今も苦しむ過去のいじめを
子どもと親で乗り越える
〜いじめの後遺症への家族の対応〜

更新日:2023.05.14

“いじめ”という行為が終われば、いじめは解決したと言えるのでしょうか?
あるいは、加害者が謝れば、いじめは解決した事になるのでしょうか?

本当の意味でのいじめの解決は、お子さん、そしてご家族の心の傷が癒えることだと私は思います。
しかし、3年経っても、5年経っても、中には10年以上たっても、
いじめが被害者に影響し続ける事があります。

「あのときの経験があったから、今の成功があるんだ」と、
いじめられた経験がバネになる人もいるでしょう。
ですが、いじめられた経験が幸せな人生を歩む上で、足かせになり続けている人もたくさんいらっしゃいます。

いじめにあった場合の後遺症には、以下のようなものがあります。

  1. いじめられたときのことを思い出してイライラする。
    そして、そのイライラを全く無関係の人に向けてしまうことがある。
  2. いじめのことを思い出し、不眠や体調不良が起きる。
    頭痛・腹痛・鬱っぽい症状など
  3. 人を疑い過ぎるようになり、相手が親切心でやってくれた行動に対しても、
    「何かを企んでいるんじゃないか」というふうにマイナスに捉えてしまう。
  4. 人を信じられなくなり、安全を保つために人との距離を取り過ぎる。
    そのため、孤独感に悩まされる。
  5. 過去の経験から、人に口撃されるのを避けるため、先に相手を口撃しないと安心できなくなる。
  6. 敵を作らないように家の外でニコニコととても気を遣っている。
    その結果、家の中では疲れ切ってグッタリとしている。     ・・・など

さて、いじめの後遺症克服の効果的な方法にはいくつかありますが、そのうちの1つは、
いじめられた悔しい思い・腹の立つ思い・怖かった思いを親御さんの前で言葉にして
出し切ることです。(思いを十分に言えていないお子さんの場合です。)

この効果を上げるためには大事なポイントが3つあります。

①思いを完全に出し切る(中途半端だと、解決が長引く傾向にあります)
②辛かった話だけでなく、楽しい話も親子で盛り上がれるようになっておく。
(辛い話だけに注目しすぎるとうまくいきにくいのです)
③お子さんの性格に合った受け止め方をしてあげる。
(お子さんによって満足のいく受け止め方は異なります)

でも、お子さんが辛かった思いを言葉にして十分に吐き出すって難しいですよね?

その理由を以下に記します。

  1. いじめられたという事実を恥ずかしいことと捉え、それを親御さんに知られたくないと思っている。
  2. お子さんが「辛かったことを思い出すから、そのときのことは喋りたくない」と言ったり、辛かった過去を見ないようにしている。
  3. お子さんが「人の悪口を言ったり、人前で怒りを表すのは良くないことだ」という価値観を強く持っている。
  4. お子さんがもともと言葉で表現することが苦手なタイプである。

当センターでは、親御さんにどのような対応をお子さんにしていったら良いのか具体的なアドバイスを差し上げます。
すぐに結果が出るわけではありません。
親御さんに、コツを覚えていただくのに、少なくとも5回くらいは通っていただく必要があります。
お子さんは少しずつ、過去の辛かったことを言葉にできるようになってきます。

当センターのカウンセリングの効果

  1. お子さんの心の傷が癒える。(いじめが過去のものとなる)
  2. 自分に自信がなかった状態から、自信が出てくる。(自分否定が緩んでいく)
  3. お子さんの問題解決能力の向上。
    今後、同じような場面に遭遇しても、言い返す・逃げる・適切な人に相談するなど対応がうまくなる。
  4. 一緒に問題を乗り越えたことで、親御さんとの絆がより深くなる。
  5. お子さんの元気な姿を見て、親御さんの傷も癒えていく。

心の傷が癒え、
お子さんの目に、世の中が今よりも安心安全な世界に見えてほしい。
また、いじめられた経験がお子さんの足かせではなく、高く飛び上がれるバネになってほしい。
そのために、我々カウンセラーは、親御さんにアドバイスを差し上げております。
そして、本当の意味でお子さんがいじめを克服した姿を親御さんが目にした時、
「あの経験でうちの子は成長できたんだ」と親御さんの傷も癒えていくでしょう。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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