カウンセリング事例|うつ症状で社会人の娘が元気をなくした….
親子の関わり方で変化した理由とは?

更新日:2025.07.31
カウンセリング事例|うつ症状で社会人の娘が元気をなくした….親子の関わり方で変化した理由とは?

「最近、娘が笑わなくなった」、「会社の話を全くしなくなった」
社会人として頑張っている娘が急に元気を失い、家では無口になった…。うつ病なのでは?…そんな不安を抱える親御さんは少なくありません。
本記事は、臨床心理士・福田俊介が執筆いたしました。「親と子の関わり方」で社会人の娘が少しずつ変わっていった実際のカウンセリング事例をご紹介します。
娘が「仕事に行きたくない」と感じながらも言葉にできなかった理由や、親の接し方を変えることで見られた具体的な変化をご覧ください。

親の心配も届かない…頑張り過ぎた娘の苦しみ

親の心配も届かない…頑張り過ぎた娘の苦しみ

大学卒業後、事務の仕事をしているミサさん(仮名)28歳。入社以降、真面目なミサさんは現在の会社で一生懸命仕事をしてきました。

真面目で優しい娘に異変

1年前にミサさんが部署を異動になってから、だんだんと元気がなくなってきました。心配したご両親は「何か困っていたら相談してね」、「部署を異動させてもらったらどう?」などと言いましたが、ミサさんは聞く耳を持ちません。

頑固で責任感の強い娘に限界が近づいてきた

お母さんは、「ミサは昔から真面目で優しい子なんですが、すごく頑固なところがあって、人の意見をあまり聞かないんです。」とおっしゃっています。

学生時代から我慢強い人だったようです。辛くても頑張って出勤を続けていたミサさん。しかし、ますます様子は悪くなっていきました。

毎朝、無理して出勤し、思いつめた表情で自宅を出ていきます。夕方、職場から帰ってくるととても辛そうな表情です。リビングにあまり来ようともせず、自室にこもりがちになっていきました。
そんなミサさんの様子を見て心配でたまらない親御さん。心配は募るばかりでした。

親としての関わり方を学ぶためにカウンセリングへ

親としての関わり方を学ぶためにカウンセリングへ

ミサさんにうつ病のような症状が出ている中で、親御さんはさまざまなアクションを起こしミサさんを助けようとされました。その様子をご紹介します。

心療内科を拒否した娘…どう関わるべきか悩んだ母

ミサさんの様子が心配なお母さんは、「一度、近くの心療内科に相談に行ってみない?」と優しく何度も提案しました。しかしミサさんは、「行っても意味があるとは思えない」と言って聞く耳を持ちません。

どこに相談すれば良いか分からず困り果てた親御さんは、淀屋橋心理療法センターのホームページを見て、悩んだ末、「娘本人が来なくてもいいのが有り難い」と、遠方から来所することを決意されました。当センターでは、オンラインカウンセリングも行っており、カウンセリングの効果もオンラインと対面で差はありません。
しかし、今回ミサさんの親御さんは直接会ってカウンセリングを受けたいという強いご希望がありその方法でカウンセリングをスタートしました。熱い思いのある親御さんでした。
この時、ミサさんの調子が悪くなってからすでに1年程が経過していました。

「親が変われば子も変わるかもしれない」という一歩

「親が変われば子も変わるかもしれない」という一歩

初めて淀屋橋心理療法センターに来所された日、「親としての関わり方を学びたいと思いまして」と緊張した面持ちでおっしゃったお母さん。

「学びたい」という言葉を聞いて、カウンセラーである臨床心理士・福田俊介はこう思いました。「お母さんのモチベーションが高そうだな。もし実際にそうなら、良い結果が生まれる可能性は高いだろう」。
それから、お母さんは片道約2時間かけて当センターに通われることになりました。

カウンセリングで娘に現れた6つの変化

カウンセリングで娘に現れた6つの変化

お母さんが当センターに通われるようになり、ミサさんの性格にあった対応の仕方を覚えて頂くと、ミサさんにさまざまな変化が現れてきました。

①甘えるのが苦手だった娘が母親に甘えるようになった

兄、妹と比べて甘え上手ではなかったミサさんが、お母さんに甘えてくるようになりました。「お母さん、肩揉んで~」と言いました。お母さんが肩を揉んであげると、「じゃあ、今度はミサがお母さんの肩を揉んであげるね」と言い、肩を揉みながら鼻歌を歌っているのでした。いままでなかったことに、お母さんは驚いておられました。

