「もうあかん」から、三ヶ月後「こんでええんや」と笑顔がでてきて好転|うつ病・抑うつ状態・双極性障害(双極Ⅱ型) カウンセリング治療専門外来(職場のストレス)

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「もうあかん」から、三ヶ月後「こんでええんや」と笑顔がでてきて好転

橋本さん(35才)は、職場(商社の輸出部門)で、大きなプロジェクトを任されていた。が、たび重なるミスのため上司から叱責をうけてしまった。そのあたりから遅刻や欠勤がまじりはじめ、とうとう休職をすすめられるまでにいたった。

「自分のポジションがなくなる不安で、仕事を休めないんです」

「もうあかん、これ以上ようがんばらん」と言いながらも、橋本さんは会社を休むことができないでいた。「やすんだら、自分の仕事がのうなってしまう。それに新しい技術についていけんようになる」と言うのが口癖だった。しかし度重なるミスのあと、決定的ともいえる大きなミスをして上司の叱責をうけてしまったのだ。「どうしていいかわからへん」「もう自分なんか、会社にとってはいらん人間や」といった思いが、頭のなかをぐるぐるまわりはじめていた。こんな状態で出社してもいい仕事はできないばかりか、周りからみるとまたミスをおかしかねない危うさが感じられた。

「橋本君、ちょっと部長室まできてくれますか」と、部長から声がかかったのはこんな不安な状態のときだった。「あのね、君の仕事熱心な気持ちはよくわかるよ。でもねこのごろの君を見ているとすごく疲れている感じがする。どうだね、しばらく休職して心の専門家の診察をうけてみては」。「部長、ご心配かけて申し訳ありません。自分がたよりないばっかりに、ご迷惑をおかけして」と、橋本さんはできるかぎりの声をふりしぼってわびを言った。「でも部長、不安なんです。仕事を休むともう自分のポジションがなくなってしまうんじゃないかと。それが気になって気になって、仕事を休めないんです」と、正直に話してみた。「その心配は私に任せなさい。復帰できてきたときは、力になるから。それより今の危なっかしい状態を、心のお医者さんにみてもらって早くなんとかしないと。君の仕事熱心なのは、みんな認めているんだから」と、部長の声は意外にあたたかく頼もしかった。

部長のあと押しでようやく橋本さんは、インターネットで「職場ストレス・うつ」というキーワードを入れて検索してみた。たくさんのカウンセリング機関の中で、家族にも対応のアドバイスをくれるというところに目がとまった。こうして家族療法を中心におこなっている淀屋橋心理療法センターに行きついたのであった。

「『家族にアドバイスくれるところ』で、ここに決めました」

橋本さんは奥さんにつきそわれて来所した。「『一人で行く』と主人は言ったんですけど、心配なので私がつきそってきました」と、奥さんはハキハキと話しはじめた。「夜も眠れないみたいで、何度も目を覚ましているようです。それに食欲もなくって、体重が5~6キロへっています。頭を壁にうちつけたり、とても心配な状態なんです」と、かなり具体的な状況説明がはじまった。

「カウンセリングをしてくれる所はずいぶん多くあると思いますが、ここを選ばれたのはなにか理由がおありですか?」というカウンセラーの質問に、奥さんはためらわず答えた。「主人といっしょにインターネットでさがしました。いっぱいあって最初は迷ったんですけど、ここは「家族にも対応のアドバイスをさしあげます」「家族の協力は大きな力です」といったことが書いてあって、それでこちらに決めました。私も主人の立ち直りに力をかせるんだなっていうのがうれしくて。よろしくお願いします」。

「はよう会社いかないと、クビになる」と、あせりで苦しい

カウンセリングは橋本さんのあせりや不安をしっかりと受けとめていくことからスタートした。次から次へとでてくる橋本さんの訴えを、いくつか書き出してみた。 

橋本さんの訴え

  • 「食事がね、なにを食べても砂をかむようでおいしくないんです」
  • 「夜、なかなか寝付けなくて。眠剤のんでもあきません。すぐ目がさめてしまうし」
  • 「みんなに迷惑ばっかりかけてるような気がして」
  • 「ぼくがやってしまったミスは、取り返しのつかないものや。もうクビや」
  • 「家でこうしてなにもせんと、みんなから取り残されてしまうだけや」

奥さんにも「家でご主人からこのような言葉が出てきたときは、励ましたり否定したりせずに、まずはだまって心ゆくまで聞いてあげてください」というアドバイスをだしておいた。

三ヶ月後、別人のように笑顔がでてきた

 いろいろなアドバイスをだしながら家での奥さんの協力もえて、三ヶ月がすぎた。カウンセリングで橋本さんが話す内容は、はじめのうちは暗い苦しいものばかりだったが、しだいに変化がみられだした。「『そうか、グチはゆうてもええんやな』と思えたので、肩の力がぬけたような気がしました」というふうな言葉もでてくるようになった。奥さんもカウンセラーからアドバイスをもらって、安心して取り組むことができたようだ。

つぎに橋本さんの様子からうつから立ち直る姿をいくつかまとめてみた。

良くなった姿

  • 「布団のなかでごろごろしていても、こんでええんや、と思えて。楽ですね」
  • 「マンガが読めだしました。 あーあ、マンガくらいしか読めへんやな、とは思いますが」
  • 「仕事のポジション代えられても、『ま、いいか』って思えるようになりました」
  • 「息子のTVゲーム「ヨッシーアイランド」をやってみたら、けっこうおもしろいんです」
  • 「『パチンコしてこようかな』とゆうたら家内が「え、一人で行けるの」とびっくりして」

こう話す橋本さんの声も表情も別人のようにリラックスしていた。三ヶ月でこれだけ良い変化がでてくるとは。やはり奥さんにもこまかなアドバイスをだし、さまざまな工夫をしてもらい、家で適切な対応をとりながら協力してもらったのがよかったと思える。早い段階で、一ヶ月と決まっていた休職を半年と伸ばしてもらったのもよかった。はじめのうちは「そんな長いこと休んだらもうクビです」と、不安いっぱいの橋本さんだった。しかし腰をすえてカウンセリング治療にとりくむことができたのも、早く好転した理由の一つかもしれない。

「橋本さんには、まだまだこれから気が向かないときや不安なときの対処のしかたや自分の守りかたを、経験してつかんでいってもらわなくては。でもずいぶん元気になって力がついてこられましたね」と、カウンセラーもうれしそうに言葉をかけた。「仕事で先頭にたってやってるときが、一番やりがいがあったなーって思います。でも今は今で別の大切な時間を過ごしているなと。仕事だけが楽しみやないってわかったんが、今回のつまづきで得た一番ええことやったと思います」と、橋本さんは笑いながらこんな話ができるようになっていた。

症状を克服、良くなった姿

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