過食症が「その場しのぎの対応」で治ると思うのは、おおまちがい。

過食症はちょっとなんとかすれば治る症状ではない。なんとかして、しかも年数かけて必死でなんとかして、やっと解決にこぎつけられるかどうか。それほど治りにくい症状の一つである。過食症の治療に長年携わってきて、残念に思うことがある。それは親御さんのなかには少し症状が改善すると「その場しのぎの対応でなんとかなる」と、思われていることである。先日もこんなことがあった。

「先生、次の面接ちょっと仕事が入って、行けなくなりました。キャンセルをお願いします」と、母親から電話が入った。今クライエントのA子は、山をなんとか乗りこえやっと平坦な道にでたばかりである。いまこそ家族で面接にきてもらい、道の歩み方や援助の手のさしのべ方などを話し合わねばならない。「よくここまで来れました。決してこれで安心されませんように。勝負はこれからですよ。次回はとても大切な面接になります」 と、前回の面接でしっかりと予防線をはっておいたのに。山を越えると家族もホッとし「もうだいじょうぶだろう」と、気をゆるめてしまうことがよくある。

母親の話はまだ続いた。「きょうはお時間あいてませんか。ちょっと近くまできましたので、少し状況をお話できたらと思いまして」。買い物に出てきたのか、それとも仕事の延長なのか。「A子がですね、お金をもっと ほしいと言うんですよ。渡してもいいでしょうか?まあ、食べる量のコントロールもだいぶよくなってますからいいとは思うんですが」。

なんと軽く考えていることか。話しを聞いて思わず語調がきつくなってしまった。「お母さん、そんな大事な話を電話でちょっとすませようというのは間違っています。なにかの合間にちょっと相談して「その場しのぎの対応でなんとかしよう」というお気持ちでは先行きが心配です。良くなりかけておられる今こそが勝負 時ですよ。A子さんの様子を詳しくきかせていただきませんと。面接の予約をとってぜひおいでください」。

過食症(拒食症もおなじ)のような困難なケースは、なんといっても家族(主として両親)の熱意がとても大切である。良い変化がでてくると、急にキャンセルが増えたり、面接の間隔があいてしまったりすることがよくある。小さなよい変化を認めつつ、気をぬかずコツコツと工夫を積み重ねていくことが解決へのポイントである。

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