拒食症の回復は“食卓”ではなく“リビング”から
~「食べなさい」よりも大切な親子の関わり方~

更新日:2026.03.02
拒食症の回復は“食卓”ではなく“リビング”から~「食べなさい」よりも大切な親子の関わり方~

本記事は2026年1月26日、淀屋橋心理療法センターで開催された「拒食症のお子さんを持つ親御さんを対象とした治療説明会」の内容をもとに執筆しています。

今回のテーマは、痩せることに執着するお子さんのエネルギーを、どのようにすれば穏やかなものに変えられるのか。そして、お子さんの命と心を救うために、ご家庭で何ができるのか
です。

説明会では、当センターが40年以上の臨床で大切にしてきたことを、事例を交えてお話ししました。

この記事が、今悩んでおられる親御さんの心に少しでも届くよう、執筆いたしました。ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

◆ 講師プロフィール ◆

所長・医師:福田俊一(ふくだ しゅんいち)

所長・医師

福田俊一(ふくだ しゅんいち)

大阪大学医学部卒。 大阪大学精神神経科、大阪府立病院神経科にて精神医療に取り組む。 米国フィラデルフィア・チャイルド・ガイダンス・クリニック(P.C.G.C.)にて家族療法をS.ミニューチンに師事。 住友病院心療内科、大阪厚生年金病院神経科、大阪市立小児保健センター精神科に勤務。 厚生省・神経性食思不振症調査研究班メンバー(1984~1986年) 大阪大学医学部非常勤講師(2013年)

カウンセラー:福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

カウンセラー

福田俊介(ふくだ しゅんすけ)

臨床心理士・公認心理師(国家資格) オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science) 自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業 不登校過食症リストカット で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー

参加された親御さんの切実な声

説明会の冒頭に、参加された親御さんからお子さんの状況を共有いただきました。

「入退院を繰り返しています。食べることを邪魔する“魔物”がいるみたいで、食べたいけれど食べられない状況です。」

「体重が増えると生きている資格がないと思い込んでいるようです。」

強いこだわりがあるけど、自分の気持ちを主張するのが苦手な子です。今は1日1000カロリー以下に抑えることに必死で、時々死にたいと言います。」

命の危険と隣り合わせにある状況で、お子さんをどう支えたらいいのか分からない。
そんな出口の見えないトンネルの中にいるような親御さんの葛藤が伝わってきました。

拒食症のお子さんに説得が通じない理由

臨床心理士・福田俊介から、拒食症のお子さんの心の特徴についてお話し:カウンセリング(拒食症)

続いて、臨床心理士・福田俊介から、拒食症のお子さんの心の特徴についてお話ししました。

痩せることでしか自分は輝けないという強烈な思い込み

臨床心理士:福田俊介
拒食症になるお子さんの背景には、特有の「生きづらさ」があります。真面目で頑固な一面を持ち合わせているため、一度決めた「~せねばならない」というマイルールやこだわりに、強く固執してしまうケースが多く見られます。

お子さんにとって「痩せること」は、自分を輝かせるための“心の支え”です。

一方で、親御さんは「食べないと死んでしまう」「少しでいいから食べて」と必死に説得します。
しかし、お子さんにとってその言葉は、自分を支えている大切な心の支えを奪われる恐怖としてしか響きません。

どんなに正しい理屈や食事管理も心には届かず、かえって心の扉を固く閉ざしてしまう結果を招いてしまう:カウンセリング(拒食症)

そのため、どんなに正しい理屈や食事管理も心には届かず、かえって心の扉を固く閉ざしてしまう結果を招いてしまうのです

では、どうすれば痩せることに執着するお子さんの「生きづらさ」を和らげ、イキイキと生きる手助けができるのでしょうか。

治療的アプローチとしての「雑談」

治療的アプローチとしての「雑談」:カウンセリング(拒食症)

お子さんの心に、痩せること以外の“心の支え”を作る。
そのために、当センターが提唱しているのが治療に効果的な会話(雑談)です。

お子さんがお母さんと喋っていて楽しいと感じるレベルまで雑談を研ぎ澄ませていく。
そうすると、その楽しさが活力となり、お子さんの中に健全なエネルギー(能動性)が生まれます。

能動性が育つことで、初めて回復へと向かう:カウンセリング(拒食症)

