
※本記事は、2026年2月3日に淀屋橋心理療法センターで開催されたリストカット治療説明会を基に執筆しております。
リストカットするお子さんの特徴や、彼らがどんなことを考えているのか、なぜ本音を言えないのか、なぜ一番身近な存在である家族に相談できないでいるのか。
そういった「子どもの気持ち」を、親側が理解するひとつのきっかけになればと思い、このレポートをまとめました。
すべてのケースに当てはまるわけではないかもしれませんが、少しでもヒントになれば幸いです。
また、今回は親御さんとお子さん、両方に向けて執筆しております。
淀屋橋心理療法センターは家族療法を専門としており、親御さんを対象とするカウンセリング施設ですが、お子さんにとっても、同じ思いを抱えている人の気持ちや、自覚できていない心の内をを知るきっかけとして読んでいただけるように、書かせていただきました。
目次
親に本音を言えない子ども

説明会講師であり臨床心理士・福田俊介の話から見えてきたのは、家族に相談できない子どもたちの姿でした。
家族に相談できない
リストカットする子は、そもそも家族には相談できないと感じている場合が多い傾向にあります。そのため、学校の先生を除けば、相談相手は血縁関係のない人になりがちです。例えば、
- かなり年上の彼氏
- ネットで知り合った友達
本人にとっては本音を言える存在でも、大人から見ると、つい心配してしまう相手でもあります。 そして、こんなことを心配しているようです。

親の反応を想像して、期待していることと違う反応が返ってきたり、望んでいない行動をされることを、子どもたちは案じている、もしくは嫌だと感じているのです。
家庭の外に居場所を求める
また、ほかの例では、お子さんが繁華街の特定の場所に通い、そこでのコミュニティに依存して抜け出せなくなっている、とお話しされている方もいらっしゃいました。
淀屋橋心理療法センター所長で精神科医・福田俊一によると、そのお子さんは、以下のような性格ではないかとの話がありました。
- なかなか頑固
- その子が納得のいく生き方を送れないとダメ
- 寂しさを抱えている
親子の相性を良くしていくなかで、その寂しさを解消することができるが、親御さんの理解と努力と、数カ月の時間が必要であるとも述べていました。
寂しさを解消できて初めて、自分には居場所があると感じられ、本音を話せるのかもしれません。
深みにはまりやすい性格
このように、家族に相談できない背景には、お子さんの性格や行動的な特徴が大きく関わっています。
福田によると、リストカットをする子の性格は、次のような場合が多くみられるようです。
- 心配性
- 悩みやすく、いつまでも悩んでいる
- 緊張しやすい
- 繊細
- 頑固(アドバイスされるのが嫌、アドバイスを聞かない)
行動によく見られる特徴が以下です。
- しんどくても頑張る(自分の弱点を隠して頑張る)
- 甘え下手
- 自分以外の人の悪口を聞いているだけで「私のこと?」としんどくなる
- もともと自分のことを話すのが苦手
- 相談上手とは言えない
とても繊細で、内に抱え込みやすいタイプと言えます。
なおさら、最も身近で本当は甘えたい存在である家族に話を聞いてもらえたら、一番心も晴れるでしょう。
そのためには、家族の誰かとご本人の相性がぴったり合っていないと難しいのです。
親の対応に不満があるが言えない

説明会では、参加されている親御さんとのセッションもありました。そのなかで、例えばこんな対応をしてしまっている、という話になりました。
- 「そんなの〇〇すればいいでしょ」とアドバイスしてしまう
- 「どうせ〇〇でしょ(そもそもちゃんと聞けていない)」と決めつけてしまう
- 「(子どものために)出るとこ出たろかー!」と熱くなってしまう
この対応で、納得するお子さんもいるでしょう。
しかし、「ただ聞いてほしい」「アドバイス、過度な心配はいらない」と考えている子もいます。
親御さんの「良かれと思って」した対応がお子さんの性格に合っていなかった場合は、少しずつ親子関係に溝ができていきます。
リストカットの本当の理由

ここまで、リストカットする子の背景や性格、親の対応が子どもの性格に合っていないことなどをお伝えしました。
ではなぜリストカットしてしまうのか。この章では、その本当の理由を考えてみます。
精神科医・福田俊一によると、
リストカットをすると、何かしらの救いがあるから切っている場合も。その子が抱えているイライラやモヤモヤを、一時的に痛みで解消していることも多いのだそうです。

