
さまざまな思いや背景を抱えた子どもたちが集まる学校。
保健室には、そんな子どもたちから、担任の先生にも親にも言えないような本音が持ち込まれることも少なくありません。
淀屋橋心理療法センターでは、日々、子どもへの関わり方に悩む保護者の方から多くのご相談をいただいています。その経験を、少しでも教育現場に還元できればという思いから、保健室の先生方を対象としたセミナーを定期的に開催しております。
本記事は、2026年3月28日に開催したセミナーの内容をご紹介します。
これまで対面のみで開催していた本セミナーですが、今回は初めてZoomを併用し、来所が難しい遠方(今回は、群馬県、静岡県、三重県など)の先生方にもオンラインでご参加いただきました。
春休み中にもかかわらず、熱心に耳を傾けてくださった先生方、本当にありがとうございました。
◆ 講師プロフィール ◆

カウンセラー
福田俊介(ふくだ しゅんすけ)
臨床心理士・公認心理師(国家資格)
オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science)
自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業
不登校・過食症・リストカット
で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー
目次
先生方のエピソードから見えた子どもたちとの関係性

セミナーのはじめは、先生方同士で簡単なご挨拶の時間を設けました。
異動される先生のもとを子どもたちが訪れ、手紙や手作りのプレゼントを贈ったり、「さみしい」と素直な気持ちを伝えたり……。そんなこの時期ならではの「別れ」にまつわる先生方のお話が、とても印象的でした。
先生方が日頃から子どもたちと真摯に向き合い、関係性を築いておられるからこその出来事であり、改めて“保健室”と“保健室の先生”の存在が、子どもたちにとって大切な居場所であることを感じました。
褒めても響かない…自己肯定感が低い子へにどう関わる?

セミナーでは、現場でよく見られる子どもたちの悩み(ゲーム依存・自傷行為・癇癪)について、当センターで実際に解決したカウンセリング事例をもとにご紹介しました。
その中でも、「自己肯定感の低い子どもへの関わり方」について、臨床心理士・福田俊介よりお話しした内容の一部をご紹介します。
自己肯定感が低い子や、マイナス思考になりがちな子。自信をつけてほしいという思いから、「よく頑張ってるね」「すごいね」と励ましの言葉をかけることもあるでしょう。
しかし、当の本人はあまり嬉しそうな顔をしなかったり、「こんなの誰でもできるし」と返してきたり、時には褒め言葉そのものに警戒するような反応を見せたり—
このような経験をされた先生も多いのではないでしょうか。
福田はこうした「褒めても響かない子」へのアプローチについて、こう話しました。

褒めても響かない子は、無理に褒めようとするよりも、
- 子どもの発言や気持ちに同調する
- 子どもの意見を尊重する
といった関わり方が効果的なことがあります。
たとえば、掃除の時間に「僕、ここから片づける」と言った子に対して、「そっか、いいね」と自然に受け止めることも、同調です。効率を考えて「こっちから片づけた方が早いよ」と良かれと思っての助言も、自己肯定感が低い子には“自分のやり方を否定された”と映ってしまうことがあります。
本人の意見を尊重し“自分の考えが受け入れられた”という実感の積み重ねが、子どもの心の安心感につながり、少しずつ自分に自信を持てるようになっていくのです。
現場の悩みに寄り添うQ&Aコーナー

当日は、先生方から現場ならではのリアルなお悩みもたくさん共有していただきました。
ここでは、その一部をご紹介します。
Q:生徒の話が支離滅裂。どう聞けば
Q:癇癪を起す生徒がよく話に来てくれるのですが、内容が支離滅裂なんです。話が見えなくなって「こういうこと?」と確認しようとすると、「いや、だから!」と機嫌を悪くしてしまいます。こういう場合は、ただ共感し続けるのがよいのでしょうか?
A:癇癪など、高ぶった感情の渦中にいる人と向き合う際、大切なのは“タイミング”です。カーッと気持ちが高ぶっている最中は、まずは聞き役に徹しておくのが良いと思います。落ち着いてきたタイミングで、ゆっくり一緒に話を整理していくのが効果的です。
Q:保護者の危機感が薄い場合はどうすれば
Q:学校でたびたび問題行動を起こす児童について保護者に連絡をしても、家庭では困っていないようで、なかなか問題意識を持ってもらえません。「これは大変なことだ」と気づいてもらうには、どう働きかけるべきでしょうか?
A:家庭では落ち着いているけれど、学校では癇癪を起こしてしまう…というケースは少なくありません。まずは日頃から保護者とコミュニケーションを取り、「この先生は、うちの子のことをよく見てくれている」という信頼関係を築くことが土台となります。
信頼が深まってきたタイミングで、学校での問題行動を少しずつ共有していきます。
「あの先生が言うことなら…」と耳を傾けてもらえる関係性ができていれば、保護者自身が自然と子どもの状況に目を向け、問題意識を持ってくれることがあります。
Q:子どもの全体像。保護者に気づいてもらうには
Q:子どもの問題を、悪い面だけでなく、良い面も含めた全体像で捉えることが大事だというお話しがありました。保護者自身が自分で子どもの全体像に気づいてもらうのが大事だと思いますが、難しい場合はこちらから具体的な質問をしてもいいですか?
A:はい。こちらからの具体的な問いかけは非常に有効です。保護者の方と一緒に、日常の小さな変化に目を向けてみてください。
たとえば「最近、何かお手伝いしてくれる場面はありましたか?」「冗談が通じるようになってきましたか?」といった質問です。
こうした具体的な問いかけが、保護者が「そういえば、こんな変化もあったな」と、日常に隠れている子どもの成長やポジティブな側面に目を向けるきっかけになります。
先生方からの感想(アンケートより)

セミナーの最後には、今後のセミナーに活かすため、先生方にアンケートにご協力いただきました。
あたたかいメッセージの一部をご紹介します。
- 褒めても響きにくい子への対応が参考になりました。私はすぐ褒めすぎてしまう部分があるので、新学期から意識して実践していきたいと思いました。
- zoom参加でしたが、他県の先生方も同じように悩みながら頑張っていることを感じることができ、元気をもらえました。
- 質問への返答があたたかく、私自身、カウンセリングしてもらえたような気持ちになりました。
お忙しい中、熱心にご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

おわりに
今回のセミナーを通して、保健室の先生方が日々感じておられる悩みや葛藤、そして子どもたちとの大切な関係性について、改めて考える貴重な機会となりました。
淀屋橋心理療法センターでは、これからも現場で役立つ実践的な内容をお届けできるよう、対面・オンラインの両方でセミナーを開催していきたいと思っています。
次回の保健室の先生向けセミナーは 2026年8月18日 を予定しております。
「子どもへの関わり方について、学びたい」「現場の悩みを相談したい」
そんな思いを持つ先生方、ぜひお気軽にご参加ください。
皆さまとお会いできることを、スタッフ一同楽しみにしております。


