
「愛情を注いでいるのに、なぜか子どもとうまくいかない」
「自分の気持ちがなかなか子どもに伝わらない」
子育てをしていると、そんなもどかしさを感じることがあります。
2026年5月25日、淀屋橋心理療法センターでは「親子の相性を合わせる勉強会」を初めて開催しました。
「親子の相性って、生まれつき決まっているんじゃないの?」
「もし相性を合わせられるなら、子どもとうまくやれるかもしれない」
今回は、そんな思いを持った親御さんたちが参加されました。
目次
相性は「良い・悪い」ではなく、合わせられるもの
当センターがこの勉強会を通して親御さんにお伝えしたいのは、親子の相性は生まれつきで決まってしまうものではなく、関わり方によって少しずつ合わせていけるということです。
「どの子にも同じように愛情を注いでいるのに、一人だけ心を開いてくれない」
「こんなに心配しているのに、気持ちが伝わらない」
「どうしてこの子とは、こんなにも噛み合わないの?相性が悪いのだろうか」
子育てをしていると、このように感じることがあります。
しかし、それは親子の相性が悪いからではありません。親と子どもの考え方や感じ方、物事の進め方にズレが生じているためです。
親が子どもの特性を理解し、関わり方を調整することで、そのズレは少しずつ小さくしていくことができます。それが、『親子の相性を合わせていく』ということです。
親子の「相性のズレ」には、いくつかのパターンがある
親子の相性は、「親だけ」「子どもだけ」の性格で決まるものではありません。親と子どもの組み合わせによって、さまざまなズレが生まれます。
このように、親子が似すぎていることでぶつかることもあれば、考え方やテンポ、距離感の違いからすれ違いが生まれることもあります。
同じ親から生まれた子どもでも、一人ひとりタイプは異なります。だからこそ、親が同じように接していても、子どもによって受け取り方が変わり、相性のズレが生じることがあるのです。
相性のズレを大きくする「子どもの繊細さ」
こうした相性のズレは、子どもが持つ「繊細さ」によって、より大きく表れることがあります。
当センターに寄せられる相談は、リストカットや癇癪、不登校、引きこもりなどさまざまです。しかし、表面に現れる症状は違っていても、その背景には共通した生きづらさが隠れていることが少なくありません。
例えば、
- 自分を責めやすい
- 人の悪口を言えない
- 嫌なことを断れない
- 周囲に気を使いすぎる
- 本音を抱え込んでしまう
といった「繊細さ」です。
親子のコミュニケーションがうまくいかないときは、「どこにズレがあるのだろう」と考えてみることが、関わり方を見直す第一歩になるかもしれません。
親子のすれ違いは、「関わり方」からも生まれる
親子には、もともとの性格や気質による相性があります。同じ関わり方をしていても、その相性によって、子どもの受け取り方は大きく異なります。
そのため、親が良かれと思っている関わり方が、その子には負担になってしまうことがあります。
ケース①「褒めたい親」×「褒められると警戒する子」
ある親御さんは、「子どもに自信をつけてほしい」という思いから、目標を達成したときや、できたことを積極的に褒めていました。しかし、子どもからは「もう褒めないで」と言われてしまいました。
子どものほうから「ねえママ、○○できたよ!」とアピールしてくる場合は、もちろん褒めてあげましょう。しかし、なかには褒められることがプレッシャーになったり、「急にこんなに褒めてくるなんて、ママは私を思い通りに操ろうとしているんじゃないの?」と警戒してしまう子どももいます。
ケース②「テキパキな親」×「ゆっくりペースの子」
親子のテンポが異なるケースもよく見られます。お母さんは家事も仕事もテキパキこなし、「次は何をするべきか」を常に考えるタイプ。一方、子どもさんは考えることにも決断することにも時間が必要な、ゆっくりとしたペースです。
お母さんは「宿題したの?」「部屋は片づけた?」と、つい先回りして声をかけてしまいます。しかし子どもは、やる気がないわけではなく、まだ考えていたり、気持ちを整理したりしている途中なのかもしれません。
ケース③「話したい親」×「答えを知りたい子」
子どもに「ママ、スーパーで何買ったの?」と聞かれたお母さんは、「それがね、今日スーパーで○○さんに会ってね……」と話し始めます。お母さんに悪気はありません。子どもと会話を楽しみたい、たくさん話したいという気持ちからです。
