【家庭内暴力】親に暴力を振るい土下座させる中学生の女の子

更新日:2026.03.31
【家庭内暴力】親に暴力を振るい土下座させる中学生の女の子

中学1年生の結菜さん(ゆいなさん)は真面目で頑張り屋さん。

学校には休まず通い、部活のテニス部は朝練にも参加しています。習い事のピアノ教室にも、毎週欠かさず通っています。

外ではとても良い子ですが、そんな彼女が、ある時から家の中では別人のようにふるまうようになったのです。

大声で叫んだり、お母さんに暴力を振るったり、些細なことで土下座を強要したりするようになりました。

小学校3年生の弟は八つ当たりされるので怯えています。

親御さんが関わり方を変えたことで、結菜さんがどのように立ち直っていったのかをご覧ください。

この記事の執筆者
カウンセラー:福田俊介(ふくだ しゅんすけ)
福田俊介(ふくだ しゅんすけ)
臨床心理士・公認心理師(国家資格)。家庭内暴力をはじめ、不登校・過食症・リストカットにおいても高い治療成績を上げる。大阪府公立学校スクールカウンセラーとして現場に立ちながら、養護教諭や行政機関の専門職向けに研修・講演も精力的に行っている。

家では母親に暴力、でも外ではいい子

家では母親に暴力、でも外ではいい子:カウンセリング(家庭内暴力)

担任の先生との個人懇談で、先生は結菜さんのことをこう仰いました。

「とても優しくて気遣いができて大人しい子です」

担任の先生はそのように褒めてくれるのですが、お母さんは喜ぶことができません。

なぜなら前日の夜中にお母さんは「出て行け!」と家を結菜さんに追い出されたのです。

その日の晩はネットカフェに泊まりました。

土下座させる娘

土下座させる娘:カウンセリング(家庭内暴力)

結菜さんはもともと優しい子でした。

そんな彼女はある時から、気に入らないことがあるとお母さんに頻繁に土下座を強要するようになりました。

例えば、「ジュース持ってこい」とお母さんに言い、お母さんの手が滑りペットボトルを落としただけで、「お前、土下座しろ」と言うのです。

親が強い姿勢を見せた結果

親が強い姿勢を見せた結果:カウンセリング(家庭内暴力)

ご両親は結菜さんが荒れだした当初、「親に対してその態度はなんなの!」と強く対抗していました。

ところが親御さんが注意すると、二階にあがって自室の物を投げ散らかしたり、大声で叫び続けるのです。

特に深夜だと近所迷惑になるので、親御さんは結菜さんに強く出にくい状況でした。

お母さんに対して暴力を振るっている結菜さんをお父さんが止めに入ると、落ち着くこともあります。

しかし、あとになってお父さんがいない状況になると、「さっきはあいつに邪魔された」と大暴れするのです。

じゃあ、私を殺しなさいよ

ある日も些細なことで、お母さんを殴る蹴るなどしました。

追い詰められたお母さんは、たまらずこう言ったそうです。

「じゃあ、私のことを殺しなさいよ」

「それはむり。私は犯罪者になりたくない」

こんな激しいやり取りもよく起こるのです。

怯える弟…他の家族は?

怯える弟...他の家族は?:カウンセリング(家庭内暴力)

結菜さんが暴力を振るうようになってから、お父さんを強く避けるようになり、お父さんがリビングにやってくると、とても不機嫌になり大荒れします。

また、小学3年生の弟には八つ当たりをするので、お父さんと弟のユウタ君はユウタ君の部屋で過ごし、あまりリビングに出てこないようにしていました。

ユウタ君は「お姉ちゃん怖い」と怯えることもあります。

「本人が来ないと埒が明かないですよ」と言われ…

相談した機関では、「本人が来ないと、どうにもできないですよ」と言われたのですが、だからと言って、本人を相談機関へ連れていこうとしたら、

「私が悪いっていうのか!」

と大暴れするのが分かっている。困った親御さんは本人が来なくてよい、淀屋橋心理療法センターに来所されました。

初回面談「こんな相談はうちの家だけですか?」

初回面談「こんな相談はうちの家だけですか?」:カウンセリング(家庭内暴力)

