ゲーム依存症とスマホ依存症、家庭内暴力の問題を抱えた高校生の
カウンセリング事例

ゲーム依存症とスマホ依存症、家庭内暴力の問題を抱えた高校生のカウンセリング事例

この記事では、ゲーム依存症やスマホ依存症、家庭内暴力といった問題を抱える高校1年生のタケル君(仮名)の事例を紹介するとともに、ゲーム障害(Gaming disorder)についても解説します。
お子さんがゲームやスマホを手放せない・暴力をふるうなどの理由で深く悩んでおられる親御さんは、ぜひ参考になさってみてください。

ゲーム依存症の正式名称は、ゲーム障害(Gaming disorder)疾病です

ゲーム依存症の正式名称は、ゲーム障害(Gaming disorder)疾病です

ゲーム依存症の医学病名は「ゲーム障害(Gaming disorder)」です。
これまでゲーム依存やネット依存など、さまざまな名前で呼ばれていましたが、2019年5月、WHO(世界保健機関)総会で「ゲーム障害」が正式に認められ、2022年1月から使用されています。

また、ICD-11(国際疾病分類第11版)に新しく追加されたことで、ゲームのしすぎによる問題が「疾病」として扱われるようになりました。これにより、診断や治療が統一されたり、研究が進んだりすると同時に、社会の理解が深まる可能性があります。

出典:厚生労働省

タケル君(仮名)のゲーム・スマホ依存症と家庭内暴力の症状

タケル君(仮名)のゲーム・スマホ依存症と家庭内暴力の症状

ここからは、タケル君(仮名)の事例について見ていきましょう。

タケル君は学校に行けなくなり、家でゲームばかりしています。ほとんど外出はせず、たまにコンビニに行く程度。親御さんとの会話は、あまりありません。

以下で、タケル君のゲーム依存症やスマホ依存症、お母さんに対する暴力について、具体的に解説します。

ゲームやスマホが手放せない

タケル君は、家でゲームばかりしています。食事中ですら、スマホを手放せずに動画を見ています。飼い犬のチャロの世話も全くしなくなりました。
また、不機嫌なことも多いのです。ゲームでうまくいかないと叫んだり、物を投げたりします。

「暴力さえなくなってくれれば」お母さんへの家庭内暴力

「暴力さえなくなってくれれば」お母さんへの家庭内暴力

タケル君は、お母さんの髪の毛をつかむなどの暴力を振るいます。

当センターに、初めて来所された日。

1人で相談に来られたお母さんの髪の毛は整っておらず、メイクもほとんどされていません。うつむいてタケル君の状況を説明されました。お母さんは腕の袖をめくり、アザを見せて、仰いました。

「暴力さえ、暴力さえなくなってくれれば」

その日以降、お母さんはお一人で淀屋橋心理療法センターのカウンセリングに通われました。その結果、親子のコミュニケーションが増え、タケル君がイライラすることが大幅に減り、家庭内暴力が完全になくなりました。

彼がどう変わっていったのか、当センターでのカウンセリング開始後の変化を具体的に見ていきましょう。

カウンセリング開始:家庭内暴力に耐え、変化のなかった1ヵ月間

カウンセリング開始:家庭内暴力に耐え、変化のなかった1ヵ月間

家庭内暴力がおさまらない中、最初の1か月間は変化がありませんでした。それでもお母さんは、淀屋橋心理療法センターで受けたアドバイス通りにタケル君に対応されていました。

タケル君が「家にいろ!」とキツく言うので、スーパーに買物に出かける時がお母さんの唯一の息抜き。どうしてもしんどくなった時は、親戚の家に避難されていました。

しかし、当センターでアドバイスを受けてから、さらに約1か月が経った頃。タケル君が変わり始めます。

少しずつ家庭内暴力が減り、スマホ・ゲームへの依存が薄れていく過程に注目なさってみてください。

変化① ゲームの話が続くようになってきた

まだ暴力は続いているものの、お母さんがタケル君の変化に気づかれました。

ゲームの話が、以前よりも長く続くようになってきたのです。ゲームのキャラクターや武器の説明をお母さんにするようになり、表情が以前よりも穏やかになってきました。

変化② 荒れるが、母親に危害を加えなくなった

タケル君がゲームについて、お母さんに熱心に説明する日も出てきました。

「俺がこっちの方向に動いたのは、相手が東側から攻めてきたからで〜〜〜〜〜〜」

と、自分の作戦について語ります。

この頃はまだ、ゲームでうまくいかないと、床をドンドンしたり、夜中でも叫んだりといった言動は続いています。

しかし、これまでの暴力と大きく違うのは、お母さんを実際には殴らずに、殴るフリをするようになったことです。また、物を投げる時は、柔らかい物を選ぶようになりました。

他の変化としては、その日の気分にもよりますが、飼い犬のチャロに餌と水をあげるようになったことも挙げられます。

変化③ ゲーム以外の話題も話すようになった

変化③ ゲーム以外の話題も話すようになった=

ゲームで負けると荒れる状態は、まだ続いています。

けれども、以前と異なる変化もありました。タケル君の口からゲーム以外の話題もチラホラと出て来るようになったことです。具体的には、ネットニュースで知った芸能人の結婚・離婚や、事件・事故などに関してです。