しかし、子どもの表情は少しずつ曇っていきます。子どもが知りたかったのは、「何を買ったのか」という答えだったからです。特に繊細な子どもの場合、自分が知りたいことに答えてもらえない経験が積み重なると、「うちの親は話しにくい」「どうせわかってもらえない」と感じ、少しずつ本音を話さなくなってしまうことがあります。
ケース④「話を聞き出したい親」×「話したくない子」
子どもに元気がないと、親は心配になります。「何かあったの?」「学校どうだった?」「嫌なことがあった?」と、理由を知りたくなるのは自然なことです。
しかし、なかには自分の気持ちを整理してからでないと話せない子や、自分のタイミングで話したい子もいます。親に話したくないのではなく、まだ話せる状態ではないのかもしれません。
そのため親が質問を重ねるほど、子どもは「まだ話したくない」「放っておいてほしい」と感じ、心を閉ざしてしまうことがあります。
ケース⑤「正しいことを教えたい親」×「経験して学びたい子」
親としては、「社会に出て困らないように教えてあげたい」「間違ったことは直してあげたい」という思いから、つい注意や指示が増えてしまいます。しかし、なかには、人から教えられて学ぶよりも、自分で経験しながら少しずつ理解していくタイプの子どももいます。
このような子どもに対して、指示やしつけを強めるほど、かえって不安や反発が強くなり、親子のすれ違いが大きくなってしまうことがあります。
相性を合わせるための4つの実践ポイント
親子の相性を合わせるとは、子どもを変えることではなく、親が子どもを理解し、関わり方を調整することです。そのためには、日々の関わり方を少しずつ見直していくことが大切です。ここでは、勉強会で紹介された内容の中から、ご家庭でも実践しやすい4つのポイントをまとめました。
ポイント①子どものペースを尊重する
親は「子どものために」と思うほど、先回りしたり、急かしたりしがちです。しかし、その関わり方が子どものペースと合わないと、親子のすれ違いにつながることがあります。
なかには、考えることや気持ちを整理するのに時間が必要な子もいます。親にとっては「そろそろ返事があってもいい頃だろう」と思っていても、子どもはまだ考えている途中かもしれません。だからこそ、その子のペースを尊重し、「待つ」ことを意識してみることが大切です。
ポイント②子どもとの雑談を大切にする
雑談というと、「中身のない会話」「単なるおしゃべり」と考える人は少なくありません。しかし当センターでは、雑談は子どもの成長を支える最も大切なコミュニケーションの1つだと考えています。
子どもが自分のペースでイキイキと話し、「ママ(パパ)と話していると楽しい!」と感じられるような会話です。親がしっかり聞いてあげ、子どものほうから自然と話が広がっていく。それが、当センターが考える理想の雑談です。
そうして何気ない話題を親子で一緒に楽しめ、安心できる会話の積み重ねがあるからこそ、子どもは悩みや本音といった核心に触れる話もできるようになるのです。
ポイント③褒めるよりも聞く
親としては「自信をつけてほしい」という思いから、つい褒めようとしてしまいます。しかし、子どものタイプによっては、褒められること自体がプレッシャーになることがあります。
特に、親が褒めても反応が良くない子どもの場合は、「評価する」ことよりも、「興味を持つ」ことを意識してみるとよいかもしれません。
「それはどうやったの?」「よく考えたね!」
子どもの考え方や工夫に関心を持って耳を傾けること。それこそが、子どもの安心感や自信につながることがあります。
ポイント④元気ではなく、子どもの成長を見る
子どもの調子には波があります。癇癪やリストカットなどの症状も、一度良くなったと思っても、再び悪化することがあります。そのため、親はどうしても「今日は元気そうだった」「また悪くなった」と、一喜一憂してしまいがちです。
しかし、目の前の症状や元気さだけではなく、その子がどのように成長しているかを見ることが大切です。
例えば、
- 笑顔が増えた
- 口数が増えた
- リビングにいる時間が増えた
- 友達の文句を言えるようになった
- 気持ちの切り替えが早くなった
といった変化です。
問題だけを見るのではなく、その子の成長した部分にも目を向けることが大切です。
Q&A 親御さんから寄せられた質問
勉強会では参加者からさまざまな質問が寄せられました。ここでは抜粋してご紹介します。
Q. (子どもへの関わり方に戸惑いを感じる親御さんからの質問)
子どもの気持ちを優先しすぎると、わがままになりませんか?
