こだわり気質を乗りこなす力を育み、家庭内暴力を乗り越える

★家庭内暴力治療説明会を1月31日に開催しました★

当センターでは、1月31日に「お子さんの暴力・暴言に悩まれている親御さん向け治療説明会」を開催しました。家庭内暴力をテーマとして取り上げるのは、今回が初めての試みになります。説明会は、所長で医師の福田俊一が担当しました。

<薬では根本的な解決になりません>

摂食障害やリストカットなど、薬だけで治せない精神疾患や問題行動は沢山ありますが、家庭内暴力も薬物治療があまり有効ではない代表的な問題です。病院では、暴力行為に対してADHD(注意欠如・多動症)治療薬、鎮静剤、抗てんかん薬などがしばしば処方されます。手に負えなくなると入院させて薬を大量投与する事もありますが、「暴力が根本的に改善した、劇的に収まった、というのは聞いた事がありません」と福田は言います。

また、単なる「声かけ」で好転するほど簡単な問題ではありません。「暴力が収まる魔法の言葉は存在しません。火に油を注ぐ言葉はありますが・・・」

さらに、病院などに相談に行った親が「過保護なのが悪い」「子どもを親から引き離すべき」などと逆に責められる事もあります。しかし、これはかなりもったいない考えです。親御さんの真剣な気持ちを上手く活かす方法があるのです。今回は事例を通じて、この方法についてお話します。

統合失調症の幻聴・幻覚やADHDの衝動性などが原因で暴力行為に至るケースもありますが、このようなケースは少なく、当センターの臨床経験では、自分を上手く操縦できず、親に対する過去の恨みをため込んでいる子が、不登校などの挫折を契機として家庭内暴力に及ぶケースが多く見られます。そして「特定の物事に極端に没頭する」「気になったらその事ばかり考える」といった執着気質(こだわり気質)の傾向を持つ子が少なくありません。この気質そのものを変える事は困難ですが、その持ち味をより活かす方向に持っていく事は可能です。

当センターの治療方針では、お子さんへの接し方を変える事で、お子さんの「表現する力」を最大限に伸ばせるよう支援します。それには独特のコツがあるのです。自分の想いがあるレベル以上に喋れるようになると、暴力も沈静化していきます。自信も湧いてきます。そして、ネガティブな考えに囚われず、好きで得意な事に集中力を発揮し、イキイキと行動できるようになっていきます。

ただし、成功するためにはお子さんの性格を慎重に見極める必要があり、また具体的な対応法はケースバイケースですので、徹底した性格分析を行った上で、最善の対応法を助言させて頂きます。

<ケース紹介:将来の事を考えると不安に襲われ暴れる大学生>

大学4年生のA君は、普段は優しくおとなしいのですが、カッとなると人が変わり、暴力に訴える傾向がありました。

就職活動で不採用になるなど思うようにいかない事が続くと、イライラを募らせ「何をやってもダメだ・・・」と自暴自棄になり「なんで俺を産んだんだ!」と親を責め、物を壊す、殴る蹴るといった行為に及んでいました。

当センターの分析によるとA君も執着気質の傾向があり、気が向かない事を努力してやろうとすると暴発する所がありました。また甘え下手で、まじめ過ぎて柔軟性に欠ける面も見受けられました。

相談にいらしたお母さんに対しては、「甘えるのが上手になるとより自然体になれ、ストレスをリセットしやすくなります」「心に自信と余裕を取り戻すためには、今は気が向かないことはやらず、なるべく好きな事をやって、無理して頑張らない方が、より力が抜けた状態になり、上昇気流に乗りやすいでしょう」などと助言させて頂きました。

軌道に乗るまでは平坦な道のりではありませんでしたが、徐々に良い変化が見られ、A君はより冷静に状況を分析し、落ち着いて物事に対処できるようになっていきました。自分の発言が一度で理解されなくてもイライラせず、繰り返し説明できるようにもなりました。現在は暴力に訴える事がなくなり、今まさに社会に羽ばたこうとしている所です。

<質問コーナー>

Q:3歳の時ASD(自閉スペクトラム症)と診断された17歳の子どもに、髪の毛を引っ張られたり足を蹴ったりされます。軽度の知的障害もあり、喋る事はできますが、ストーリーを語る事や心の内を表現する事はできません。食べる事やお菓子作りなど、自分のしたい事をしている時は落ち着きますが、どこまで子どもの要求を受けいれるべきか迷っています。

A:お子さんの要求を全て聞き入れるのは、全て聞きいれるパターンができてしまうと、ひとつでも聞いてもらえない事があると荒れる可能性があるので危険ですが、7~8割は受け入れ、2~3割はこちらの都合を言う、という感じでも良いと思います。しかしこれはその場しのぎの対応ですので、それを続けたからといって状況がどんどん良くなるわけではありません。本人さんが自分の持ち味をうまく乗りこなせるようになるためには、親子の対話を通じて本人さんが成長する必要があります。今回の事例を参考になさってください。

Q:ADHD(注意欠如・多動症)の不注意型と診断された15歳の子どもに暴言や暴力が見られます。自分は静観していますが、夫は「エスカレートするので、暴力は断固として許してはいけない」という考え方で、殴られたら殴り返すなど、厳しく対応していますが、これで良いのか、悩んでいます。

A:「暴力を断固として許さない」というのは正論なので論破困難ですが、その対応がお子さんの性格に合っているか否か考える必要があります。
まず、本当に発達障害なのか、精査して慎重に見極める必要があります。本当にADHDならば、好きな事や趣味に対しても不注意がみられるはずですが、そうでないならば不注意の原因は単に「興味が無い」ためかもしれず、ADHDというよりも関心の凸凹が激しい執着気質かもしれません。
そうだとすると父親の対応は逆効果で、どんどん拗れていく危険性があります。よりお子さんに合った対応をし、お子さんの表現力を伸ばす事で、暴力を鎮静化させる事は可能だと思います。

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説明会でお配りしたアンケートから「実際の親子の会話の例を教えて頂き、とても参考になりました」「治療の方向性が良く分かり、未来が見えてきました」などの感想を頂きました。

家庭内暴力に対して自己流で対応することは困難で危険を伴います。当センターの経験豊富なカウンセラーがお子さんの性格に合った対応法を提示し、暴力の終息にとどまらず、親御さんが頑張って頂けるなら、お子さんがより精神的に成長されるよう粘り強くサポートいたします。

一度ご相談にお越し頂ければ、解決のためにどういうことに気をつける必要があり、どういう注意が必要か、どういう親御さんの努力が必要か説明します。成功例は沢山あります。その上で、決心して頂ければ治療がスタートします。
お子さんの暴力に悩まれている親御さん、まずは当センターまでお電話ください。お待ちしています。

2023.02.21  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》公認心理師 益子玄一郎

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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