昨日も夜中に家を出て行かされ、ネットカフェで宿泊したので腰が痛いと仰るお母さん。

「こんな相談はうちだけでしょうか」と聞くご両親に、カウンセラーは「意外とこういう相談は多いですよ」とお伝えすると、少しほっとされた様子でした。

この事例では、カウンセラーが親御さんにお伝えしたアドバイスの一部をご紹介します。

アドバイス1.子どもの機嫌がいい時…

カウンセラー
「子どもが暴力を振るっている時に話を聞くことに一生懸命な親御さんが多いですが、その割に機嫌がいい時の話をしっかり聞けていない親御さんが多いのです。機嫌がいい時の話をしっかりと聞いてあげてください」

お母さん
「そういえば「あれ買ってこい」とか、命令や要求は多いですが、何気ない話はあんまりできていませんでした。でも、うちの娘はあまり雑談をしてくれないのですが」

カウンセラー
「小さなことでもいいのです。何か雑談がありませんか?『このチョコレートおいしい』でも構いません」

お母さん
「そういえば昨日、セブン-イレブンのホットドッグを食べながら、セブンのホットドッグはもちもちしていて揚げたては本当においしいと言っていました」

カウンセラー
「そんな会話で十分です。機嫌のいい時の話をしっかりと聞いてあげてください」

カウンセラーのアドバイス【1】
結菜さんの機嫌がいい時の話をしっかりと聞いてあげる

アドバイス2.〇〇しない

ある日の夕方、「なかなか漢字が覚えられないんだよね」と言ってきた結菜さん。

お母さんはご自身の経験を伝えようと思って、「声に出しながら書いたら早く覚えられると思うよ」

すると結菜さんは「いちいちアドバイスしてくんな」とペンを投げて怒り出しました。

カウンセラー 「おそらく今の結菜さんはアドバイスされると、相手に上から目線で言われているという風に感じて腹が立つのでしょう」

「お家ではアドバイスしないであげてください。学校では人の命令や助言をとても素直に聞いているのでしょうが」

カウンセラーのアドバイス【2】
アドバイスしない

すぐに暴力や暴言が止まることはありません。

お母さんが「本当にこの対応で良くなるんですか?」ととても心配そうに聞いてこられました。

それに対して、カウンセラーが「この方法を続けて下さい」と言うやり取りが何度かありました。

お母さんが結菜さんへの対応を変え、それを続けることで少しずつ変化が出てます。

カウンセリング開始から1カ月半後「ごめんなさい」

カウンセリング開始から1カ月半後「ごめんなさい」:カウンセリング(家庭内暴力)

美味しいお菓子やジュースの話など、何気ないお母さんとの会話が増えてくると、機嫌の良い時間が少し増え、その分、不機嫌な時間が短くなりました。

機嫌の良い時は、「お母さんにもこのチョコレートあげるね」という優しい場面も出てきました。

ただ、不機嫌な時は別人格のようになります。

ある日も、些細なことで「土下座しろ」と言ってきました。その時、お母さんの疲れ果てた様子を見た結菜さんが「ごめんなさい」と言ったのです。

以前だったら「しんどそうなフリするな。私が一番しんどいんだ!」と言ってきたのですが。

これ以降、土下座を要求してくる回数が大きく減ったそうです。

お母さん
「本当にこの方法で娘は良くなるんですか?」

という問いに、

カウンセラー
「はい、これを続けてください」

と返答すると、お母さんは「先生は仰ることがブレませんね」と少し安心したような表情に。

その後、面接室でお父さんが身を乗り出して、「私に何かできることはありませんか?」と聞いてこられました。

「お母さんの話を聞いてあげてください。それが大きな支えになるはずです」というカウンセラーの返答に、「分かりました、そうします」とお父さんが答えました。

お父さんは弟のユウタ君がしんどくならないように、2人で公園やファミレスに出かけるようにされています。

カウンセリング開始から3カ月後 変化が出てきた

カウンセリング開始から3カ月後 変化が出てきた:カウンセリング(家庭内暴力)

