うつ病と摂食障害(過食症)をカウンセリングで回復し
自分らしさを取り戻した女性の事例

更新日:2025.08.07
うつ病と摂食障害(過食症)をカウンセリングで回復し自分らしさを取り戻した女性の事例

摂食障害である拒食症や過食症に加えて、うつ病を併発し、苦しんでおられる方は少なくありません。
今回ご紹介する事例、22歳のヒロミさん(仮名)も、そのひとり。拒食症から過食症になり、さらにうつ病も患っています。
そんな彼女が、淀屋橋心理療法センターのカウンセリングを通じて、どのように症状を乗り越えていったのか。この記事では、その過程を詳しくお伝えします。
うつ病や過食症の回復の糸口は、もしかしたら、思いがけないところにあるのかもしれません。
実際の事例を紐解きながら、当センターが大切にしている「小さな、小さな変化」を、少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

うつ病と摂食障害(過食症)を併発しカウンセリングに来られた当初

淀屋橋心理療法センターに、親子でカウンセリングに来られたヒロミさん。過食症とうつ病に悩んでいました。

外では明るく振る舞う一方で、家ではあまり笑顔を見せません。まずは、カウンセリング当初の状況から見ていきましょう。

▶うつ病・抑うつ状態の詳しい症状や原因、治療についてはこちら

拒食症から過食症に。家では無愛想でも外ではニコニコ

ヒロミさんは22歳のカフェ店員です。高校生の時に拒食症となり、身長155cm・体重が35kgまで落ちました。

その後、過食症になり、相談に来られた時の体重は55kgです。仕事があった日に過食をする傾向にありますが、「仕事ではあまりストレスを感じない」と言います。

1度の過食費用は2000円程度。親御さんは仕事を辞めるように言いますが、ご本人は辞める気はありません。

当センターに来所される以前から抗うつ薬を服用しています。仕事中に、しんどくなって早退させてもらうことも少なくありません。

「娘は良い格好しいなんです」とお母さん。家ではブスッとしているのですが、外ではニコニコしていることが多いそうです。

ギクシャクしていた母親との関係

「拒食症だった時に、お母さんが嫌そうな目で私を見て、ご飯を勝手に大盛りにした時があったんです」

とヒロミさん。

それ以来、お母さんとの仲はギクシャクしていました。

しかし、最近になって信頼している知人から「親とは仲良くした方が良いよ」と言われたことが響き、以前よりお母さんとの会話が少し増えてきていました。

カウンセリングで母親との関係が変化し、過食症が改善

淀屋橋心理療法センターに親子で通いだされてから、ヒロミさんの方からドライブに誘うなど、お母さんにだんだんと心を開くようになってきました。

また、職場でのストレスへの対処が上手になり、落ち込むことが減っていきました。その結果、過食の頻度と量が徐々に減少し、最後は過食がなくなったのです。

治療の成果を出す上で、タイミングはとても大事です。ヒロミさん親子は良い時期に相談に来られ、チャンスを掴まれました。

ヒロミさんがどのように変わっていかれたのか、より具体的に見ていきましょう。

変化①:お母さんに甘えてくるようになった

カウンセラーは、お母さんに過食症のヒロミさんと接する上での「コツ」のヒロミさんと接する上での「コツ」をお伝えしました。
以前は、職場のカフェから帰宅すると「ただいま」も言わず、自室で過ごすことが多かったヒロミさん。

お母さんがカウンセラーのアドバイス通りに接し方を変えると、徐々にリビングにやってくる時間が増えてきました。その後、親御さんの近くでゴロゴロするようにもなりました。

さらに数週間が経過。ヒロミさんがお母さんの肩に頭を置いたり、甘えてくる時も出て来るようになりました。以前の親御さんを避けている様子とは随分と変わってきました。

変化②:お母さんに自分の気持ちをよく話すようになった

「『ただいま』と、家族の顔を見て言ってくれるようになりました」

「ドライブに誘ってくれました」

と、お母さんが報告して下さいました。ドライブの時に会話が盛り上がりました。
ヒロミさんがお母さんによくしゃべったのは、数年ぶりのことのことです。

「(職場の)吉田さんってメッチャ面白い人で、仕事の帰り道で〜〜〜〜〜〜〜〜」

「こないだ高校の同級生のカナと久しぶりに会ったら、カナの雰囲気がメッチャ変わっていて〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

ヒロミさんの口数がとても増えたので、

「話を聞いていると、その場面が想像できるようになってきました。」

と、お母さんが驚いた表情をされました。

カウンセリングによって、お母さんが接し方のコツを身に付けたことで、ヒロミさん自身も気づいていないうちに、発言や態度に大きな変化が表れたのです。

変化③:「怒り」の感情を出せるようになってきた

ヒロミさんが、お母さんとお出かけすることも増えてきました。ある日、ショッピングモールに向かう途中、電車のホームで中年の男性とぶつかったヒロミさん。

その男性に聞こえない距離になると、

「めっちゃムカつく!なんなん!」

これまで家の外では怒りを出さなかったヒロミさん。「おやっ、今までとは違う」とお母さんは思われたそうです。

摂食障害の方は「嫌なことをNOと断れない」、「不満を態度で示せても、口に出すことが難しい」、「相手に気を遣いすぎる」など、根底にご本人も気づいていない“人間関係の生きづらさ”を抱えておられることが多々あります。

ヒロミさんも、外では周りにあわせてニコニコしていました。そんな彼女が怒りを露わにしたことは、抱えていた生きづらさを乗り越え始めたサインと言えます。

うつ症状・過食状態からの回復とストレス対処の変化

ヒロミさんの内面に、さらに変化が訪れます。それは、ストレスとの向き合い方です。過食症状だけでなく、彼女の生き方そのものが力強く変わっていく様子をご紹介します。

変化④:怒りを発散するようになった

職場のカフェから帰って来て、落ち込んでいたヒロミさん。こんな時は職場で何かがあった時です。

ところが、この頃から彼女に変化が見られます。落ち込むことが大幅に減ってきました。むしろ怒っているのです。

お母さん、ちょっと聞いて

「今日は日曜でお店が混んでるのに、メッチャせっかちな客が来て、早く持ってこい、早く持ってこいってホンマにうざかってん!

