肩の力ぬいて考えてみよう

「どうしたらいいですか、どうしたら」。電話口のむこうでお母さんが叫ばれます。落ち着いて肩の力を抜いて考えてみると、いくらでも工夫できることがたくさんあるのです。

「前回面接で出されたアドバイスをやってみました。お父さんに強く出てもらったのです。私は知らん顔してました。せっぱづまってやってみました。そしたら由美はぷいっと出て行ってしまいました。これでいいのでしょうか?次の面接までまだまだ日があります。あの子は本当に普通の生活にもどれるのでしょうか?アドバイスどおりにしてみたのですが、これでいいですか。

一日一日過ぎてゆくのがおそろしく、手遅れになりはしないかと心配です。どうしたらいいですか、どうしたら。これでいいかアドバイスください。どんな一言でもいいから、電話でアドバイスしてください。お待ちしています」

こんな電話がクライエントの母親からかかってくる。せっぱづまっている様子は語調や息づかいから伝わってくる。しかしこの段階で電話でアドバイスをだすというリスク(危険度)を考えてみてほしい。母親の頭のなかはパニックにちかい。今何を言っても冷静な気もちでうけとめられないであろう。しかもこちらは情報不足。適切な判断をくだせない状態におかれている。「それではこうしてみてください」とだしたとしたらどうであろう。母親は「わかりました。さっそくそうします」と、その場はおさまるかもしれない。しかし翌朝必ずと言っていいほどまた電話がかかってくる。「先生の言われるとおりやってみました。事態はよけい悪くなりました。どうしたらいいですか、どうしたら」となるであろう。しかもアドバイスは決して十分に配慮した上で実行されはしていない。母親一人が先走ってからまわりして、という事が多い。

「お母さん、二ついいますから耳をほじってよーく聞いてくださいね。一つは困ったときはとにかくあったことをできるだけ正確に書き留めておくってください。二つ目はお父さんに相談して。お父さんと協力して事にあたるようにしてください」。これでたいていの混乱は収拾できるのだ。

関連記事

9話:ほめてほめて―「じょうずやね」と母親がほめて、子が母を指導(瑛子23才、教師)

「やせたい、やせたい、でも食べたい」 瑛子(23才)は小学校の先生です。過食症になって一年がたちます。いつも給食ののこりを「もったいないなー」と、食べていたのが太るきっかけに。配達の箱に残るパンには、どうしても手がのびて […]

2014.05.29

ネット依存、ネット犯罪の相談で

地方の山間部にお住まいのKさんの息子さんは東京の難関大学に合格し現在2年生。ワンルームマンションで一人暮らしをしています。子どものころは神童と呼ばれていた自慢の息子さんです。 最近大学に来ていない連絡もつかないと学校側か […]

『過食症と拒食症』危機脱出の処方箋 第4話(お父さんが恐くて・・・)

『過食症と拒食症』 ― 危機脱出の処方箋 ―  福田俊一、増井昌美著 (星和書店、2001)より 本書は淀屋橋心理療法センターで治療したケースをもとに執筆、星和書店より出版したものです。本文のなかから症例や治療のポイント […]

シリーズ記事

1.子どもにいやみばかり言ってませんか?

「なんでうちの子はこんなに反発ばかりするのかしら」と、お母さんからよく聞かれます。「反発するというのは反発できる元気がある証拠だからいいじゃないですか」と、お答えするのですが。これでは解答にならないといわれるお母さま方に […]

2.子どもの言い分に耳をかたむけて

「お母さんはすぐに自分の考えを押しつけるやろ。だから僕なーんにも話す気なくなるんや」。小五になる真一君はお母さんにこんなことを言いました。「そやけど言わんとあんたなんにもせーへんやないの」。お母さんも負けていません。こん […]

3.子どもの話に耳ダンボ、お口チャック

「よい聞き役ってどうすればええんですか?」という質問をよく受けます。一言で「聞き役に撤する」といっても、じっさいの場面になるとなかなかできません。「じょうずに相づちをうって、子どもがどんどん話しやすい雰囲気をつくってあげ […]

4.子と父親の「橋渡し役」も母親の大事な役割

「良夫とお父さん、仲が悪くてね。寄るとけんかせーへんかとひやひやします」。中学二年になる良夫君は、少し遅れ気味の第二反抗期。ゲームが楽しくて仕方のない良夫君と「もうええかげんにせーや」というお父さんのあいだで、昨日もこん […]

5.肩の力ぬいて考えてみよう

「どうしたらいいですか、どうしたら」。電話口のむこうでお母さんが叫ばれます。落ち着いて肩の力を抜いて考えてみると、いくらでも工夫できることがたくさんあるのです。 「前回面接で出されたアドバイスをやってみました。お父さんに […]

6.高校やめるゆうんですわ。どないしましょ。

「単位制の高校へ代わるゆうんです。あと一週間行けば進級できるのに」と、真美(高一)のお母さんがかけ込んでこられました。長く不登校ケースとしてみていたのですが、昨年の秋ぶじ再登校にこぎつけたケースです。あれ以来多少の波風は […]

7.お父さんの出番をこしらえて

「それはな、お父さんに聞かんとわからへん。お父さんやったら知ってはるさかい」 幸恵(18才専門学校生)はバイクを買ってほしくてたまらない。「ねえ、ピンクのバイクなんやけど、こうてえな」と最近はうるさく母親につきまとってい […]

8.こだわる子に手こずっていませんか

「もうええやないの、そこまでせんでも」。亮君(中学二年)のこだわり症には、いつもお母さんはへきえきしています。 亮君はなにをするにも時間がかかるゆっくりさん。登校前にも「おかん、背中のほうに埃付いてるか見てくれ」と言って […]

9.ダメ母親を演じれますか?

「しっかり母さん」は、夫も子もしんどいって、わかってます?意外とこれに気がつかないお母さんが多いんです。とくに学生時代よくできたとか、しっかりしてるとほめられたとか。向上心の強い努力家のお母さん、要注意ですよ。 例をあげ […]

コラム一覧へ