事例4:「なんで食べないの。食べないと死んでしまうのよ!」と私は必死ですが、子どもはあれこれ理由を言って食べようとしません。どうすればいいでしょうか?

食べさせようとしても食べない子どもに疲れはてた母親

拒食症の子どもの親は、やせ細った姿を見るたびに「この子は死んでしまうのではないか」と、心配でたまりません。なんとか食べてもらおうと無理強いすることもしばしばです。拒食症の子どもをもつお母さんが、カウンセリングで次のよう話しました。(奈々美 中一、拒食症歴一年)

「食べる食べないの話しになると、奈々美はいっさい口を開こうとしません。体重が病院で言われた体を維持する最低限ラインに達しようとしていることについて、どう思っているのか、親にはまったくわからないんです。

学校の話しやテレビの話は自分からよくするのですが、肝心の体重の話はしゃべらないし、聞いても答えません。病院で主治医の先生が聞かれても首をふったり、うなずいたりぐらいはするのですが、一言もしゃべろうとしません。食べることに関しては、何を言っても絶対に聞こうとしません。

『食べたほうがいい、いや食べないとえらいことになる』というのは誰がみても明らかだし、自分でもわかっているんです。でもやっぱりどうしてもその現実を受け入れられないのか、食べないほうを選んでいるようです」

お母さんは低い声で淡々とした口調で話しました。肩を落としたその姿には、ありとあらゆる手はつくしたけれどだめだったという無念な気持ちがにじんでいました。

あの手この手でのらりくらりと食をかわす名人

一方拒食症の子どもはなんとしても食べたくないので、あの手この手で親からの説得をすりぬけようと試みます。「今はお腹いっぱいだから、後で食べる」と引き延ばし作戦できたり、「それはきらい」「まずいからいや」と、理由をつけて食べようとしなかったり。子どもでも食を拒否する頑固さにはなかなかしぶといものがあります。

親が食べさせたい栄養のある物はなかなか食べようとしません。また食べる量も自分で決めていて、ほんのごくわずか食べて「もうお腹いっぱい」と言います。親が「もっと食べないと栄養がとれないでしょう」と、どんなにすすめても受け入れようとはしません。またそのときは食べたとしても、どこかで調節してしまうことがよくあります。食べたふりをして親が食卓を離れたすきに、隠していた袋に食物を放り込んでいたという子もいました。食べようとしない頑固さには、親も負けてしまうことがしばしばです。

食を拒否する頑固さは、自己主張の裏返し

食に対する抵抗は、拒食症の子どもに残された「自己主張できる」わずかな領域であるという事実をしっかりと認識しなければなりません。無理矢理に食べさされ続けたりすると、食の分野で初めて自己主張し始めた子どもの場合、親に打ち負かされたと感じたり親は信用できないという感じを増やす子がいます。こうなってはやっかいなので、大事なところをしっかりおさえるだけにして、他のところは子どもの考えに任せるようにしたほうがこじれないですみます。子どもが親の干渉から離れて、自分で決定する分野を増やしていきましょうと、親を説得しています。

元々子どものことをとても大事に思っている親ですので、内科医での診察を受け安心のための対策はきっちりと取らねばなりません。そのためには拒食症の専門家がかなりリーダーシップを発揮して動く必要があります。

淀屋橋心理療法センターにおけるカウンセリングの取り組み方は・・・

当センターでは決して頭から子どもが主張する「食べない」という行為を否定したりしません。むしろ「やせていたいんでしょう。いいですよ。やせていましょう。それがあなたらしいことなんですから。無理に太ろうなんてできないでしょう」と語りかけて、子どもの「やせたい気持ち」を受け入れてあげます。親御さんには「食べる食べない領域は本人の意思を尊重して任せましょう」と語りかけ、そのかわり連携をとっている内科医に決めてもらった「体を守る最低限の体重を切らないよう、自分で頑張る」という約束をはっきりと守ってもらいます。このように子ども自らが自分の意思で取り組んでいけるように導きながら、子どもの成長をめざします。

子どもの主張する「やせ」を認めながら、内科医と連携をとり最低限の体重を維持するという二重奏のやり方をとるようになって、拒食症の成功率が比較的早い段階でぐんと上がりました。子どもの命の心配をしなくてよくなり、カウンセリングで心の治療に集中できるようになったことが大きいと思われます。子どもは心の準備ができだすと今まで以上に生き生きした表情に変わっていき、拒食症の穴から自ら脱しようとし始めます。

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