【子どものカウンセリング】悪化してる?実は回復のチャンスかもしれません

更新日:2026.01.30
【子どものカウンセリング】悪化してる?実は回復のチャンスかもしれません
子どものカウンセリング:成長を見極めるポイント

お子さんの悩みに心を痛めておられる親御さんが淀屋橋心理療法センターに来所され、カウンセリングを始めてしばらく経った頃。

カウンセラーの視点ではお子さんに良い変化が起きはじめていて、これはチャンスだ!と感じる時期に、

「最近、うちの子の状態(症状)が悪化して…」

と、親御さんから、ひどく沈んだ声でご相談いただくことがあります。

残念ながら、カウンセラーにはチャンスだと見えることが、親御さんにはチャンスに見えていない(気づいていない)ことがあるのです。

この記事では、ピンチだと誤解されやすいチャンスの代表例を3つご紹介します。

親御さんたちが回復のチャンスを見逃さず、あとから後悔しないために、淀屋橋心理療法センター臨床心理士・福田俊介が実際のケースを基に解説するので、ご参考になれば幸いです。

実は回復のチャンス?誤解されやすいケースを臨床心理士が解説

子どものカウンセリング解説図

せっかくの回復のチャンスを、親御さんが「ピンチ」だと真逆に捉えていることがよくあります。

ではなぜ、親御さんは「ピンチ」だと考えてしまうのでしょうか。以下で、実際に福田が担当したカウンセリングケースを通して考えてみましょう。

今回は、3つのケースをご紹介します。

  • 【ケース1】20代のひきこもりの男性
  • 【ケース2】中学2年生の不登校の女の子
  • 【ケース3】中学3年生の不登校の男の子

一つひとつ見ていきましょう。

【ケース1】ひきこもりの20代男性:突然不安を言い始めた

20代で引きこもりの男性マモルさん(仮名)は、家でゲームをしていることが多いのですが、カウンセリングが順調に進み、笑うようになり、外出が増えてきました。

ところが、ある時から突然不安を語り出すようになりました。

「あー 将来が不安だ」

と暗い表情で語り、

「俺みたいなやつが、どうやって社会でやっていけるんだろう……」

と、珍しく涙を流したのです。

それまで不安な様子を見せなかった息子が、急に不安な様子になれば、「状態が悪化したんじゃないか?」と思われる親御さんも少なくないことでしょう。

カウンセリングを続けている中で、こういった状況が起こる場合があります。

それは、息子さんが元気になり、気持ちに余裕が生まれたためです。

これまで見ないようにしていた現実を、見ることができるようになった(現実逃避を止めた)からなのです。

そのため、不安に襲われるようになったという場合があります。不安な様子を見せるようになったのは、前進している証拠です。

この時、うまく息子さんの不安を聞いてあげると、ひきこもりやゲーム依存症の状態からの卒業が近づくでしょう。

一方で、「息子の状態が悪化した」と親御さんが焦ってしまうと、せっかくのチャンスを逃すことになってしまうかもしれません。

【ケース2】不登校の中学2年生の女の子:穏やかだったがイライラを見せるようになった

次に紹介する不登校の中学2年生、サナさん(仮名)は、とても優しく気遣いのできる女の子。これまで家で同級生の悪口もほとんど言わない子でした。

しかし、ある時から突然、

「Aちゃんは自己中でイライラする!」

と声を荒げたり、

「Bちゃんには合わせてきたけど、ほんとは嫌いや!」

と、机をバン!と叩いたりするようになりました。

親御さんとしては、これまで優しい面しか見せてこなかった娘が、悪口を言ったり、イライラしたりする様子を見せ出したので、「状態が悪化してしまった…」と捉えるわけです。

しかし、カウンセリングが順調に進んでいる中で起きたことならば、悪化ではなく回復のチャンスの可能性があります。

優しかった子がイライラを見せ始めたのは、 抑えていた本音を出せるようになってきたから かもしれません。

これは、喜ばしいチャンスです。このチャンスを活かして、さらにお子さんの成長を伸ばしていけるでしょう。

【ケース3】不登校の中学3年生の男の子:発言の仕方が変わって来た

不登校の中学3年生の男の子

3つ目のケースは、不登校の中学3年生の男の子、セイジ君(仮名)です。

散らかった自室でスマホばかり見ていたセイジ君でしたが、カウンセリングが順調に進んできていました。

近ごろはリビングに出てくることが増え、親子の会話が増えています。ここからは、セイジ君とお母さんの会話を見ていきましょう。

【セイジ君とお母さんの最近の会話】

セイジ君とお母さんの最近の会話

皆さんは、このセイジ君の発言をご覧になって、どう思われましたか?

