子どもの心の不調 保健室の先生(養護教諭)はどう向き合う?

子どもの心の不調 保健室の先生(養護教諭)はどう向き合う?

とある学校の保健室 ——

「先生、膝を擦りむきました!」
「なんだか熱っぽくって…」

保健室には、毎日色んな子どもたちがやって来ます。
保健室の先生は、子どもたちが回復するように消毒をしたり、ベッドで休ませたりします。

ケガや体調不良でやって来る子どもたちばかりではありません。
子どもたちが持ってくる問題は、時として複雑で、曖昧なものです。

「教室に入りづらくて…」
「先生、友だちと喧嘩しちゃった…」

薬や絆創膏では治療できない、心の不調を抱えた子どもたち ——

保健室の先生は日々、子どもたちの心の声と向き合われていることでしょう。

そんな先生方のお力になりたい思いで、淀屋橋心理療法センターは、2025年3月29日(土)に保健室の先生向けセミナーを開催しました。
セミナーでは、臨床心理士・福田俊介が、子どもたちの抱える問題に向き合うポイント、保健室の先生にできることなどをお話ししました。

今回はセミナーの一部をご紹介します。

子どもたちの多様な健康課題

子どもたちの多様な健康課題;カウンセリング(保健室の先生)

子どもたちの健康と安全を守る保健室の先生。
児童生徒のケガや体調不良などの応急処置を始め、心のケアも重要な役割のひとつです。

不登校・いじめ・癇癪・自傷行為・摂食障害・ゲーム依存症…
子どもたちの抱える問題は様々で、簡単に解決できるものではありません。

淀屋橋心理療法センターは、このような問題を抱えたお子さんの親御さんからご相談をいただきます。そして、ご本人抜きの親御さんとのカウンセリングにより、お子さんの成長を促し、数々の問題を解決に導いてきました。

セミナーでは、不登校・リストカット・癇癪の問題を抱えたそれぞれの子どもが、どのような過程を経て問題解決に至ったのかをご紹介しました。

  • 周囲ができるアプローチ
  • カウンセラーの具体的なアドバイス

などについては、詳しく記載している過去レポートがございますので、ぜひそちらをご覧ください。本レポートの最後に関連記事としていくつかご紹介しております。

保健室の先生にできること

保健室の先生にできること:カウンセリング(保健室の先生)

保護者や保健室の先生を含む教職員など、周囲の大人のサポートが子どもたちの問題の解決に有力に働きます。

周囲との情報共有

子どもたちの問題の解決を目指すには、子どもたちの状況や心情などの理解を深めることが重要です。
そして、周囲の大人たちの情報共有が円滑で潤沢であるほど、子どもたちへの理解は深まりやすくなります。

セミナーでは、保健室の先生ができる4つの情報共有についてお話ししました。 今回は、そのうちの1つ「成功の共有」をご紹介します。

成功の共有

ここでいう“成功”とは、子どもと接する中で、“この対応がこの子に合っていた”という発見のことです。

例えば、

  • 思い通りにいかないと、よくパニックになるAさん
    Aさんがパニックになったとき、声をかけずに見守っていたら落ち着いた。
  • 自分の気持ちを伝えるのが苦手なBさん
    カーテン越しなど、顔が見えないようにすると、少し話しやすくなった。

など、
その子に合った対応を見つけられた場合は、保護者や他の先生方と共有しましょう。
また、保護者や他の先生方が見つけられた“成功”も共有したいですね。

子どもの周囲の人たちが、普段からこのような情報を共有しておくことで、その子に適した対応をとりやすくなります。子ども自身が過ごしやすい環境が構築されていくと、周りの支援者の心のゆとりにも繋がるでしょう。

臨床心理士・福田俊介によるQ&Aのコーナー

臨床心理士・福田俊介によるQ&Aのコーナー:カウンセリング(保健室の先生)

セミナーの最後は、先生方おひとりずつからのご質問に、臨床心理士・福田俊介が回答いたしました。ここでは、その一部をご紹介します。

子どもの自傷行為、保護者に報告するべき?

Q:生徒がリストカットをしていることがわかりました。保護者はまだ知らないようで、生徒からは「言わないで」と言われていますが、やはり伝えるべきでしょうか?

A:様子を見て、緊急性の高い場合は保護者に報告しましょう。
そうでない場合は、私なら「今回は言わないけど、とても危険な場合や言う必要があると思ったときは言うからね。それは理解してね。」と約束しておきます。そうすることで、子どもたちからの信頼は失いにくくなるでしょう。

保護者と話す時に大事なことは?

Q:生徒の問題に関して保護者と直接お話しする際、何に気をつけて話せば良いでしょうか?

A:親にプレッシャーをかけないように注意しましょう。
子どもの問題を過剰解釈したり、解決を急ぎすぎたりする保護者の場合、子どもに質問攻めをしてしまうこともあります。親が急に動いたからといって、子どもの状況が改善されるわけではありません。親御さんによっては「動きすぎないでください。慎重に対処しましょう。」と忠告するのが良いと思います。

参加者からのお声

参加者からのお声:カウンセリング(保健室の先生)

最後に、治療説明会後にご協力いただいたアンケートより、先生方のお声をいくつかご紹介させていただきます。
このたびは、当センターのセミナーにご参加いただき、貴重なご意見をありがとうございました。

女性

事例では、具体的なエピソードとともに、子どもの経過の様子を知ることができて良かったです。生徒のことを頭に浮かべながら話しが聞けたので、より理解を深めることができました。

女性

健やかな子どもの成長と生活には、保護者の方の関わりがやはり非常に大切だと再認識しました。知らないことも多くありましたが、知っている(経験より薄々そんな気がしていたなどの)ことも言語化してくださったことで、自分の中で整理することができました。

女性

養護教諭としてだけではなく、自分が親になったときに子どもと接する際に気を付けるポイントを学ぶことができました。また4月の新学期に活用していきたいと思います。

セミナーを終えて

セミナーは、参加者の先生方が優しい表情でお話しを聞いてくださり、非常に良い雰囲気で進められました。

また、3月下旬の年度末開催だったため「来年度からも頑張ります」といったお声をたくさんいただきました。大変嬉しく思いますし、新学期が始まり今回のセミナーがお役に立てておりましたら光栄です。

次回の保健室の先生(養護教諭)向け治療説明会は2025年8月5日(火)に開催を予定しております。

その他にも、お子さんの症状別で親御さん向けの治療説明会も定期的に開催しておりますので、ぜひご活用ください。多くの方にお会いできることを楽しみにしております。

開催の日程などの詳しいお知らせは、HPや淀屋橋心理療法センター公式LINEでお知らせいたしますので、登録していただけると便利です。淀屋橋心理療法センター公式LINEでは、その他さまざまな講演会のお知らせや、HP最新記事のお知らせなども配信しております。

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記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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