「子どもの話を聞きましょう」と言われると、「それでは子どもの言いなりになってしまうのではないか」「わがままになってしまうのではないか」と不安になる親御さんもいます。
ただし、その答えは子どものタイプによって異なります。
普段から自分の気持ちをはっきり主張できる子どもであれば、別の関わり方が必要になることもあるでしょう。一方で、嫌なことを我慢したり、自分の気持ちを飲み込んでしまったりするタイプの子どもであれば、まずは家の中で安心して本音を話せるようになることが大切です。
そうした安心感が育つことで、むしろ自信が湧き、周りのことも見えるようになっていきます。
Q. (子どもさんの癇癪に悩む親御さんからの質問)
「癇癪の回数が減ったら、良くなったと考えてよいのでしょうか?」
親御さんとしては、もちろん癇癪の回数は気になるところです。しかし、本当に見つめてほしいのは、「癇癪が減ったかどうか」だけではなく、「子どもが成長しているかどうか」です。
例えば、
- 自分の気持ちを言葉で伝えられるようになった
- 「イヤ」と言えるようになった
- 癇癪の後の気持ちの切り替えが早くなった
このような変化が見られれば、子どもの成長が進んでいる可能性があります。癇癪の回数もぐっと減っていくでしょう。症状だけに一喜一憂するのではなく、子どもの全体的な変化を見守ることが大切です。
Q. (過去の気持ちを打ち明けられた親御さんからの質問)
子どもから「あの時、本当はこうしてほしかった」と言われたら、どう受け止めればよいのでしょうか?
勉強会では「小さい頃、本当はお母さんじゃなくてママと呼びたかった」「本当はあの習い事を辞めたくなかった」といった、過去の気持ちを子どもが打ち明けることについても話題になりました。
このような言葉を聞くと、「今さら言われても…」「そんなつもりではなかった」と困ってしまう親御さんもいるかもしれません。しかし、まずは子どもの気持ちを否定せず、「そう思っていたんだね」と受け止めることが大切です。
子どもが過去の気持ちを打ち明けてくれること自体が、回復の過程で見られる大切な変化です。過去を責めるためではなく、「本当の気持ちを安心して話せるようになった」という成長のサインとして受け止めてみてください。
親子の相性は親の関わり方によって変えられる
最後に、参加された親御さんから寄せられた感想を一部ご紹介します。



だから『元気そうだから大丈夫かな』と思ってしまっていたのですが、子どもの全体を見ていくことが大切なんだと感じました。
困難を抱える子どもと向き合うときは、その子との相性を理解し、相性を合わせていくことが何よりも重要だと、私たちは考えています。
その子がどのような生きづらさや繊細さを抱えているのかを理解し、「親子のどこにズレがあるのか」を見つめること。そして、その子に合った関わり方を見つけていくことが大切です。
関わり方に迷いを感じている方は、一度ご相談いただくことで、次の一歩が見えてくるかもしれません。
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