家庭内暴力を起こすお子さん 解決の鍵は「普段の接し方」

更新日:2025.11.25
家庭内暴力を起こすお子さん 解決の鍵は「普段の接し方」

「うるせぇ!」「消えろ!」
小さな頃はあんなに優しかった我が子の口から、そんな言葉が飛び出す——。

叩かれ、蹴られ、物を投げつけられる——。

どうして、こんなことになってしまったんだろう。
何を間違えたんだろう。

涙をこらえながら、そう自分を責めてしまう親御さんは少なくありません。

「どう育てたらいいのか分からない」
「誰にも話せない」
「このままでは将来が不安で仕方ない」

——そんな声を、私たちは日々お聞きしています。

私たちが目指しているのは、暴力をただ遠ざけることではありません。
お子さんが、暴力に頼らなくても、自分の気持ちを伝えられるようになること。
そして、その成長を家族と一緒に支えていくことです。

2025年8月25日(火)、淀屋橋心理療法センターでは親御さん向けに
「お子さんの家庭内暴力の治療説明会」を開催しました。

この記事は、その説明会の内容をもとにお届けします。

「お子さんの家庭内暴力の治療説明会」の内容をもとにお届け:カウンセリング(家庭内暴力)

家庭内暴力治療説明会の様子

家庭内暴力治療説明会の様子:カウンセリング(家庭内暴力)

当日は満席の中での開催となりました。
最近の説明会では、お父さんの参加が増えているのも印象的です。

説明会のはじめには、親御さん同士、自己紹介を兼ねてお子さんの様子をお話しいただく時間を設けています。

「同じように悩んでいる人がいる」「自分だけじゃなかったんだ」
そう感じて、少し肩の力が抜けたという声をたくさんいただきます。

臨床心理士・福田俊介が「無理に話す必要はありませんよ」と声をかけたにもかかわらず、
参加者の皆さんは積極的に発言してくださいました。

「心が少し軽くなる」「新しい気づきがある」:カウンセリング(家庭内暴力)

家庭内暴力の治療の鍵は「普段の会話」にある

家庭内暴力の治療の鍵は「普段の会話」にある:カウンセリング(家庭内暴力)

多くの親御さんは「子どもが荒れたとき、どう対応すればいいのか」を気にされます。
しかし、家庭内暴力を改善するための本当の鍵は、その瞬間の対応ではありません。

臨床心理士・福田俊介はこう話します。

臨床心理士:福田俊介
大切なのは、子どもが落ち着いているときの、 何気ない会話や関わり方です。

お子さんが荒れている場面での対応よりも、普段の落ち着いている時間にどう接するかを意識すること。日常の中でお子さんに合った対応を丁寧に続けていくことで、親子の間に「安心して話せる関係」が育まれていきます。

そうした信頼関係の積み重ねが、お子さんの中に“気持ちを言葉で伝える力”を育て、やがて“感情をコントロールする力”へとつながっていきます。

お子さんが荒れているときの対応よりも、落ち着いている時間の関わり方を意識することが、結果的にお子さんの感情のコントロール力を育てていきます。:カウンセリング(家庭内暴力)

家庭内暴力の背景には、不安やもどかしさなど、言葉にできない気持ちが隠れていることも多いものです。そしてそれが暴言や暴力として表に出てしまうことがあります。

しかし、親子の関係を丁寧に整えていくことで、お子さんは少しずつ変わっていきます。 やがて、「うまくいかないときも、暴力ではなく言葉で気持ちを伝えられる人」へと成長していくのです。

より具体的な関わり方を知りたい方は、ぜひ治療説明会へご参加ください。 臨床心理士・福田俊介が、淀屋橋心理療法センターでの実例をもとに、親御さんの関わり方がどのようにお子さんの変化につながったかをご紹介します。

ショウゴ君の表情や言葉づかいに少しずつ変化が現れていきました。:カウンセリング(家庭内暴力)

精神科医・福田俊一によるQ&Aのコーナー

精神科医・福田俊一によるQ&Aのコーナー:カウンセリング(家庭内暴力)

説明会の最後には、精神科医・福田俊一によるQ&Aコーナーが行われます。ここでは、参加者の方々から寄せられた質問の一部をご紹介します。

※ここで紹介する内容は一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。実際の対応はそれぞれのご家庭やお子さんにより異なります。

息子の暴言に我慢ができなくなって…

Q:息子に暴言を言われ続けると、腹が立ってつい言い返してしまいます。どうすれば自分の気持ちを保てますか?

精神科医師:福田俊一
まず大切なのは、普段から自分がリフレッシュできる時間を持つことです。趣味や好きなことなど、「自分がホッとできる時間」を少しでも持つようにしましょう。
そして、実際にその場で怒りそうになったときは、いったんその場を離れる工夫をしてみてください。トイレに行く、スマホを見るなど、ちょっと行動を中断するだけでも気持ちは落ち着きやすくなります。一呼吸おいてから関わることで、冷静さを取り戻しやすくなります。

マンションで、息子がドンドンして…

Q:マンションで、興奮すると息子が壁や床をドンドンして困ります。どのタイミングで息子に声をかければいいですか?

精神科医師:福田俊一
お隣さんへの音が気になりますよね。
ただ、ドンドンしている最中に無理に止めようとするのは逆効果になることがあります。 息子さんが興奮している状態では、注意しても言葉が本人に届きにくいからです。 本人に直接注意するより「お隣さんに注意されたらどうしよう…」と第三者を引き合いに出し、不安がってみると次第に行動がおさまっていったケースもあります。 ただし、本人が興奮している時の対応は工夫しても外れることが多いので、カウンセラーと試行錯誤を重ねながら、その子に合った対応を見つけていくことが大切です。

家庭内暴力治療説明会を終えて

:カウンセリング(家庭内暴力)

お子さんの家庭内暴力は、決して「親のせい」ではありません。
けれど、「親御さんの関わり方」が解決の鍵になることも確かです。

「うちの子も変われるかもしれない」
——そんな希望のきっかけを、少しでも持ち帰っていただけたら幸いです。

なお、説明会終了後には簡単なアンケートへのご協力をお願いしております。
最後に、参加者の方々から寄せられた感想の一部をご紹介します。

家庭内暴力説明会に参加された男性
初めて参加しましたが、理解できる部分が多く、とても参考になりました。今回は妻の代わりに参加しましたが、日頃苦労している彼女にも聞かせてあげたい内容でした。
家庭内暴力説明会に参加された女性
理屈では分かっていながらも、苦手意識や自分の気分に左右され、娘と本気で向き合えないことがあると自覚しました。努力しているつもりでも、まだまだ未熟でした。これからは焦らず、前向きに取り組んでいきたいと思います。

屋橋心理療法センターは親御さん向けの治療説明会を定期的に開催しております。ご興味のある方はぜひご参加ください。

▶ 最新の治療説明会日程はこちらをご覧ください。

:カウンセリング(家庭内暴力)

家庭内暴力に悩む方へ(子どもから親)カウンセリングで解決を目指す【家族療法】
家庭内暴力について【子どもから親へ】原因や相談先・カウンセリングで解決したケース紹介
               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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