そのギャップを埋めるために、強烈な痛みによって「生きている」ことを感じられる、気持ちが切り替わる、ということもあるようです。
参加者の親御さんのお子さんで、こんなケースがありました。
- 授業には出られないが、部活には行ける。部活はとても頑張っている(副部長)
- でも、リストカットしてしまう
授業には出られていないけれど、部活は頑張って参加していて、なんと副部長も任されている。ちゃんと頑張ることができているものもあるのに、それでも、リストカットしてしまう。

それは、生き方のどこかに無理をしていて、いつまでも消えないイライラやモヤモヤがあるから。その行き場のないストレス感情を解消するために切る、というのが福田の見解でした。
イライラを解消する別の道が見つかれば、リストカットが止まることがあります。その「別の道」の有力なひとつが、よく話し合える親子関係です。
そのためには、お子さんの気質を知り、それに合わせることが何よりも大切になります。
また、こうした本音を押し込めてしまう苦しさは、リストカットに限らないようです。
あるSNSで、人から見られる姿と、本当の自分とのギャップで苦しんでいる女性の投稿がありました。
この女性の場合は、
- 完璧主義で、一日の予定を細かく決めないと眠れない
- 親からずっと「手がかからない子」「お利口さん」と言われてきた
- 勉強を頑張ることでしかアイデンティティを保てなかった
お利口さんであり続けようとしたこの女性も、副部長として;頑張りすぎてしまう子と同じように、根っこには「無理した生き方」があるのかもしれません。
結果として、リストカットや本当の自分とのギャップへの悩みといった形で現れているのではないでしょうか。
【お子さんへ】子ども側の小さな一歩
とは言え、親御さんも
「あなたはかまってちゃんだから」
「気にしすぎ!」
「いま忙しくて…」
などの理由で片付けてしまい、正面から向き合わず、流してしまっている場合もあるでしょう。
最初に子どもからSOSを出すことも、きっかけのひとつになるかもしれません(エネルギーも使うし、よほど追い詰められないとできないし、とても勇気のいることですが)。
キーキー言う車輪は、直してもらえる

筆者が、とある記事を執筆した際に、福田がこんなことを述べていました。
「キーキー言う車輪は、直してもらえる」
聞きなれない言葉ですが、これは英語のことわざで、“声をあげた人ほど、対応や配慮をもらえる”という意味だそうです。
我慢して、静かにしていては「大丈夫」だと思われてしまいます。しかし言葉や態度で怒りや悲しみ、不安を表せば、「何かあるのかもしれない」と気づいてもらえるきっかけになります。
例えば、
- 「どうしていいかわからない…」
- 「むちゃくちゃ困っている」
- 「お手上げだ!」
このようにシンプルな言葉で、親御さんに伝えてみてもいいかもしれません。
\リストカットの詳しい治療方針についてはこちらの記事をお読みください/
リストカット(自傷行為)
落ち込むの反対は…?

また、臨床心理士・福田俊介も、説明会でこんなことを言っていました。

辞書通りなら「気分が落ち込む」の反対は、「意気揚々」「意気軒昂」など、元気ややる気が満ち溢れている様子を指します。
しかしそうではなく、「怒る」。
「怒るって、なんで?」と、不思議に思いますよね。
これまでできる限り、自分も怒らぬように、他人を怒らせぬように、心を砕いてきたかもしれません。
リストカットしてしまうお子さんは、怒ることは悪だと思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、むしろ怒っていいと、福田は言いました。怒って自分の感情を表に出すことが、心を成長させる重要なピースのひとつだと伝えていました。
キーキー言う車輪は、直してもらえます。
【親御さんへ】まとめに代えて
淀屋橋心理療法センターには、親御さんが地道にカウンセリングに通われた結果、
お子さんが薬を飲まずとも、自分の中の自主性を伸ばして生き方を切り開いた事例がたくさんあります。その中で、リストカットが止まっていくのです。
関連記事紹介
▶リストカットを克服した女子中学生の事例(自傷行為)~パパ活とリストカットと退学と~
▶【インタビュー記事】どうしてリスカしてしまうのか?母と娘で乗り越えたリストカット
また、治療説明会に来てくださった親御さんのように、親子関係の問題を見直すきっかけに気づかれ、自ら行動を起こされる方もいらっしゃいます。
ただ、忙しい日々のなかでは、なかなか気づくのが難しい場合も多いでしょう。しかし、親子の関わり方が変わることで、少しずつ状況が変わることもあります。
お子さんのなかなか言えずにいる気持ちに気づくこと。
お子さんの性格を理解し、話を聞くこと。
親子関係には、問題があるだけではありません。むしろ「お子さんを伸ばすチャンス」も、いっぱいあるのです。当センターでは、そのように捉えています。

当センターでは、不定期にリストカットの治療説明会を開催しております。
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