不登校の中学生|カウンセリングと親の対応で前向きに!高校進学できた事例

更新日:2025.06.03

近年、中学生の不登校は増加傾向にあり、多くのご家庭で深刻な問題となっています。

「学校に行きたくない」というお子さんの言葉に、どう対応すれば良いのか、家で何をさせれば良いのか、途方に暮れてしまう親御さんもおられるのではないでしょうか。

スマホやゲームへの依存など、不登校に伴うさまざまな課題に直面し、「このままで大丈夫だろうか」と強い不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、中学生の不登校の現状を解説するとともに、実際に不登校を乗り越え、希望の進路を掴んだ中学3年生のマリコさん(仮名)の実例を紹介します。

淀屋橋心理療法センターのカウンセリングに基づく親の対応によって、マリコさんにどのような変化がもたらされたのか、ぜひご覧になってみてください。

【データで見る】急増する中学生の不登校の現状

【データで見る】急増する中学生の不登校の現状

文部科学省が令和6年10月に発表した調査によると、小・中学校における長期欠席者(年間30日以上)のうち、不登校を理由とする児童生徒数は346,482人(前年度299,048人)となり、過去最多を更新しました。

特に中学生の不登校生徒数は深刻です。以下のグラフの通り、その数は216,112人(前年度比11.4%増)にのぼります。

文部科学省が令和6年10月に発表した調査

文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」P24のデータを基に、淀屋橋心理療法センターが作成

これは、中学生全体の6.71%(1,000人あたり67.1人)にあたり、約15人に1人が不登校の状態にある計算になります。

10年前(平成25年度)の中学生の不登校生徒数が約97,000人だったことと比較すると、この10年間で約2.2倍に増加しており、決して他人事ではない状況です。

不登校の要因は「複合的」ですが、中学生では「学校生活に対してやる気が出ない」(32.2%)が最も多く、次いで「不安・抑うつ」(23.1%)、「生活リズムの不調」(23.0%)などが上位に挙げられています。

このような状況下で、適切な親の対応や、専門家によるカウンセリングの重要性がますます高まっています。
出典:令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

【カウンセリング事例】不登校の中学3年生マリコさん(仮名)のケース:変化の軌跡

【カウンセリング事例】不登校の中学3年生マリコさん(仮名)のケース:変化の軌跡

ここからは、淀屋橋心理療法センターのカウンセリングに親御さんが通われた結果、不登校に改善がみられた中学3年生のマリコさん(仮名)の事例をご紹介します。

不登校当初:スマホ依存で母や弟に暴言や暴力が目立つように

中学3年生のマリコさん(仮名)は、4月から学校に全く行かなくなりました。
家ではスマホでゲームをしたり、漫画を読んだり、YouTubeを見て過ごす毎日です。お母さんが話しかけても、スマホに夢中で「うん」「わかった」と生返事ばかりで、会話が続きません。
中学2年生の時は学校に行っていましたが、そのころからお母さんに対して暴力や暴言が見られました。
さらに、小学4年生の弟・ユウタ君(仮名)にキツく当たり散らすことにも、親御さんは深く悩んでおられました。

