
2025年11月4日、淀屋橋心理療法センターで「うつでお悩みのご本人を支えたい親御さん・配偶者向けの治療説明会」が開催されました。
講師は当センター所長で精神科医・福田俊一、臨床心理士・福田俊介。
参加された親御さんは、緊張した面持ちの方も多く、会場には静かな緊張感が漂っていました。
うつ回復に必要な「相談する力」|講師自身の体験から学ぶ

臨床心理士・福田俊介は、自身の学生時代の経験をもとに「悩みを抱え込まずに誰かに相談する力」の大切さを語りました。
受験期、難易度の高い塾の授業についていけず、勉強が一気につらくなったこと。
高校には合格できたものの、「あの時、親に素直に“しんどい”と言えていれば、また違った向き合い方ができたかもしれない」と振り返ります。
福田はその経験から、「気持ちを誰かに打ち明けることは、自分を支える力につながる」と話しました。
うつからの回復の入り口として、この“相談する力”はとても重要な要素になります。
家族の関わりが支える“成長” — 実際に改善したケースより

臨床心理士・福田俊介は、実際にうつからの回復に向かった事例を紹介しながら、家族の関わりが本人の成長にどう影響するかを解説しました。
そのうちのひとつをご紹介します。
進学校に在籍し、好きなことには頑張れる優しいお子さんのケース
進学校に合格するほど能力が高く、好きなことには集中して打ち込める優しい高校生。しかし、興味の有無による意欲の差が極端で、親御さんは心配されていました。
やがて遅刻や欠席が増え、留年の危機に。親御さんは「勉強しないと留年するよ」と正論を言いますが、その言葉はお子さんには重く、かえって元気を奪っていきました。
体調不良を訴えるお子さんに、心療内科を勧めても「僕は病気じゃない」と強く抵抗します。困り果てた親御さんが当センターに来られました。
臨床心理士・福田俊介が最初に伝えたのは「正論を減らす」「浅い意見を否定しない」「楽しい話はそのまま受け止める」という、力を抜いた関わり方でした。
親御さんがこの関わり方を丁寧に続けるうちに、お子さんは少しずつ心を開き、表情や話し方は安定していきました。
親御さんも「本当に相談してよかった」と喜ばれていました。
「元気」の回復と「成長」の違い
しかし、心が安定してきた矢先にお子さんは再び学校を休んでしまいます。深く落ち込む親御さんに対し、臨床心理士・福田俊介は次のように説明しました。
「お子さんは元気にはなってきています。でも、まだ“成長”の部分が追いついていないんです。」
ここで言う「成長」とは、
- 周りの目が前ほど気にならなくなる
- 無理しすぎず、自分のペースを守れるようになる
- 苦手だった「NO」が言えるようになる
といった“心の扱い方”が身についていくことです。
そして福田は、「成長したお子さんが幼くはならないんです。できるようになった力は、例え落ち込むことがあっても消えません」という言葉は、親御さんにとって大きな安心となったのではないかと思います。
この親御さんの関わりの積み重ねが、お子さんの「困ったときに人に相談する力」を育てる土台にもなっていきます。
うつからの脱却は心の軸の成長にヒントがある

説明会の後半では、精神科医師・福田俊一が「心の軸」を育てるための視点についてお話ししました。
「自信のない状態で無理に外の世界に出ることは、かえって逆効果になることがあり、だからこそうつの回復では、行動を促す前に “自分の心の軸” を育てることが大切」とのこと。
お医者さんって、つい“完璧な人”というイメージを持ってしまいがちですよね。でも、実際には自信がぐらつく場面がどんな人にも訪れます。
精神科医師・福田俊一も、若い頃に大阪梅田の大きな書店で膨大な本を前に「これだけ読まなあかんのか!?」と圧倒され、周囲が立派に見えて落ち込んだことがあると、周囲が立派に見えて気落ちした当時のエピソードを紹介していました。

心の軸とは?
心の軸とは、「これは好き」「これは嫌い」と自分の感覚で言える力。
この力が育てば、周囲の目や評価に振り回されにくくなります。
精神科医師・福田俊一より、「無理に外へ出さなくても、家庭での会話の中で気持ちを話せる時間があるだけで、自然と心の軸は育っていく」との説明がありました。
心の軸を育てる視点
精神科医師・福田俊一は、うつの方には「自分のペースを大切にする傾向」「意志をしっかり持ち、一度決めたことを大事にする特徴」「こだわりを持って取り組む力」などが見られると説明しました。
これらは、一見すると頑固に見えたり、人の助言を受け入れにくいように感じられることもありますが、本人の強みとして活かせる部分でもあります。
さらに「うつになりやすい人は、自分の“操縦方法”がわからないことが多く、自分をどう扱えばいいかわからないことが苦しさにつながる」と指摘します。
では、どうすれば心の軸はうまく育っていくのでしょうか?
鍵となるのは「日常の小さな能動性」です。「受け身にさせず、自分から動く力を支えることこそ、心の軸を育てる第一歩です」と福田は語ります。
ここで言う“日常の小さな能動性”とは、大きな行動力ではなく、日々の中で自分で小さな選択をする力を指します。
Q&A — 家族から寄せられた切実なご質問

説明会では、うつ回復を支える親御さんから、さまざまなご質問が寄せられました。
睡眠に関する疑問
Q. 子どもが悪夢を見て眠れず、朝方に寝る生活が続いています。どうすれば良いでしょうか?
A.(精神科医・福田俊一の回答)
お子さんが悪夢を見たときに、「夢でよかったね」といった軽い言葉だけでは、あまり安心できないことがあります。
今のお子さんは、以前の生活や自分のあり方に変化が起きていて、少しずつ「新しい自分」を見つけようとしている時期かもしれません。
そんなときは、無理に慰めるよりも、お子さん自身が感じていることや考えていることを、自然に話せるようにゆっくり聞いてあげることが大切です。
その他、個別にご相談の多かったお悩み
説明会では、下記のような深いお悩みについても、具体的な対応や関わりの工夫をお伝えしました。
- 子どもが不登校になっています。学校の話をどう進めるべきでしょうか?
- ゲーム依存による夜中のトラブルと、その後どのように適切な対応をすればいいでしょうか?
- 子どもから発せられる「死にたい」といった言葉に、どういった最善の返し方がありますか?
「どう接すればいいかわからない」「このまま悪化しないか不安」そのような方は、ぜひ一度ご相談ください。
お子さんやご家族の状況を丁寧にお聞きし、回復に向かうための方法を個別にお伝えします。
薬に頼らず、心を育てる支援

精神科医として長年の臨床を重ねる中で、福田俊一は「薬だけでは、本質的な回復にはつながらない」という確かな実感を持っています。
薬は症状を一時的に和らげるもの。
当センターでは、親御さんとの“会話の精度”を高めることで、ご本人の内側にある力を引き出すことを大切にしています。
質の高い対話の積み重ねが、「自分で自分を支えられる力(心の軸)」を育て、薬に頼らない回復へとつながると考えています。
全く薬を使わない治療ーカウンセリングー
うつ回復の鍵は“支える家族のまなざし” ― 説明会を終えて

今回の説明会を通して、ご家族の関わりがご本人の“相談する力”を育て、やがて“心の軸”の形成へとつながる回復の流れを、改めて共有することができました。
講師の体験談や専門的な視点は、参加された親御さんに「私たちも変われる」という安心と希望を届けられたのではないかと思います。
焦らず、小さな変化を見守る。
この温かい家族のまなざしこそが、当センターが大切にしている “薬に頼らず、心を育てる支援”の根本であり、確かな道筋であることを深く感じられる説明会でした。
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