癇癪(かんしゃく)エピソード:小2の頃から、とても激しい癇癪を起こすようになったユナちゃん (仮名)

癇癪(かんしゃく)エピソード
小2の頃から、とても激しい癇癪を
起こすようになったユナちゃん (仮名)
元々は、パパママが大好きで、
よくお出かけもしていたユナちゃん
小学校二年生の頃から
とても激しい癇癪を起こすようになり、
学校にも行かなくなりました。
自室からもあまり出て来ず、
明るく子どもらしい面も見せなくなりました。
家では我がまま放題で親御さんをとても困らせるのに、
家の外では、別人の様に自分を抑え、
大人しい振る舞いをしているようです。

【当センターに来所される前の親御さんは・・・】
周囲の人たちからの
「甘やかしちゃダメ!」 「しっかりとしつけましょう」
というアドバイスどおり、
ユナちゃんの要求は、 あまりのまないようにしていました。
また、かんしゃくを起こしているユナちゃんと
話し合いをしようとしますが、
頭に血が昇っているユナちゃんに
親御さんの声は届いていないようです。
専門書を読み、
「○○しようねー」 「○○をするのはやめようねー」
と、優しく声かけを続けてもうまくいきません。 【親御さんが当センターに初めて来所された頃】
ご両親はとても疲れ切った様子でした。
ユナちゃんは深夜や早朝であっても、
「チョコレートが食べたい、今すぐ買ってこい!」
などと要求してきます。
親御さんが「もう遅いから明日にしよう」と
ユナちゃんの要求を優しく断っても、
小さな体全身を使って、声を振り絞り、
「わ〜!! ぎゃ〜!!」と何時間でも泣き叫びます。
体は小さいですが、 ものすごい迫力です。
近所迷惑になることもあり、 親御さんがそれに折れて、
深夜にコンビニまで行ってチョコレートを買ってきてあげても、
「ありがとう」さえも言わずにぶんどってしまいます。
また、 とても気難しく、 些細なことでも急に怒りのスイッチが入るので、
親御さんはユナちゃんが急に怒り出すのでいつもハラハラ緊張状態。
例えば、冷蔵庫の上のほうに置いてあったプリンを、
ユナちゃんが取りやすいようにと、
お父さんが冷蔵庫の低い位置に移動させておくと、
ユナちゃんは感謝するのではなく、
「私のプリンを勝手に移動させた! 触るな!」 と、
それだけのことでも癇癪を起こし、30分泣き続けるのです。
お母さんは途中でカウンセリングに来る気力がなくなってしまい、
家で寝込んだ状態。
お父さんは徐々に頬がこけていきました。
目が充血しているのは、
おそらく十分に睡眠が取れていないのだろうと思われました。
Aちゃんの癇癪になす術がなく、 途方に暮れている様子のご両親・・・
しかし! 治療を開始して5週間経った頃、
ユナちゃんに少しずつ変化が現れ始めました
大きな変化
変化はまだありません
中くらいの変化
変化はまだありません
小さな変化
はじめは、
ここに変化が現れます!

癇癪を起こしてでも
自分の意見を押し通していた
ユナちゃんに
柔軟性が出てきました。

親御さんがユナちゃんの要求に折れて、
深夜や早朝であっても
要求してきたお菓子を渡してあげると、
笑顔で「ありがとう」と言うように
頼みごとをしてきたユナちゃんに対して
「今はもう遅いから、明日にしない?」
と親御さんが言うと、
「わかった、じゃあ明日買ってきてね」
という返事が返ってくる日も出てきました
布団の上で楽しそうに
飛び跳ねるようになった
「チョコレート買ってきてくれない?」
と頼み方が少し柔らかくなってきました
不機嫌な時間が短くなり、
3人でケーキを食べているときに
「パパとママと三人でお茶してい
る時間めっちゃ楽しい♪」 と言う
以前のような
子供らしい明るい様子が
増えてきました

一見、ほんの些細なことに見えるでしょう。
ですが、ユナちゃんの性格をよく知る
お母さんにとっては、
「ウチの子がこんなことできるようになるなんて!」 と、
びっくりされるような変化が現れ始めたのです。 明らかに良い変化が現れ始めたユナちゃん
それを見て、親御さんは・・・
いままでのユナだったら、こんな風に
優しい言い方で何かを頼んできたり、
私たちの前で楽しそうに振る舞うなんて
ありえませんでした!
ユナちゃんが癇癪を起こしても、
ご両親が根気強く、ユナちゃんの性格に合った
対応を続けられた成果が現れ始めましたね!
正直、この1年、癇癪を起こしてばかりのユナを
可愛いと思えることがありませんでした。
でも、最近は、娘がとても可愛いんです!
そうなんですね!
ふとした時に、
ユナの方から手を繋いできたり、
楽しそうにしているユナと一緒にいることが
私自身とても楽しいんです。
私も、“手がかかって大変な子” としか思えない
期間が長く、「なんてひどい母親だ」と悩んだ時
期がありましたが、最近は心から可愛い愛しい
と思える様になってきました。
素晴らしいですね!
そう言っていただけて、 私もとても嬉しいです。 POINT !
このような小さな良い変化を
積み重ねていくことで、
ユナちゃんから少しずつ癇癪が減り、
物事を柔軟に考えられるようになることへ
つながっていきました。
癇癪に耐えながら、
お子さんの性格にぴったり合った対応を続けられることは
本当に大変なことです。
ですが、根気強く続けていれば、
必ずお子さんに良い変化は現れ始めます!
あきらめず、油断せず、 根気強く続けることが、
癇癪の治療には不可欠なのです。

2023.07.19  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊介 原田友美

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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