親の対応の変化:不登校に関する学びとカウンセリング

そんな状況を変えたい一心で、真面目なお母さんは、不登校に関する本を何冊も読み、インターネットでも関連する記事を熱心に調べていました。

その努力の甲斐があって、当センターに来られた時には、お母さんへの直接的な暴力・暴言は治まっていました。

しかし、「登校する気配は全く感じられません」とお母さんはおっしゃり、ご自身だけの対応では限界があると感じ、当センターに来所されました。

不登校に関して沢山勉強されてきたからでしょうか。カウンセラーからマリコさんへの接し方のコツをお伝えしたところ、お母さんの理解の早さに驚きました。

親御さんの対応を変えて頂いたことで、マリコさんに変化が見られるようになりました。

不登校の中学生・マリコさんに現れた7つの変化

不登校の中学生・マリコさんに現れた7つの変化

淀屋橋心理療法センターのカウンセリングに通われ、お母さんが対応を変えてくださってから、マリコさんには目に見えるポジティブな変化が次々と現れました。

変化① 漫画のあらすじを一生懸命説明しだした

スマホを離さないマリコさんにお母さんが話しかけても、「分かった」、「うん」と返事があるだけで会話が続きません。

それ以上話しかけると、「うるさい」とマリコさんは不機嫌になってしまいます。

ところが、お母さんがマリコさんへの対応を変えると、会話が少しずつ続くようになってきました。

お母さんが大きな変化だと感じられたのは、マリコさんが漫画のあらすじを最後まで説明してくれたことです。

以前は面倒くさがって途中で説明をやめていたので「前とは違う」と思われたそうです。

変化② 話をしている時の表情がイキイキ!

学校に行けなくなってからも、たまに友達と外出することがあったマリコさん。大好きなyoutuberのイベントに行った後、帰宅するなり、イベントの様子をイキイキと語り始めました。

「喋っている時の表情がイキイキしてる。身振り手振りも加わるようになりました」

「それと、言葉に抑揚が出て来ました」

と、お母さん。このころから、キッチンにいるお母さんに近づいてきて、イキイキと楽しそうに喋る日も出てきました。

塞ぎ込みがちだったマリコさんの心が、少しずつ外に向き始めたのです。

変化③ 弟への態度が柔らかくなってきた

弟のユウタ君に冷たい態度で接し、不機嫌な時は当たり散らしていたマリコさんでしたが、ユウタ君への態度が柔らかくなってきました。

以前は、リビングのテレビはマリコさんがチャンネル権を持っていました。ユウタ君が、

「お姉ちゃんはスマホ見てるんだから、僕の好きな番組を見せて」と言うと、

「うるさい」と一喝していたマリコさん。

しかし、ある時から「いいよ」とテレビのチャンネル権を譲るようになりました。

また、夕食の時にユウタ君と楽しそうに喋ったり、一緒にゲームをするように変わってきました。

変化④ 「楽しかった!」同級生に出会っても抵抗感が減った

このころになると、外出することが増えてきました。

友達と近くの高校の文化祭に行ったある日、以前なら同級生に出会うことをとても嫌がっていたマリコさんでしたが、帰宅後、

「あー文化祭楽しかった。同じクラスの◯◯ちゃんと、△△さんにも出会ったわ」

と笑顔で言ったので、お母さんは驚かれました。

また、この頃からお母さんがスーパーに行くときに、マリコさんもついて来るようになりました。

変化⑤ 別室登校とともに学校の実力テストも受験

学校の話をすると、途端に顔色が変わってしまうマリコさんでしたが、このころから担任の先生からの電話に出られるようになりました。
何度か先生と電話で話をした後、別室という形ではありますが、登校できる日も出てきました。

さらに、別室で学校の実力テストも受けました。テストを受けたのは、中学3年生になってから初めてのことでした。

変化⑥ 「肉じゃがの作り方を教えて」マリコさんから仲直りした

学校の話をしても、以前ほど不機嫌にならなくなったマリコさん。

お母さんが、「高校の説明会に行ってみない?」と聞いてみると、意外にも「うん」と返事が返ってきたので、お母さんはとても喜ばれたそうです。

ところが当日になって、「やっぱり行きたくない」とマリコさんが言いました。

「行くって約束したやないの!」とお母さん。

この数ヶ月、言いたいことを我慢していたお母さんも、この日は我慢できずにキツく言ってしまいました。怒って、2階へ駆け上がるマリコさん。

「これから数日間は不機嫌が続くんだろうな」とお母さんは落ち込まれたそうです。ところがその日の夕方、マリコさんからニコニコと近づいてきて、

「肉じゃがの作り方教えて〜」と言ってきたのです。

「娘の方から仲直りしてくれました。しかも、その日のうちに機嫌が治りました。以前とは全然違う」

とお母さんがおっしゃいました。

変化⑦ マリコさん自ら受験勉強を始めた

ダンスと英語に興味があるマリコさん。なかなか答えが出ませんでしたが、ギリギリになって志望校が決まりました。
お母さんが受験までの勉強の予定表を作ろうと提案すると、「うん、作ろう」と乗ってきました。

