PHPのびのび子育て Special Edition

子育て中のお母さんへ:『子どもの「わがまま」で困ったときの言葉かけ』

『子どもの「わがまま」で困ったときの言葉がけ』という特集で、PHPのびのび子育て誌(PHP研究所)からスペシャル版がだされました。そこに当センターから出した記事が掲載されています(50p)。それをまとめてご紹介しましょう。

お母さん、言葉にできない子どもの苦しみに気づいていますか?

「心の闇」の受けとめ方・・・・・子どものつらさや悲しさの発信を感じ取り、しっかりケアしていきましょう。

【事例1】思い通りにならないとかんしゃくを起こす

幼稚園に通う真美ちゃん(5歳)はピンクの花模様のワンピースがお気に入りです。前日に汚してしまったので、お母さんは「そのワンピースは洗濯するから今日はこっちを着て行ってね」と言いました。すると真美ちゃんは、「このワンピースでないといや」と言い張ります。お母さんが洗濯しようとすると、「このワンピースでないといや!」と泣き叫びながらひっくり返って足をバタバタ・・・・・。「気に入らないといつもこう。どうしたらいいのかしら」と、お母さんは困ってしまいました。

●アドバイス:ゆっくり、ていねいに説明する

かんしゃくを起こす子の多くはこだわり性ですから、心の中にわだかまりがあるはずです。それをうまく言葉で言えず「ワーッ」となってしまうのでしょう。かんしゃくがおさまってから「あのワンピース、真美のお気に入りよね。とてもよく似合ってるわ。でも泥で汚れてるね」と見せながら、「真美の体も汚れてしまうから、きれいに洗おうね」と、ゆっくりと説明しましょう。かんしゃくが強い子は、頭の中がすぐに一つのことでいっぱいになってオーバーフローしやすい状態になります。だから一度に多くのことを言わないようにしましょう。一方的に言い聞かせるより、子どもにも言い分を言わせながらのほうがスムーズです。この積み重ねで、人の話も聞けて自分の言いたい事も言えるという器ができていくでしょう。

【事例2】学校へ行こうとすると腹痛が起こる

毎朝登校時刻が近づくと「お腹いたーい」と孝夫君(小3)はトイレに駆け込んで出てきません。お母さんが「学校に行きたくないんじゃないの。何かあったの?」と聞いても孝夫君は「わからない」と言うばかり。こんな状態がもう一週間も続いています。お母さんは不登校になってしまうのではと、心配でたまりません。「学校を休むなんて、怠けてるんじゃないか」とお父さんが厳しく言ったところ、朝になっても布団から出てこなくなり事態は悪くなる一方です。

●アドバイス:さりげなく話しあおう

孝夫君は「お腹が痛い」と訴えていますので、「それなら学校へ行くのはむりね」とまずは受け入れてみましょう。それでも腹痛が続くようなら「お医者さんに診てもらおうか」と声をかけ、そこで異状なしであれば、はじめて心のケアに入ります。子どもの心の中には学校へ行かないことへの罪悪感があるでしょうから、まずは「しばらくゆっくりしていいのよ」と言い、その罪悪感を取り除いてやります。そして、親子のコミュニケーションを大事にしましょう。孝夫君の好きなテレビやマンガなどについてさりげなく話し合っているうちに、緊張していた心もほぐれてくるでしょう。避けていた学校の話が子どもの口から自然に出てくることもよくあります。しっかりと聞いていると、目が輝いてきたり勢いよく話し出したりと次第に元気が湧いてきます。その頃には学校へ行けなかった理由も、自分から話出すということがよくあります。

【事例3】反抗的な態度をとる

「あんなにいい子だったのに、このごろ乱暴になって。悪い友だちでもできたのかしら」と、お母さんから息子の翔君(小6)について相談を受けました。「お箸の持ち方、違ってるよ」「こぼしたら拭こうね」と食事のときにお母さんが注意をすると、以前なら「はーい」と言って直していたのに、このごろ「うるさい、ババア」と言ったり、お箸を投げつけたりするそうです。お母さんはびっくりしたのと同時に恐さもあり、最近は腫れ物にさわるようにしか対応できなくなってしまったそうです。