また、機嫌の悪い時間が以前より格段に短くなり「ハハハ」と笑う場面も増えてきました。

「前ほど息子と過ごすのがしんどいと思わなくなりました」

涙をぬぐいながら、以前よりもずっと落ち着いた表情でお母さんが仰いました。

変化④ スマホを触るのを我慢できた

お母さんとの間で、ゲーム以外の話題も盛り上がるようになってきました。 

んなある日、タケル君のおじいちゃんが突然、家に訪ねてこられました。久しぶりのことです。おじいちゃん、お母さん、タケル君の3人で40分ほど会話したのですが、なんと、その間にタケル君はスマホを全く触りませんでした。

また、おじいちゃんが帰った後に、タケル君が「なんで勝手に家に連れてきたんだ!」と荒れるかもしれないとお母さんは思っておられました。しかしその日、タケル君は荒れることなく、穏やかだったそうです。

変化⑤ イライラした時に、自分でゲームを止めることができた

ある日、ゲームをしているとタケル君の目つきが険しくなってきました。「また荒れるんだろうな」とお母さんは今まで迄の傾向から察知されました。

ところが、タケル君が自分でゲームを止め、お母さんに言いました。

「イライラしそうになったから止めた」

面接室にて、お母さんは「ビックリしました」と、その時の状況を興奮気味にお母さんがカウンセラーに伝えてくださいました。

また、もう1つお母さんの印象に残った出来事がありました。

ある日、タケル君がチャロの餌やりを忘れていました。それをお父さんが「チャロに餌やるの忘れてるぞ」と指摘しました。

お父さんの発言を聞いて、お母さんはタケル君が荒れることを覚悟しました。ところが、タケル君は「ごめん」と言って、すぐに餌を与えに行きました。
彼が親御さんに対して自分のミスを認めて謝ったのは、不登校になってから初めてのことです。

変化⑥ ほとんど荒れなくなり、現実に向き合い始めた

変化⑥ ほとんど荒れなくなり、現実に向き合い始めた

この日の面接室には、お化粧して、綺麗なお母さんが座っておられました。今までとは別人のようです。この1か月間、タケル君が荒れることが一度もなかったそうです。

また、お母さんとタケル君の会話の話題は、ゲームかネットニュースで得た情報に関してでしたが、ある時、

「(同級生の)上田は今ごろ、テスト勉強頑張ってるんかな」

とタケル君が言ったそうです。ついに、現実で知っている人の名前が彼の口から出てきました。不登校になってから初めてのことです。

さらに、お母さんが「すごい進歩だな」と仰ったことがありました。それは、ゲームに負けた時のタケル君の発言。
「ゲームで負けたんは俺が下手やからや。人のせいにしても何も変わらん」

この後、ゲームでうまくいかずに荒れることは大幅に減り、家庭内暴力は完全になくなりました。また、現実の世界(学校の人間関係など)についてお母さんに少しずつ話し出しました。

ゲーム依存症・スマホ依存症や家庭内暴力のカウンセリング治療は家族療法の専門機関へご相談ください

ゲーム依存症・スマホ依存症や家庭内暴力のカウンセリング治療は家族療法の専門機関へご相談ください

ゲーム依存症とスマホ依存症、家庭内暴力の問題を抱えたタケル君の事例を紹介しました。

タケル君のお母さんは、カウンセリングによるアドバイスをコツコツと実践されました。その結果、タケル君の心が成長し、自分の感情をうまく乗りこなせるようになりました。

時間はかかりますが、お子さんの精神的な成長が、ゲーム依存症や家庭内暴力の根本的な解決に繋がります。

ゲーム依存症・スマホ依存症や家庭内暴力には、解決する道筋があります。その道のりには、親御さんが、「解決するために頑張るぞ」と一生懸命努力し、継続していただく必要があります。我々は、そういった方との出会いを切望しています。

*この記事は、当センターにご相談に来られた複数のケースを基に書いており、個人が特定されないようにしております。

更新日:2025年04月22日

2020.04.17  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊介

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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