散々、文句を言った後で、

あースッキリした

嫌なことがあった時に、ひとりで抱えて落ち込むのではなく、人に話してスッキリするという形に変わってきました。

変化⑤:無理して人に合わせなくなってきた

以前は仕事の休憩中に無理して会話に入ろうと緊張していたヒロミさんでしたが、この頃になると、だいぶ無理をすることが減ってきました。

「最近は会話の輪の中に入らなくてもいいや。私は自分で楽しんでおこうって」

とヒロミさん。

また、「最近はアクティブに生きたいと思ってるんです。趣味をメッチャ探してます!」

と話す彼女の目に、力がこもってきました。

変化⑥:苦手な人との関わり方も上手に

ヒロミさんは、職場の40代の女性店員が苦手です。悪い人ではないのですが、話しが長く、冗談が多いのです。加えて、その冗談が面白くないのがヒロミさんを苦しめました。

これまでは「相手を不快にさせてはいけない」と、ヒロミさんは相づちを打ったり、笑ったり、相手が期待するリアクションを懸命に続けていました。

それがこの頃には、
「本当に面白い時だけ笑ってます。相手をするのが面倒な時は忙しそうなフリをしてるんで」

と、ニヤリと笑いました。

また、テニスサークルに入ったことも伝えてくれました。ヒロミさんの顔は少し細くなり、お化粧もバッチリ。服装もお洒落で、見違えるように綺麗になられました。

うつ病・過食症を乗り越え、カウンセリング治療終了

カウンセリング治療を終えた時の、ヒロミさんとカウンセラーの会話を紹介します。

ヒロミさん:「先生、また過食しちゃいました〜」

カウンセラー:「3食以外で何を食べたんですか?」

ヒロミさん「土曜日は夕飯の後にエクレアとミルク。日曜日は夕飯の後に、おにぎりとみそ汁です」

カウンセラー:「それで体重は増えましたか?」

ヒロミさん:「増えてないです」

カウンセラー:「なるほど。過食した物は美味しいと感じることなく、無理矢理口の中に押し込んだんでしょうか?」

ヒロミさん:「いや…美味しかったです」

隣りで聞いておられたお母さんが、私の方を見ておっしゃいました。

お母さん:「先生、それって過食なんですか?私が見ている限り、普通の“おやつ”という感じですが」

カウンセラー:「たしかに、おやつという感じですね」

と、カウンセラーが答えると、ヒロミさんがハッとした表情をされました。

カウンセラー:「それで過食なら、深夜のラーメン屋が好きな私はどうなるんだ」

とカウンセラーが続けると、ヒロミさん、お母さん、カウンセラー、3人の間に笑いが広がりました。順調に回復されたヒロミさん。この日が最後の面接になりました。

半年後、ヒロミさんからメールで連絡がきました。その後は過食はなく、抗うつ薬も必要なくなったそうです。

うつ病・過食症の克服に必要な「安心できる場所」と「自分らしい生き方」

この記事では、うつ病と過食症を克服したヒロミさんの事例を紹介しました。ヒロミさんは、生きづらさを感じた時に過食に訴えるのではなく、

・不満をお母さんに話す
・どうしたいか、自分の気持ちを大切にする

など、自分なりの方法で上手にストレスを逃がせるようになったのです。とはいえ、ここに至るまでには、親御さんの地道な努力がありました。

ヒロミさんのお母さんのように、子どもにとって「何を言っても、どんな自分を見せても大丈夫」と思える「安心できる場所」になること。

そのための努力が、子どもが自分の意思を大切にし、自分らしく生きようと成長する一歩へと繋がっていきます。

まさに今、親子の会話がなかったり、会話があってもうまく続かなかったり、悩んでおられる親御さんも多いのではないでしょうか。

淀屋橋心理療法センターのカウンセリングでは、親子の会話を通して、少しずつ親御さんが「対応のコツ」を身に付けられるよう専門的なアドバイスを行っています。

お子さんひとり一人によって、対応も異なります。当センターでは、カウンセラーがお子さんの性格を見極め、その子にあった対応をご提案できます。

うつ病や摂食障害をお持ちのお子さんがいらっしゃる方、お子さんとの関わり方で気になること、悩みを抱えておられる親御さんは、ぜひ一度当センターへご相談ください。

「うつ病」について、もっと詳しくお知りになりたい方へ
うつ病・抑うつ状態・の全体像(症状・原因・治療法)や、当センターの「薬を使わずに治す」治療について、こちらのページで詳しく解説しています。あわせてご覧になってみてください。

淀屋橋心理療法センターでは、不定期に「治療説明会」を開催しております。カウンセリングが初めてで「いきなり相談は不安」「どのように治療を進めるの?」などとお考えの場合は、治療説明会もどうぞご検討ください。

最新の治療説明会の日程は、トップページからご確認いただけます。

*この記事は、当センターにご相談に来られた複数のケースを基に書いており、個人が特定されないようにしております。

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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