ご両親が「娘が変わってきました」と仰います。

この日はご両親が面接室で何度も笑顔を見せて、結菜さんの状況を説明してくだいました。

部活の朝練を休めた

これまで自分に厳しく気を張り詰めた感じだった結菜さんでしたが、自ら朝練を休むということを決断しました。

張り詰めた感じは減り、家でイライラしている様子が少し減りました。

1つで我慢できた

ショッピングモールで洋服を買いに行った時、気に入った洋服が2着ありました。

「2着とも欲しい」と言う結菜さん。

お母さんが「結構高いから1着にしておかない?」と言うと、「わかった」

以前だったらとても不機嫌になり、帰りの車の中で大暴れしたでしょうが、今回はそのようなことは全くありませんでした。

「景色が綺麗だ」と言った

「景色が綺麗だ」と言った:カウンセリング(家庭内暴力)

またショッピングモールの帰り、車内でこう言ったそうです。

「夕焼けがきれいだね」

これまで景色を楽しむ様子はありませんでした。以前より心に余裕がでてきたようです。

カウンセラー 「色々な変化が出てきましたね。暗闇の中でお子さんの良くなったところをしっかりと見といてあげてくださいね」

と伝えると、ご両親は笑顔で頭を下げて面接室を後にされました。

カウンセリング開始から3カ月半後 油断に注意

カウンセリング開始から3カ月半後 油断に注意:カウンセリング(家庭内暴力)

子どもの状態が良くなってくると親は油断するものです。この親御さんも例外ではありません。

お母さんが『育てにくい子への対応』というようなタイトルの本を読んだ後にリビングのソファに置きっぱなしにしていたのです。

その本を見つけた結菜さんが、

「育てにくいって何!?私が変なやつだって言いたいのかよ!」

その本を投げた後に、本棚を倒すと、結菜さんがお母さんに馬乗りになり、髪の毛を引っ張ります。

その怒りはしつこく、何時間もお母さんを責め続けます。

子どもの状態が良くなってきた時に注意しないといけないのは、油断しないことです。

油断した一方で、多くの良い変化も…

油断した一方で、多くの良い変化も...:カウンセリング(家庭内暴力)

お母さん
「私が悪かったんです。本当に油断してました」

肩を落としたお母さん。

カウンセラー
「大変なことは続いていますが、そんな中でも何か良いことは起こっていませんか?」

「特に変わりません」と仰るご両親。

カウンセラーが色んな角度から質問をすると、ご両親が結菜さんの変化に気づかれました。

「そういえば…」とお母さんが話し始めました。

結菜さんが同じテニス部で一緒に遊びに行くこともあるキョウカさんの文句を言い始めたのだそうです。

「あの子、自己中でだるいんだよね」

これまで結菜さんはキョウカさんと仲良しに見えていたので、お母さんがキョウカさんの悪口を聞くのは初めてです。

他には、結菜さんはテニス部に所属していますが、

「部活で来年新入生が入ってきたら、私の言うこと聞いてくれるかな」

と不安も口にするようになりました。

我が子が人の悪口を言うというのは、ネガティブな印象もありますが、結菜さんのように我慢するタイプの人の場合、同級生の文句を言えたというのは、むしろプラスです。

「私に対して本音を言ってくれるようになったのかな」とお母さんはこの変化を意味をちゃんと分かって、喜んでおられました。

他の変化として、大声でわめいたりするのが減ってきました。

また大きな変化は、弟のユウタ君と楽しくゲームをした日がありました。こんな光景は久しぶりです。

カウンセラーが「今回は、本が見つかって大変でしたが、一方でちゃんと良い変化も起こっていますね」と言うと、

お父さんがお母さんの方を向いて、「先生が言って下さったように良い変化が起こっているから、頑張ってみよう」と仰り、次回のカウンセリングの予約を取られました。

カウンセリング開始から4カ月半後

カウンセリング開始から4カ月半後:カウンセリング(家庭内暴力)

ある時、ボソッと結菜さんが言いました。

「私、いつも完璧でいようと思うから疲れるんだよな」

結菜さんが自分のことに気づき、またそれをお母さんに伝えることができました。

結菜さんの状態は以前よりだいぶましになりましたが、今でもまだお母さんに夜中に出て行けと言ったり、叩いたり蹴ったりすることもあります。

長い間、暴力を振るわれているお母さんに聞きました。

カウンセラー
「どうやってご自身の心を保っておられるんですか」

お母さん
「車の中で好きな音楽を聴いたり、スイーツを食べたりしています」

カウンセラー
「いいですね。お母さんの心が折れてしまわないように、楽しいことを続けてください。ご自身の心も、大切に育ててくださいね」

カウンセリング開始から5カ月後

カウンセリング開始から5カ月後:カウンセリング(家庭内暴力)

