてしまいたくなるほどつらいことでしょう。
「どうしてあげたらいいのかわからない」と
悲痛に語られる親御さんはとても多くいらっしゃいます。

まずは、そのやり場のない思いをお話しいただけませんか?
親御さんが追い詰められたままでは、お子さんは苦しいままです。

さまざまな性格のお子さんがいるように、
親御さんの考え方や思いもさまざまです。

参加してくださった親御さんそれぞれに
「有意義な時間だった」と思ってもらえるように、
当センターでの勉強会では、限られた時間の中ではありますが、
カウンセラーと親御さんとのコミュニケーションを大切にしております。
是非、親御さんの生の声を聞かせてください。

この度は、当センターの勉強会に足を運んでいただきましてありがとうございました。
この勉強会が、皆さまにとって良いきっかけとなりますように。

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2022.04.26  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》原田友美

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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