「過食がなかったら、こんなこともあんなこともできるのに」
今までの治療経過
真理(高校一年の時に過食症、来所して2年が経過。不登校ぎみで進級が危ぶまれたが、ぎりぎり合格し、 三年に進級できた。過食はその後おさまりフォローの段階に入ったかにみえたが・・・)
過食症再発のファックスが
母親からファックスが入った。真理がまた過食を始めたという。自室で食べ物を買い込んで、バケツを用意し てそこで吐いているという。再発したことを家族にしられたくなかったのか。娘が学校へ行っているあいだ、 そっと部屋に入ってわかった。「なぜ!?学校でいやなことがあったのか。家族に言いたいことがあるのに言 えないのか」。とにかく予約をとって治療面接をお願いしたいという内容だった。
受験勉強の雰囲気が耐えられないと
久しぶりにやってきた真理は、以前より大人びた感じになっていた。うつむきながら話した内容はこうだ。 「二学期になってみんなすごい勉強しだして。私がちょっと話しかけても返事もろくにしてくれないし。今度の 日曜日テニスをする約束してた友だちが断ってきたり。なんかそんな雰囲気がとてもいや」。真理自身は大学に は行かず、専門学校へ入ることが決まっていた。こんななりゆきは当然予測されたことであるのに、それがいや で不登校ぎみになってきだした。
「私、過食があるから、みんなと同じように大学をめざせない。本当は専門学校に行きたくない。受験勉強し ている友だちみてると、うらやましい。過食さえなかったらなーって思う」、真理はこう言った。
過食があるから、課題提出が間に合わない
なにをやってもみんなより遅い。そんな性格も「私は、じっくり取り組むタイプ。だから早めにスタートす る」と、とらえれるようになっていたのに。「夜に過食するから、課題ができない。気持ちばっかりあせって、 集中できないし。過食して吐いたあと、体がしんどくてぼーとしてしまうし。もう私、過食があるから課題の提 出にも間に合わなくて」と、真理は言う。
過食はあってもできることはたくさんある
過食があるからするべきこともできないし、将来への希望ももてない。何をしてもむだだ。やる気がわいてこ ない。話しを聞いているとこう聞こえる。なんでも「過食」のせいにしていると、ほんとうに山を乗りこえられ ないだろう。人生の進路をどうするといった大きな山を乗りこえるのは難しくても、生活のなかの小さな山なら できることはいっぱいある。すべてを過食のせいにして「乗りこえられない」とさじを投げていると、ほんとう に過食は治らない道筋に入ってしまう。