うつ回復を支える家族の関わり
相談する力と心の軸の育て方を学ぶ

更新日:2025.12.29
うつ回復を支える家族の関わり相談する力と心の軸の育て方を学ぶ

2025年11月4日、淀屋橋心理療法センターで「うつでお悩みのご本人を支えたい親御さん・配偶者向けの治療説明会」が開催されました。

講師は当センター所長で精神科医・福田俊一、臨床心理士・福田俊介。

参加された親御さんは、緊張した面持ちの方も多く、会場には静かな緊張感が漂っていました。

うつ回復に必要な「相談する力」|講師自身の体験から学ぶ

うつ回復に必要な「相談する力」|講師自身の体験から学ぶ:カウンセリング(うつ)

臨床心理士・福田俊介は、自身の学生時代の経験をもとに「悩みを抱え込まずに誰かに相談する力」の大切さを語りました。

受験期、難易度の高い塾の授業についていけず、勉強が一気につらくなったこと。
高校には合格できたものの、「あの時、親に素直に“しんどい”と言えていれば、また違った向き合い方ができたかもしれない」と振り返ります。

福田はその経験から、「気持ちを誰かに打ち明けることは、自分を支える力につながる」と話しました。

うつからの回復の入り口として、この“相談する力”はとても重要な要素になります。

家族の関わりが支える“成長” — 実際に改善したケースより

家族の関わりが支える“成長” — 実際に改善したケースより:カウンセリング(うつ)

臨床心理士・福田俊介は、実際にうつからの回復に向かった事例を紹介しながら、家族の関わりが本人の成長にどう影響するかを解説しました。

そのうちのひとつをご紹介します。

進学校に在籍し、好きなことには頑張れる優しいお子さんのケース

進学校に合格するほど能力が高く、好きなことには集中して打ち込める優しい高校生。しかし、興味の有無による意欲の差が極端で、親御さんは心配されていました。

やがて遅刻や欠席が増え、留年の危機に。親御さんは「勉強しないと留年するよ」と正論を言いますが、その言葉はお子さんには重く、かえって元気を奪っていきました。

体調不良を訴えるお子さんに、心療内科を勧めても「僕は病気じゃない」と強く抵抗します。困り果てた親御さんが当センターに来られました。

臨床心理士・福田俊介が最初に伝えたのは「正論を減らす」「浅い意見を否定しない」「楽しい話はそのまま受け止める」という、力を抜いた関わり方でした。

親御さんがこの関わり方を丁寧に続けるうちに、お子さんは少しずつ心を開き、表情や話し方は安定していきました。

親御さんも「本当に相談してよかった」と喜ばれていました。

「元気」の回復と「成長」の違い

しかし、心が安定してきた矢先にお子さんは再び学校を休んでしまいます。深く落ち込む親御さんに対し、臨床心理士・福田俊介は次のように説明しました。

「お子さんは元気にはなってきています。でも、まだ“成長”の部分が追いついていないんです。」

ここで言う「成長」とは、

  • 周りの目が前ほど気にならなくなる
  • 無理しすぎず、自分のペースを守れるようになる
  • 苦手だった「NO」が言えるようになる

といった“心の扱い方”が身についていくことです。

そして福田は、「成長したお子さんが幼くはならないんです。できるようになった力は、例え落ち込むことがあっても消えません」という言葉は、親御さんにとって大きな安心となったのではないかと思います。

この親御さんの関わりの積み重ねが、お子さんの「困ったときに人に相談する力」を育てる土台にもなっていきます。

うつからの脱却は心の軸の成長にヒントがある

うつからの脱却は心の軸の成長にヒントがある:カウンセリング(うつ)

説明会の後半では、精神科医師・福田俊一が「心の軸」を育てるための視点についてお話ししました。

「自信のない状態で無理に外の世界に出ることは、かえって逆効果になることがあり、だからこそうつの回復では、行動を促す前に “自分の心の軸” を育てることが大切」とのこと。

お医者さんって、つい“完璧な人”というイメージを持ってしまいがちですよね。でも、実際には自信がぐらつく場面がどんな人にも訪れます。

精神科医師・福田俊一も、若い頃に大阪梅田の大きな書店で膨大な本を前に「これだけ読まなあかんのか!?」と圧倒され、周囲が立派に見えて落ち込んだことがあると、周囲が立派に見えて気落ちした当時のエピソードを紹介していました。

「これだけ読まなあかんのか!?」と圧倒され、周囲が立派に見えて落ち込んだことがある:カウンセリング(うつ)

心の軸とは?