そして、今まで全く勉強しなかったマリコさんですが、1日2時間半程度、勉強するようになりました。

「勉強しなかった子が勉強するようになりましたね」とカウンセラーが喜びを伝えると、

「予定表通りに勉強を進めようと思ったら1日に4時間は勉強する必要があるんですが」とお母さん。

「いやいや、今まで全く勉強しなかった子が2時間半も勉強してるんですよ。これは大きな変化ではないですか?」とカウンセラーが伝えると、

「まぁそうですが」と、少し不満げなお母さんでした。

順調に良くなってきていると、多くの親御さんは、「次はこうなって欲しい」、「その次はもっとこうなって欲しい」とお子さんへの期待がドンドン膨らんで行くことがあります。

ですが、回復過程においては、お子さんの小さな一歩を認め、焦らないことが大切です。

この日の面接の最後に、お母さんがおっしゃいました。

「ゼロだったのが2時間半になったのは確かに大きな変化ですね。数ヶ月前だったら考えられないことです。受験前なので私が焦っていました」

「いやっほーい!」高校に合格!不登校期間は無駄ではなかった

「いやっほーい!」高校に合格!不登校期間は無駄ではなかった

そして迎えた、2月中旬。

お母さんから当センターに、「娘が無事、志望校に合格しました!」と興奮気味のお電話がありました。

後日、面接室にて詳細をお聞きしました。郵送で届いた合格通知を開けたマリコさんは、

「いやっほーい!」

と喜んだそうです。近くにいたユウタ君が、

「お姉ちゃん、すごいね。頑張ってたもんね。おめでとう」

と言い、2人で飛び跳ねていたそうです。

「マリコが『あんなに素直に人のことを喜べるなんて。ユウタは可愛いな』って、私に言いに来たんです」とお母さんが話してくださいました。

マリコさんは中学3年生のあいだ、家で時間を無駄にしたわけではありません。

親御さんがコツコツと対応を工夫されたので、学校に行けていない間であっても、ご家庭の中でしっかりと成長されていきました。

その結果、自分で選んだ私学の全日制高校に元気に通うことができたのです。高校入学後は、大好きなダンスと英語学習に一生懸命取り組んでいるそうです。

お子さんの心が動き出す「小さなサイン」が次への一歩に繋がる

お子さんの心が動き出す「小さなサイン」が次への一歩に繋がる

不登校をなんとか改善しようと、多くの親御さんは「学校に行くこと」を目標にしてしまいがちです。

しかし、登校だけがお子さんの価値を決めるものではありません。

お子さんの小さな変化に気づき、しっかりと認めてあげること。それ自体が、精神的な成長への重要な一歩となることがあります。

マリコさんの事例でも、

・漫画の話をする
・弟への接し方が柔らかくなる
・友達と出くわしても気にならない

といった「小さな変化」に親御さんが気づき、またこれらを積み重ねたことにより、

・お母さんと揉めても、自分から仲直りする
・弟を褒める
・自主的に受験勉強を始める

のように、精神的に強く成長し、主体性を持って行動できるまでに至っています。

親御さんが焦らず、諦めずに対応の工夫を続けることで、マリコさんのように、再び自分の力で前に進める可能性があります。

まとめ |親の対応を変える家族療法で、お子さんの不登校・ひきこもりに光を

淀屋橋心理療法センターでは、不登校やひきこもり、ゲーム依存性など、さまざまな問題の治療にあたっております。

当センターのカウンセリングは、親御さんを対象とし、お子さん本人の来所は不要です。多くの親御さんが特に悩まれている、お子さんへの接し方について、独自の家族療法に基づいたカウンセリングを行います。

お子さんの問題解決に向けて、コツコツと努力を継続していただけるーーそんな方々を、我々は全力でサポートして参ります。
「うちの子のケースはどうだろう?」「専門家の意見を聞いてみたい」もしそう思われましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

*この記事は、淀屋橋心理療法センターにご相談に来られたケースを基に執筆しており、個人が特定されないようにしております。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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