●アドバイス:聞き役に徹し、気持ちを受けとめる

小学校高学年になると反抗的な態度を取るのはごく自然な変化です。いわゆる自我の芽が伸びて自己主張をはじめる頃です。親からあれこれ言われると抑えつけられている感じがして、大人のすることすべてがうっとおしく、かなり反抗的な態度を出してきます。程度にもよりますが、心配なことではありません。この頃の子どもたちは小さい頃から、怒りや不満などの負の感情を言葉で伝える習慣が少なくなってきています。そのせいでしょうか、中学生や高校生になっても、自己主張の仕方が幼稚で、言葉も荒く、とても世間で通用するものではありません。どこかで思いきり言いたいことを言い、しっかりと聞き役になって受け止めてもらえる場所が必要です。したいことをする中で、子どもは自分の芽の出し方を覚えていきます。

お知らせ:淀屋橋心理療法センターから子育てに関する本が2冊出ております。

『しぐさで子どもの心がわかる本』(PHP研究所福田俊一、増井昌美著)

『ちょっと気になる子どもの行動』(PHP研究所〃〃)

本誌50p掲載

2012.12.10  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

2014.09.09

1.笑顔 2014年9月号

わが家のげんきをそだてる「笑顔」 福田俊一 所長・精神科医・心療内科医 保健同人社 180円+税 2014年9月号 「わが家のげんきをそだてる『笑顔』」誌の2014年9月号25ページの「こころとからだの笑顔相談室」のコー […]

2010.03.10

2.AREA ‘01.3.15

AERA ‘10.3.15 朝日新聞出版 380円 2010年3月15日号 「AREA ‘01.3.15」 内容紹介 愛子さまの不登校 小学校低学年のケアは あの学習院でも公立校と同じような不登校 […]

2011.05.19

3.PHPのびのび子育て2011年7月増刊号

PHPのびのび子育て 福田俊一 精神科医・所長 増井昌美 家族問題研究室長 PHP研究所 500円 2011年7月号増刊号 購入のお問い合わせは03-3239-6233075-681-3344 PHP研究所 www.ph […]

2012.06.11

4.edu 2012年6月号

edu 福田俊一 精神科医・所長 増井昌美 家族問題研究室長 小学館 780円 2012年6月号 見落とさないで!子どものストレスサイン ”普段の様子”と何かが違う……。そこにストレスのサインが隠れています 子どものスト […]

2012.12.10

5.PHPのびのび子育て Special Edition

子育て中のお母さんへ:『子どもの「わがまま」で困ったときの言葉かけ』 PHPのびのび子育て Special Edition PHP研究所 福田俊一 精神科医・所長 増井昌美 家族問題研究室長 780円 2012年9月 購 […]

6.からだの科学 心身症のすべて

日本評論社 1800円(税込) 2007年8月1日 「からだの科学心身症のすべて」 内容紹介 PART4. 心身症を治す 家族療法 家族療法の歴史とその有効性 家族療法でわかる家族の文化や特徴 淀屋橋心理療法センターの家 […]

7.ポプラディア サムズ vol.1 意外と知らないうちの子のレベル

ポプラ社 580円(税込) 2007年9月 「ポプラディア サムズ vol.1 意外と知らないうちの子のレベル」 内容紹介 月刊ポプラディア11月号増刊―ポプラディア サムズ よその子より上か下か? 意外と知らないうちの […]

関連記事

2014.03.10

クライアントを紹介していただいた機関

大阪大学医学部附属病院 神経科精神科 大阪大学医学部附属病院 小児科 大阪大学医学部附属病院 産科婦人科 大阪大学健康体育部 保健センター 大阪市立大学医学部附属病院 小児科 大阪府立急性期・総合医療センター(旧大阪府立 […]

2010.03.10

AREA ‘01.3.15

AERA ‘10.3.15 朝日新聞出版 380円 2010年3月15日号 「AREA ‘01.3.15」 内容紹介 愛子さまの不登校 小学校低学年のケアは あの学習院でも公立校と同じような不登校 […]

2001.12.31

講演 平成13年

平成13年02月 明浄学院高等学校教職員「不登校・自傷行為」 平成13年11月 伊丹市医師会「心理療法センターでよくみられるストレス症状」 大阪府立天王寺高校「高校生の揺れる心」

記事一覧へ