(1)「よく観察し、よく考えて、慎重に行動する」拒食症の人の特性(恵み 高3 拒食症歴1年)

「拒食症を薬でなく、カウンセリング治療で治したい」

拒食症の恵みさんが母親といっしょに、当センターの摂食障害専門外来にやってきました。ダイエットから拒食症になり近くのクリニックで一年間投薬中心の治療を受けていました。しかし恵みさんの拒食症はいっこうに良くらならず、母親は投薬が中心の治療に不安を感じはじめました。「拒食症を薬でなく、カウンセリング治療で専門に診てくれるところはないかしら」と母親はインターネットで検索し、大阪の淀屋橋心理療法センターに摂食障害専門外来があることを知りました。

3ヶ月のダイエットで10kgやせられて、うれしくてたまらない恵みさん

恵みさんはダイエットを始めてから淀屋橋心理療法センターに来るまでの経過をおおまかに話してくれました。その様子をまとめてお話ししましょう。

ダイエットをスタートして3ヶ月たったころのこと、体重が10kg減りました。「お母さん、3ヶ月で10kgもやせられたの。すごいでしょ!」と、恵みさんはうれしそう。「お母さん、ほら見て見て」と母親の前でくるっとまわって見せたりしていました。

しかしうれしい事ばかりではありませんでした。生理がとまってしまい、母親にも恵みさんにとっても「このままではいけない」という不安がよぎりはじめていました。「大阪にある淀屋橋心理療法センターの摂食障害専門外来に、カウンセリングを受けに行こう」と、母親が話しはじめたころは耳もかさない恵みさんでした。が、自分でも10kgの体重減に「やせるのはうれしいけど、体のほうはだいじょうぶかな。もうこれくらいで止めておかないと。でも今のダイエットメニューを止めるのはこわいな、どうしよう」と思い始めていたのです。あれやこれやの思いがクルクルとまわり迷いがいっぱいだったと、恵みさんはカウンセリング治療を受けようと決めるまでの気持ちを素直に話してくれました。

ダイエットで減量作戦は成功したけれど、これでいいのかな?

拒食症の人はほとんどといっていいほど自分の食べていい食材やカロリー値をきっちりと決めています。ご飯、肉、卵といった太るおそれのあるカロリーの高い食材や甘いものなどは極力避けています。「自分が考えて、工夫して、準備して、そして確実に○グラム減という結果を手にすることができる」、これは拒食症の人にとってなにものにも代えがたい喜びです。

恵みさんはダイエットをきちんと実行することで、確実にこの成果(10kgの体重減)を手にしていました。それだけにカウンセリングで「食べるよう、これ以上体重が減らないように」と、言われるのではないかと不安がいっぱいでした。その反面心のなかでは「やせるのはうれしいけど、そろそろこれくらいで止めておかなくては」とも思い始めていました。「私の減量作戦だと確実にやせていくけど、いろいろ考えたらこのやり方を続けるのはムリかなって思います」と、恵みさんの話は続きます。拒食症の人は「やせるためならどんなに食べたくてもガマンするわ」そして「体重が減ってる、だからカウンセリングに行く必要なんかないよ」という考えの人が多いのですが、恵みさんはちょっと違うようです。

「やせてることが一番、でも学校も友達との関係もだいじにしたい」

自分の減量作戦に疑問を持ち始めた恵みさんの話に耳を傾けてみましょう。「10kgやせてうれしい」反面、友人たちから孤立してしまって、体力的に学校にも行けなくなってしまったことはとても残念に思っていました。そして「やせてることが一番大事、でもそのために体をこわしてしまったり、友人たちから孤立するようなことがあってはいけない。それをキープできるダイエットスタイルを見つけださなくては」と思ったというのです。恵みさんが目的を決めた見つけ出した減量作戦は次のようなものでした。

減量作戦1.【太らない、それでいてやせられるカロリー値をみつけよう】

「私は一日800kカロリーならだいじょうぶ。太らない。だからこのカロリー値を3ヶ月まもり続けたのよ」と、恵さんは誇らしく思っていたそうです。その3ヶ月のあいだに恵みさんは10kgやせていきました。「こんなに成果が出るなんて」と恵さんは爽快な気分に満たされました。

減量作戦2.【友達との人間関係も続けられるカロリー値をみつけなくては】

一日800kカロリーではしっかりとやせられるけど、友達とうまくやっていけないと気づきました。いっしょに行動すると必ず「ランチいっしょに食べようか」とか「クッキー焼いてきたよ。はい、どうぞ」ということになるでしょう。人とのおつきあいは必ず「いっしょに食べよう」がついてくるから。それを「ありがとう。おいしいね」と受けられる自分でなくては。それにはどうしたらいいだろうと試行錯誤が始まりました。

減量作戦3.【太らないし、体力を維持できるカロリー値をみつけた】

カロリー値をあげるとみんなと一緒に楽しくいられたけれど、だんだん太ってきました。太るのは絶対にいや。カロリー値を上げたり下げたり、その結果たどりついたのが1500kカロリーでした。恵みさんにとってこの1500kカロリーというのが太らないカロリー値であり、友人たちと仲良くいられ学校を休まないですむカロリー値だとわかったということです。ここまで見つけるのは大変だったと、恵さんは話していました。

「よく観察し、よく考えて、慎重に行動する」という拒食症の人の特性が恵みさんに

「恵みさんはよく観察し、よく考える人ですね。こうしたらいいかな、いやああしてみようと思いながら、慎重に取り組んでみた結果適切なカロリー値が見つかったというんですね。食べることに関して拒食症の人が答えをだすのは、とてもむつかしいことなのによくできましたね」と、福田ドクターは感心したようにコメントを言いました。

拒食症の人が『やせたい』だけでなく、『人間関係の維持』『登校を続ける体力の維持』も目的においてダイエットに取り組むことはなかなかできることではありません。それは恵みさんが「やってみて失敗した」体験を基に考え出した「太らない食材の量とカロリー値」です。それでいて「体の健康は保てる」と、自分にとって安定した食事スタイルを見つけ出したのでしょう。「よく観察し、よく考えて、慎重に行動する」という拒食症の人の特性(持ち味)が、恵みさんもしっかりと備えているとわかります。

こうした試行錯誤の体験がだんだんと「やせていないと自分じゃない」という拒食症の人の柱から、「他にも自信がでてきたわ」という柱に代わってきます。 いつの間にか「やせること」にとらわれる気持ちがうすらいでいき、拒食症が治る道筋を歩みだすのです。

2014.02.12  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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