
目次
親御さん向けのカウンセリングで、もっとも残念に思うことがあります。
それは——
お子さんの状態がようやく良くなってきた時、親御さんの気が緩んでしまうこと。
その結果、それまでうまく進んでいたカウンセリングが、急に悪い方向へ転がってしまうのです。
【事例①】 中学3年生の娘さん・リストカットと受験
(仮名:あやかさん)
あるご家庭は、中3の娘さんのリストカットのご相談で淀屋橋心理療法センターに通ってこられました。
カウンセリングを重ねる中で、リストカットの頻度は大きく減少していきました。
そんな中で、親御さんからこんな相談がありました。
「娘が『高校受験をしたくない。通信制高校に行きたい』と言ってます。私たちとしては、まずは全日制高校を受験し、それがしんどくなった時に通信制に変更してほしいのですが…」
カウンセラーの私は伝えました。
「今は6月。まだ時間があります。まずは“全日制に行きたい”という意欲が出てくる可能性に期待しましょう。」
——しかし、7月になっても8月になっても、あやかさんの口からは
「努力したくない」「楽したい」「通信がいい」
といった言葉ばかり。
親御さんは「勉強しなさい」と言いたい気持ちを何度も堪えてくださいました。
そして9月。
文化祭で、ダンスを上手に踊ることができた 翌日。あやかさんがふとこう言いました。
「やっぱり私、受験することにする。頑張ってみようかなって思えてきた」
リストカットも2カ月ほど止まっており、親御さんはとても嬉しそうに報告してくださいました。
私は伝えました。
「ここからが勝負です。くれぐれも油断なさらないように」
親御さんは笑顔で「はい、頑張ります」と言ってくださいました。
ところが——
その2週間後、次回予約のキャンセルの連絡が入りました。理由は「急に仕事が入ったので」とのこと。
それから数カ月後の1月。
急遽、お父さんだけが来所されました。
「年末に娘と妻が激しく揉めて、娘が2週間部屋から出てきませんでした。
ナイフでシーツをズタズタに切っていたようで…。
今は出てくるようになりましたが、もう高校には行かないと言っています」
これが最後の面談になりました。
【事例②】アルバイトを始めた20代男性のケース
高校生の頃から引きこもっていた20代の男性が、カウンセリングを開始して数カ月後、ついに人生初のアルバイトを始めました。
すると、その日を境に親御さんが来所されなくなりました。
数カ月後、再び連絡が入りました。
「息子が人間関係で悩み、バイトを辞めてまた部屋にこもってしまいました…」
チャンスが「近づいてきた時」にこそ、注意が必要です
チャンスがまだ遠くにある時、多くの親御さんは本当に頑張ってくださいます。
しかし、チャンスが“手の届きそうな距離”に来た時、親御さんは2つのタイプに分かれます。
「よし、ここからが正念場!」と気を引き締める親御さん
「なんとかなりそう」と、気を緩めてしまう親御さん
せっかくここまで頑張ってきたのに、最後にチャンスを逃してしまう。
それは本当にもったいないことです。
だからこそ、「油断しないこと」がカギになります
いい兆しが見えてきたとしても、“もう少し”お子さん自身をパワーアップさせなければ、本当の解決や安定にはつながりません。
先ほどの2つの事例はお子さんを成長させきれなかったことから、まるで砂のお城のように波が来たらせき止められず、崩れてしまいました。
私たちカウンセラーは、繰り返しこうお伝えしています。
「ここからが本番です。油断せず、もう一歩だけ頑張りましょう」
それでも、油断してしまうのが人間。
だからこそ、万が一お子さんの状態が悪化した時は、なるべく早い段階で相談にいらしてください。
私たちカウンセラーは、親御さんのなかに「頑張りたい」というお気持ちさえあれば、喜んでお手伝いさせていただきます。
まとめ
カウンセリング成功の秘訣は——
「チャンスが見えた時に、気を抜かないこと」