「自分から話したい」「もっとこうしたい」という能動性が育つことで、初めて回復へと向かうことができる。福田はそうまっすぐに話します。

説明会の中では、実際にカウンセリングで回復した事例研究が取り上げられ、参加された親御さんは熱心にメモを取られていました。

「雑談が大事」とはいうけれど…親御さんが抱える壁

しかし、実際に「雑談しましょう」と言われても、そう簡単ではない……。その親御さんの気持ちは痛いほど伝わってきました。

説明会に参加された親御さんからは、率直で切実な声が上がっています。

  • 子どもと会話が続かない。気がつけば用事のことばかり
  • 親の仕事が遅くて、娘と会話できるのが夜の時間帯のみ
  • 子どもの外見や、手を頻繁に洗うことに気を取られて雑談にならない
  • ついつい「ちゃんと食べてるの?」と聞いてしまう
精神科医師:福田俊一
このような状況の中でも、雑談の糸口を見つけていくヒントがあります。

1%の興味からひろげる雑談

拒食症や強迫症状を抱えるお子さんの心の中は、食事や体重、あるいは独自のこだわりで99%が支配されています。

しかし、精神科医・福田俊一は続けてこう語ります。

「わずか1%の興味に着目してあげてください。食以外のことで、趣味、SNS、友人のこと……そこから話を広げていくのです」

この1%を2%、3%へと広げ、最終的に自分からイキイキと話す能動性にまで回復させることができます。

「単なる何気ない雑談ではなく、<高みを極めた雑談>にもっていくのです」と、福田の言葉:カウンセリング(拒食症)

「単なる何気ない雑談ではなく、<高みを極めた雑談>にもっていくのです」と、福田の言葉に熱が入ります。

この雑談の威力は、淀屋橋心理療法センターが大切にする家族療法の根本でもあります。
これはお子さんの性格や気質によって、お一人ずつアドバイスが変わります。その蓄積されたノウハウこそが、当センターの強みなのです。

体重は「最後」に増える。回復のロケット理論

体重は「最後」に増える。回復のロケット理論:カウンセリング(拒食症)

「回復のプロセスは、ロケットの打ち上げと似ている」と、福田はいいます。

打ち上げ直後は大きなエネルギー(親御さんの努力)を使っているにもかかわらず、目に見える変化はほとんどありません。

この最初の結果が見えない時期が、親御さんのエネルギーを最も使う段階です。ここで不安になり、揺らいでしまう方が多いのです。

しかし、回復には必ず「順序」があると福田は続けます。

  1. 心の回復期笑顔が増える、不満が言えるようになる、雑談が増える。
  2. 身体の回復期: 心が十分に元気になって数ヶ月後、自分の意志で食べ始める。

心が回復し、笑顔や雑談が増えた“その先”で、体の変化が現れます。体重の安定した増加は最後についてくるのです。

精神科医師:福田俊一
体重が増えるまでは、医療との連携を取ることも大切です。

親御さんからの感想

勉強会の最後に、アンケートで感想をいただきました。

雑談力という言葉は初めて知りました。それを磨くということは新しい衝撃です。

今までも、うなずきや相槌を大切に、「ただ子どもの話を聴こう」と努力し日々を過ごしていましたが、何の変化もありませんでした。

雑談ができれば、子どもが高揚して楽しく話せる、自己表現ができる。そんな状態になれば、ずっと苦しんでいる自己否定や消えてなくなりたいという思いもなくなっていくのかも……と感じました。(要約)

自己表現ができる:カウンセリング(拒食症)

最後に

お子さんをなんとか回復に導きたい、この状況をどうにか解決したい。 そんな切実な想いで、ひたむきな努力を重ねていらっしゃる親御さんたち。その深い愛情に触れ、ただただ頭が下がる思いでした。

回復の道のりは、決して平坦なものではないかもしれません。ですが、当センターでは親御さんと手を取り合い、解決への道しるべを探していきます。どうかご自身を責めず、焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。

淀屋橋心理療法センターは親御さん向けの治療説明会を定期的に開催しております。ご興味のある方はぜひご参加くださいね。

▶ 最新の治療説明会日程はこちらをご覧ください。

https://www.yodoyabashift.com/study_session/

▶ 拒食症に関してはこちらの記事もご参考になさってください。

摂食障害(過食症・拒食症)
               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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