心の軸とは、「これは好き」「これは嫌い」と自分の感覚で言える力。

この力が育てば、周囲の目や評価に振り回されにくくなります。

精神科医師・福田俊一より、「無理に外へ出さなくても、家庭での会話の中で気持ちを話せる時間があるだけで、自然と心の軸は育っていく」との説明がありました。

心の軸を育てる視点

精神科医師・福田俊一は、うつの方には「自分のペースを大切にする傾向」「意志をしっかり持ち、一度決めたことを大事にする特徴」「こだわりを持って取り組む力」などが見られると説明しました。

これらは、一見すると頑固に見えたり、人の助言を受け入れにくいように感じられることもありますが、本人の強みとして活かせる部分でもあります。

さらに「うつになりやすい人は、自分の“操縦方法”がわからないことが多く、自分をどう扱えばいいかわからないことが苦しさにつながる」と指摘します。

では、どうすれば心の軸はうまく育っていくのでしょうか?

鍵となるのは「日常の小さな能動性」です。「受け身にさせず、自分から動く力を支えることこそ、心の軸を育てる第一歩です」と福田は語ります。

ここで言う“日常の小さな能動性”とは、大きな行動力ではなく、日々の中で自分で小さな選択をする力を指します。

Q&A — 家族から寄せられた切実なご質問

Q&A — 家族から寄せられた切実なご質問:カウンセリング(うつ)

説明会では、うつ回復を支える親御さんから、さまざまなご質問が寄せられました。

睡眠に関する疑問

Q. 子どもが悪夢を見て眠れず、朝方に寝る生活が続いています。どうすれば良いでしょうか?

A.(精神科医・福田俊一の回答)

お子さんが悪夢を見たときに、「夢でよかったね」といった軽い言葉だけでは、あまり安心できないことがあります。

今のお子さんは、以前の生活や自分のあり方に変化が起きていて、少しずつ「新しい自分」を見つけようとしている時期かもしれません。

そんなときは、無理に慰めるよりも、お子さん自身が感じていることや考えていることを、自然に話せるようにゆっくり聞いてあげることが大切です。

その他、個別にご相談の多かったお悩み

説明会では、下記のような深いお悩みについても、具体的な対応や関わりの工夫をお伝えしました。

  • 子どもが不登校になっています。学校の話をどう進めるべきでしょうか?
  • ゲーム依存による夜中のトラブルと、その後どのように適切な対応をすればいいでしょうか?
  • 子どもから発せられる「死にたい」といった言葉に、どういった最善の返し方がありますか?

「どう接すればいいかわからない」「このまま悪化しないか不安」そのような方は、ぜひ一度ご相談ください。

お子さんやご家族の状況を丁寧にお聞きし、回復に向かうための方法を個別にお伝えします。

薬に頼らず、心を育てる支援

薬に頼らず、心を育てる支援:カウンセリング(うつ)

精神科医として長年の臨床を重ねる中で、福田俊一は「薬だけでは、本質的な回復にはつながらない」という確かな実感を持っています。

薬は症状を一時的に和らげるもの。
当センターでは、親御さんとの“会話の精度”を高めることで、ご本人の内側にある力を引き出すことを大切にしています。

質の高い対話の積み重ねが、「自分で自分を支えられる力(心の軸)」を育て、薬に頼らない回復へとつながると考えています。

全く薬を使わない治療ーカウンセリングー

うつ回復の鍵は“支える家族のまなざし” ― 説明会を終えて

うつ回復の鍵は“支える家族のまなざし” ― 説明会を終えて:カウンセリング(うつ)

今回の説明会を通して、ご家族の関わりがご本人の“相談する力”を育て、やがて“心の軸”の形成へとつながる回復の流れを、改めて共有することができました。

講師の体験談や専門的な視点は、参加された親御さんに「私たちも変われる」という安心と希望を届けられたのではないかと思います。

焦らず、小さな変化を見守る。
この温かい家族のまなざしこそが、当センターが大切にしている “薬に頼らず、心を育てる支援”の根本であり、確かな道筋であることを深く感じられる説明会でした。

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記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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