  • 「努力をしたくない」「楽をしようとしている」発言?
  • 独りよがりな意見?
  • 相手のことを考えず、偉そうに話している?

セイジ君の状態が「良くない」と思われた方もおられるのではないでしょうか。

では次に、セイジ君とお母さんの半年前の会話を読んでみてください。

【セイジ君とお母さんの半年前の会話】

セイジ君とお母さんの最近の会話

半年前の会話と比較して、いかがでしたでしょうか?

セイジ君が、自分の意見や考えを主張していることがよくわかりますよね。

まとめ 回復のチャンスを見逃さない

多くの親御さんは、会話の内容に注目されます。

確かに会話の内容だけを見ると、最近の会話では、セイジ君に頑張ろうという気持ちが見えず、怠け者だ!とイライラしてくる方も少なくないでしょう。

努力をあきらめるような発言に親御さんが焦り、注意などをしてしまうと、セイジ君の状態が悪化してしまうかもしれません。そうではなく、

  • 自分の意見や考えを率直に言えるようになった
  • 主張できるようになった

このように、「前進(成長)の表れ」だと捉えられるようになれば、親御さんも落ち着いてセイジ君の性格に合った対応ができます。

自分の意見や考えを話せるようになることで、セイジ君は次のステージへ進んでいけるでしょう。

前進(成長)の表れ

例えば、「とりあえずやってみよう!」と思えるようになったことも、大きな変化のひとつです。

以前は、何か明確な目的がないと行動に移す意味を見いだせなかったセイジ君。どんなにちょっとした用事でも、「目的」がなければ出かけられないほどでした。

そんな彼が、受験勉強も「とりあえずやってみようか」と行動に移せるようになりました。これは、彼にとって大きな成長です。

また、弱音を吐けるようになったことも、重要な前進です。

「オレみたいに長続きするのが苦手な人間が、頑張り続けられるかな?」

受験勉強を前に、彼はこのような言葉を漏らしました。これは、単なる弱気な姿勢ではなく、自分の特性を理解し、言葉にできるようになった、彼の思考が進歩したことを意味します。

良いところも、弱いところも、全て自分の一部だと受け止められる。そんな自分を好きになれる。ここまで来ると、カウンセリングの卒業が見えてきます。

「とりあえず行ってみよう・やってみよう」

多くの人にとっては当たり前に思えるこの言葉ですが、ある人にとっては、生き方が変わるきっかけになることもあります。当センターのカウンセリングでは、このような実感を得られる人も多くいらっしゃいます。

チャンスがやってきた時、それがチャンスだとわかる。そうすれば、チャンスは掴みやすくなるでしょう。

最後に、関連記事をご紹介します♪

淀屋橋心理療法センターのカウンセリングに通われている親御さん、もちろん初めて当センターにご興味を寄せてくださった親御さん、あるいはご本人の方にとっても、お役に立てる情報が詰まった記事を厳選しました。

~記事紹介~
「カウンセリングの理解が深まり、治療の成果につながる読み物」シリーズ
カウンセリング事例

お子さん本人の話し方が変わっていく過程が伝わるケースレポートです。「自分のキモチ」にフタをしがちだった女の子。彼女が少しずつ少しずつ、想いを言葉で表していく様子が丁寧に描かれています。

過食症

お子さん本人の話し方が変わっていく過程が伝わるケースレポートです。「自分のキモチ」にフタをしがちだった女の子。彼女が少しずつ少しずつ、想いを言葉で表していく様子が丁寧に描かれています。

過食症

当センターのカウンセリングに実際に通われた親御さん直筆の手記。お母さんが何度も失敗を繰り返しながら、娘さんの回復のために全力を尽くす、そんなリアルな姿が伝わる、希少なレポートです。

カウンセリングが順調に進んでいると、つい親御さんの対応が以前のものに戻ってしまいがちです。「油断」すると、一体何が起きるのか?わかりやすく解説しています。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

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