結菜さんは冬休みに隣の県まで家族とでかけたのですが、部活のえりこ先輩にその時のお土産を渡しました。

えりこ先輩はとても喜んでくれたのですが、その光景を見ていた友達のキョウカさん。

結菜さんに対して否定的な言動が多い彼女が、結菜さんと2人きりの時にこう言ってきました。

「えりこ先輩一人だけにお土産はおかしいんじゃない?他の先輩にもあげないと」

これに対して、 「私はえりこ先輩にすごくお世話になったからお土産をあげたの。全員にお土産買ってくるお金なんてないよ」

以前の結菜さんなら言い返すことができず、溜め込んでしまったことでしょう。

しかし、なんと!

結菜さんが言い返すことができたのです。随分と強くなりました。

この後、「ホントは、キョウカとは前から気が合わないと思ってたんだ」とお母さんに言い、キョウカさんとは距離を取るようになりました。

随分、無理をするということが減ってきました。

無理をするということが減って:カウンセリング(家庭内暴力)

他にも、色々と変化が出てきています。

「土下座しろ!」ということはなくなり、お母さんが家を追い出されてネットカフェに宿泊する頻度も大幅に減ってきました。

また、以前より弟のユウタ君にも優しくなり、キャッキャ言いながらゲームをする日も増えてきました。

以前より弟のユウタ君にも優しくなる:カウンセリング(家庭内暴力)

色んな良い変化は起こっているのですが、暴力・暴言はまだ続きます。

不機嫌になってスマホを投げたり、お母さんの一言が気になって車の中でコーラを撒き散らし、シートがビショビショになったり。

ただ、暴力の頻度が減り、程度は明らかにマシになってきました。

カウンセリング開始から6カ月後

カウンセリング開始から6カ月後:カウンセリング(家庭内暴力)

以前に比べ、暴力・暴言の頻度は大幅に減りました。

ある時お母さんが喜ばれたのは、いつも車の後部座席に座っていた結菜さんが助手席に座ってくるようになったことです。

他にも、結菜さんは美容院に行って髪型を変えてもらったり、服を買ってもらったりして機嫌のいい時が増えてきました。

弟のユウタ君と一緒にYouTubeを見て、楽しく過ごすことも増えてきました。

結菜さんは、

  • お母さんとの楽しい話が増えた
  • 機嫌の良い時間が長くなった
  • 景色が綺麗だと思えるような気持ちの余裕が出てきた
  • 頑張り過ぎから少し降りることができた
  • 相手に言い返すことができるようになった
  • 気が合わない友達とは距離を置くようになった

最後のカウンセリングの日。ご両親は穏やかな表情でした。

最後のカウンセリングの日。ご両親は穏やかな表情。:カウンセリング(家庭内暴力)

「家族全員そろってご飯を食べることができました」と、お母さんが嬉しそうに仰ったのが印象的でした。

その後、「後は自分たちでやっていけそうです」と仰り、カウンセリングは終了となりました。

本当はもう少し通って頂きたかったが…

我々カウンセラーとしては、結菜さんの生きづらさがもっと改善するまでカウンセリングに通って頂きたいのが本音です。

もう少し通って頂いたら、人を上手に頼れるようになったり、自分の状況を上手に説明できるようになったり、不安に強くなったりしたと思われます。

しかし、家庭内暴力の場合、暴力・暴言が大幅に減ると、「あとは自分達でなんとかできそうです」とカウンセリングを卒業される方が多いのが事実です。

「こんな問題はうちの家だけですか?」とよく聞かれます。

それに対する答えは、

「実は似たようなご相談は沢山あるんです」

お子さんの性格に合った対応を続けてあげると、生きづらさが改善し、暴れることもなくなります。ご本人も、今より楽しく生きられるでしょう。

※実際にはもっと細かくアドバイスをしています。
※ご本人、ご家族が特定されないよう、年齢・家族構成・出来事の一部情報を修正するなどプライバシーに十分配慮した上で掲載しております。

▶この他にも、親御さんへのインタビュー記事を公開しております。どうぞご覧ください。
▶家庭内暴力のカウンセリングについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。子どもから親への家庭内暴力

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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