子どもの話に耳ダンボ、お口チャック

「よい聞き役ってどうすればええんですか?」という質問をよく受けます。一言で「聞き役に撤する」といっても、じっさいの場面になるとなかなかできません。「じょうずに相づちをうって、子どもがどんどん話しやすい雰囲気をつくってあげましょう」と、口で言うは行うは難し。ヒントは「耳はダンボ、お口はチャック」ですと言うと「うちはだいじょうぶ。やってますから」と言われるお母さんでも、本当に良い聞き役になれてるかどうか。それを確かめるために当センターでは親子の会話記録をとってもらっています。そのなかでとてもじょうずに聞き役ができだしたお母さんの記録を紹介しましょう。

ここに登場する広志は中学三年生です。高校入学をひかえ、お母さんはあせりの毎日ですが、それ以前に「引きこもり、対人緊張」ぎみであまり外へでられません。そんな子どもが「ヨシッ、出かけてみよう」と決心できた会話の題材とやりとりの様子です。子どものやる気を引き出すヒントにしてください。

(内容は人物を特定できないように変えてあります)

広志:なんかうれしいな、ドラクエもう攻略できたで。こんどのゲームおもしろいわ。

母親:え、すごいね。

広志:ほんとすごいことやわ。偶然なんやけど、ヒントが次から次へとみつかってな、最高に運がええわ。

母親:よかったね。

広志:(ゲームの攻略本をもってくる)ほれ、おかん、これ見てみ。ここでな、ぼくヒントひらめいたんやで。そいでここをこうしてみたんや。そしたら扉開いてな。むっちゃラッキーやった。

母親:ほんまラッキーやな。

広志:ほんでな、このゲームのお集まりクラブがあるんやて。夜遅くまでなんか集まって話ししてるみたいや。みんなものすごい仲ええねんて。「面白い話し合ったら、いつでもご参加ください」って書いてある。大阪やしそんなに遠くないやろ。僕行ってみようかな。

母親:えー、お集まりクラブが。そら面白そうやな。

広志:えーと、どこでこんどの集まりはあるんかな。阪急ホテルのロビーに午後1時か。昼間やな。僕行けるかな。行ってみたいな。集まって自己紹介なんかもやるんやて。僕できるかな。心配や。

母親:言いたいこと紙に書いといたら。

広志:あ、そうか。まえもって書いといたらええんやな。よし、やってみるわ。

母親:そうや、がんばって。

お母さんが広志の話しを耳をダンボのようにして聞いている光景が目に浮かびませんか。お口チャックで自分の意見はほとんど言いません。子どもの言ったことに相づちをうったり、同じ言葉を返したりするだけです。これだけでいままで引きこもり、対人緊張ぎみだった子どもが「外へ出ていこう。人に会ってみよう」という気になっています。

2019.04.17  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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