親子関連編:子どもの「ひっつき虫」と、お母さんのヒステリー

幼い子ども(一才半)を連れた母親のケースです。面接中にこんな場面が出てきました。母親がなにか話そうとすると、ひざの上にあがってきて、母親の口をふさごうとします。「もう、この子は。あっちへ行ってって言ってるでしょう」と、切れてしまいました。面接どころではありません。「いつもこうですか?これはたいへんですね。次回はお父さんも参加していただきましょう」。

二週間後、こんどはお父さんもいっしょでした。お母さんにしがみついて離れようとしない子どもを、お父さんがじょうずにあやして待合い室のほうへと出てくれます。お母さんは、心に貯まっていたうっぷんを思いの丈話せて、ようやくすっきりできたようです。お父さんの育児参加がどれだけ、母親を救うかがわかりました。PHPの本より該当項目を下に紹介しましょう。

『ひっつき虫』

子どもがお母さんにまとわりついて離れないことはよくあります。ひっつき虫というのは、「わがまま、甘える」とならんで、子どもの心の成長にとても大切なことなのです。

問題はお母さんが疲れてしまい「いいかげんにあっちへ行ってなさい」と、ヒステリックに叫んでしまうことにあります。これでは子どもも欲求不満を感じるでしょう。

二~三歳まではこのひっつき虫が安定した情緒形成に重要な役割を果たすので、しっかりとひっつかせてあげます。そのためにはお父さんの育児参加も必要ですよね。お母さんが疲れはててしまわないよう、夜○時から○時はお父さんと交代、土日はお父さんの番とか決めておくと、お母さんも体を休めることができます。

しつけができる年齢になったら、「今は忙しいから待って」と言い聞かせます。相手の状態を見てガマンする必要があるというしつけは、将来社会性を養う上で、とても大切な要素となります。

ポイントはひっつかせてあげるときと、できないときのメリハリをつけることです。できるときは思いっきりひっつかせてあげて、満足感を与えてあげます。子どもは十分な愛情を感じたら自然に親から離れていきます。成長につれて肌のひっつき虫だけでなく、心のひっつき虫 — いっしょに話し合ったり、掃除をしたり、片づけたり — を育てていくことも大切です。

2019.04.17  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

1.親子関連編:子どもの「ひっつき虫」と、お母さんのヒステリー

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