3.「摂食障害・過食症が、ほんとうに良くなりました」と母親がうれし涙

夏美(18才 高三、過食症になって三年たってから淀屋橋心理療法センターへ来所)

「夏美さんの過食症は、一年後にびっくりするくらい良くなりますよ」

カウンセリング治療がスタートして一月たったころのことです。「えー、そんな。この娘の過食症が、一年で? だって過食症になって三年がたつんですよ。毎日食べて吐いて。学校は休みがちだし。入院してもだめだったし。もうあきらめの気持ちで淀屋橋心理療法センターにかよいだしたんです。それが一年でびっくりするくらいよくなりますか?」と母親は、信じられないようすでした。

夏美の過食はけっして軽いとは言えません。毎日学校からかえると、自室にこもって食べはじめます。週に二回、コンビニでバイトをして過食の費用にあてています。母親は過食がエスカレートしないか心配で、なんとかバイトをやめさせたいと思っているのですが。

母親:夏美ちゃん、過食のためにバイトするのやめようよ。高校生なんやからしっかり勉強と部活をしたら。

夏美:なによ、私のすることに文句つけんといて。小さいときから、私のすることぜんぶ否定ばっかりして。私の部屋から出てってよ。「食べてるとき、じゃませんといて」って、何回ゆうたらわかるんよ。あんたはボケてんのか。(母親にむかって食べかけていたカステラが飛んでくる)

なぐり書きで、親の悪口を紙いっぱいに書いてきた夏美

「先生、見て下さい。こんなこと書いた紙を私にみせるんです」と、母親は大きな紙をテーブルの上にひろげてみせた。そこには黒いマジックで、親の悪口がいっぱい大小とりまぜた字でなぐり書きしてあった。

『お母さんは、くそばばあや。おまえなんか、おらへんほうがええわ。ごはんの用意だけしたら、もうひっこんでくれ!なんやきょうのおかず。私の好きなエビフライいっぱい、ゆうてんのに、野菜の煮物ばっかりつくって。なに聞いてるんや。口ひらいたら「食べ過ぎや」とか「吐いたらあかん」とか、ばっかりゆうて。もう顔もみたないわ!私が過食症になったんは、おまえのせいや。時間をかえせ。青春をかえしてくれ!』

『お父さん、私のこと監視するな!夜、私の部屋に近づくな!おまえはストーカーか。わたしが食べてるとき、ぜったい私の部屋、あけたらいかん!!お父さんは、ハイエナや!お父さんは、無神経すぎる』

「こんなこと、親にむかって書いてよこすなんて。食べたいだけ食べて、吐いて。毎日自分中心のかってな生活やというのに。文句いいだしたら、夜中でも寝かせてもらえないんです。いつまでこんな生活がつづくかと思うと、たまりません」と、母親は涙をながしていました。

「そうですか。ずいぶんはっきりしてますね、夏美さんは。自分のいやなこと、親に腹たつことなんかをね。この調子がつづいたら、一年後どうなるか。対応しだいによっては、大きく右と左にわかれるでしょうね」と、つぶやくようにセラピストは言いました。「びっくりするくらい良くなるか、毎日が修羅場のようになるか。どんなことがあっても「びっくりするくらい良くなる方へ」と行ってもらわなくては。お母さん、頑張ってついてこれますか?」と、セラピストは再度母親の決意を確かめました。

摂食障害・過食症がおちついて、ほんとうに良くなった一年後

治療がスタートしてほぼ一年がたちました。お母さんも必死でセラピストのカウンセリング治療についてきました。課題をこなしたり、父親の協力をえようと努力したり。そして春がやってきました。

「先生、夏美が大学に合格したんです。私、信じられなくて。あんなに学校もやすみがちで、食べて吐いてしてたのに。先生のおかげです」と、春まじかの面接でこんなうれしい報告が伝えられました。

一年前、たしかに夏美の過食は軽いとは言えませんでした。母親との親子関係もぎくしゃくしていました。それがこのごろでは、学校であったこと、友だちとのあいだでおきたいやなこと、なんでも母親に話してくれるようになりました。バイトでもらったお給料もぜんぶ過食に使わず「お母さん、半分は貯金しといてね」といって、わたすようになりました。いまでは一週間に2回くらいの過食嘔吐になっています。

「一年前、先生が『夏美さんの過食症は、一年後にびっくりするくらい良くなりますよ』って言ってくださって。私『まさか、一年で良くなるなんて、信じられない』って思ってました。でもほんとうに良くなりました。先生のおかげです」と、母親はほんとうにうれしそうです。みると目には涙がにじんでいました。「いやいや、お母さんが頑張られたからですよ。ほんとうにおめでとう。これからますます伸びていかれますよ」と、セラピストは母親をねぎらいました。

症状を克服、良くなった姿

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