②リビングで一緒にテレビを見て笑うようになった

「お母さん、肩を揉んで〜」と甘えるようになった頃から、リビングにやってくることが増えたミサさん。リビングのソファで、お母さんの横に座って、一緒にTVを見るようになりました。ある日、バラエティ番組を見ていると、「ハハハ」とミサさんが笑いました。「娘の笑い声を久しぶりに聞けました」とお母さんが喜びを語ってくださいました。

③テレビのニュースに反応し、コメントするようになった

テレビのニュースに反応し、コメントするようになった

テレビを見ている間は、ほとんど喋らなかったミサさん。
ところが、ニュースを見てコメントするようになりました。 ミサさんの言葉に力が出てきました。感情や思いを少しずつ、言葉で表現できるようになってきたのです。

④職場の状況を自ら具体的に話し始めた

これまで親御さんは、「会社で何があったの?」、「新しい上司とあわないの?」と、何度もミサさんから職場の状況を聞き出そうとしてきました。しかし、「放っておいて」と頑なでした。

ところが、テレビのニュースにコメントをするようになった頃から、「課長はせっかちやから困る。課長が突然早口で質問してきて、私が即答できないと、ハーって溜息つくねんで。突然聞かれても、こっちにも心の準備が必要やん」、「今の部署は話しやすい人がいないからなー。私、孤立してるねん」などと自分から職場での困った状況を話すように変わってきました。

⑤自分なりの対処法で職場での立ち回りがうまくなった

ある日のこと。2人で夕飯を作っていると、「お母さん、私気づいてん」とミサさんが言い出しました。「課長が突然何かを聞いてきたら、『少しお待ちください』と言って、呼吸を整えてから返事するようにしたら、スムーズに答えられるようになってん。最近、課長にハーって溜息つかれることが随分と減ったわ」と笑顔を見せました。

また、現在の部署で「孤立」していると言っていたミサさんでしたが、「最近、年が一番近い子と話すようにしてみたら、共通の話題が見つかって急に仲良くなってん。職場の不満を話せる相手がひとりいるだけで、こんなにも気分が楽になるねんなー」と言うようになりました。ミサさんの表情は以前よりずっと穏やかです。
職場から帰宅すると、「疲れた」とは言いますが、「辛い」とは言わなくなりました。朝、出勤する時は、以前のように思いつめたような表情で出勤することはなくなりました。

⑥過度に自分を責めず、強さが芽生えた

ミサさんはとても元気になってきました。
ある日、親御さんと3人で食事をしていると、こう話してくれました。
「前なら、なんで私はこんなにできないんだろうと悩み続けることが多かったけど、最近は考え過ぎることを止めてん」。親御さんはこのミサさんの言葉に大変驚かれたようです。

随分と娘が成長したなと思ったお父さんが、
「そう、そう!考えすぎないことや。」と言うと、
「いや、お父さんはもう少し考えて行動した方が良いと思うよ。」と返してきました。
カウンセリングルームで、「夫が初めて娘に言い返されました。強くなりました。」とお母さん。その横で「本当に。」とお父さん。なんだか嬉しそうなおふたりです。

その後、ミサさんは以前のように元気に出勤するようになり、仕事帰りにはスポーツジムに通う元気も出てきました。

カウンセリングがもたらしたのは「親と子、両方の回復」

カウンセリングがもたらしたのは「親と子、両方の回復」

カウンセリングには、ほとんどお母さんだけが通われました。毎回、面接時にはお母さんのご報告から、ミサさんがどんどん元気になってこられたなと感じていましたが、それと同時に親御さんも元気になってこられたなとカウンセラーは感じていました。最初に来所された時と、親御さんの表情が全く違うのです。

最後の面接でお母さんは、こうおっしゃって帰っていかれました。「カウンセリングを受けて母親の私が楽になったことで、娘も楽になったんだと思います。」

*この記事は、当センターにご相談に来られた複数のケースを基に書いており、個人が特定されないようにしております。

*このケースでは、遠方から当センターにお越しいただき、対面でのカウンセリングをご希望されました。当センターでは、対面カウンセリングに加えてオンラインでのカウンセリングも行っております。
親御さんの中には、直接お越しになることを希望される方もいれば、オンラインカウンセリングを選ばれる方もいらっしゃいます。どちらの方法でも、カウンセリングの効果に違いはございませんので、ご安心ください。

オンラインカウンセリングについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

オンラインカウンセリングの実績あり | 淀屋橋心理療法センター|不登校・摂食障害(過食・拒食)等への家族療法カウンセリング
               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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