【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.5 断る勇気が持てた!卒業に至るまで

更新日:2025.11.14
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.5 断る勇気が持てた!卒業に至るまで

過食症になった娘(紗月さん)とお母さんが二人三脚(カウンセラー含め三人四脚!?)で乗り越えたカウンセリング治療体験手記 最終章。

コロナや紗月さんの口撃など、日々変化する状況に柔軟に対応していったお母さん。
少しずつ、何でも話してくれる良い関係を紗月さんと築けてきて、このまま少しずつ良くなっていくのかと思いきや、突然始まる紗月さんの隠れ食べ(家族に隠れて過食)。

その時、お母さんは・・・。

ピンチに次ぐピンチを乗り越えて、『母と娘で乗り越えた過食症体験手記』ついに完結です!

【登場人物】

紗月さん:カウンセリング(摂食障害)

紗月さん

過食症に悩む20代の女性
会社員をしながら小説を書いている

お母さん:カウンセリング(摂食障害)

お母さん

紗月さんの母親
紗月さんの過食症をなんとか治したくて、
淀屋橋心理療法センターへ相談する

俊介先生:カウンセリング(摂食障害)

俊介先生

淀屋橋心理療法センターのカウンセラー(臨床心理士)

Vol.4 親子和気あいあいは、以下からお読みください。

Vol.4 親子和気あいあい:カウンセリング(摂食障害)

過食の再発

過食の再発:カウンセリング(摂食障害)

たくさんのピンチを乗り越えて、なんでも話してくれる良い関係を少しずつ築けてきていました。「もう体型のことなんか気にならへん」と紗月自身が言えるくらい、体型へのこだわりが弱まり、過食も落ち着いてきました。

このまま少しずつ良くなっていくのかなと思っていた矢先、突然始まる紗月の隠れ食べ・・・。

私が油断して家に置いていたもの(パン・菓子・おかずの残りなど)をたまたま見つけて、「少しだけ・・・」と食べ始めたのがきっかけだったようです。

ちびちびと食べはじめると止まらなくなり、結局全部食べ尽くしてしまう。
食べてしまった後はとても後悔するのですが、その後もなかなか止められず。
隠れて過食しては後悔するという、静かな過食が一か月くらい続きました。

気持ちの切り替えチャンネル

気持ちの切り替えチャンネル:カウンセリング(摂食障害)

2月頃、たまたま紗月と私の休みが合った日。
頻繁に台所に出入りする紗月に気付き、声をかけました。

私:今日はどうしたの?台所ばっかり行ってるやんか。

紗月:・・・書けへんねん。

私:ストーリーが?

紗月:いや、それはできてる。けど、文章にできひん。

私:え?ストーリーはできてるのに?

紗月:うん。1行書くのに半日かかる。いや、1日かかる時もある。
私の小説が、いざ本になるって思うと、これが世に出るって思うと、
書いてる文章が全部違う気がしてくる・・・。

そんな打ち明け話しを紗月はしてくれました。

次の日、
「ちょっと気分を変えて、 スマホゲームやってみた。お母さん、あとで一緒にやろう」
そう紗月の方から誘ってきたので、一緒にやってみました。

紗月にとって、ゲームが丁度良い気分転換になったようで、その後も、ゲームで気を取り直しては、小説を書くということが増えました。

ゲームで気を取り直しては、小説を書くということが増えました:カウンセリング(摂食障害)

俊介先生からのアドバイス「気持ちの切り替えチャンネルはたくさんあった方がいい」というのはこういうことなのかな?と、ゲームで気分転換をしては小説に向き合う紗月を見て、実感するのでした。

俊介先生からのアドバイス「気持ちの切り替えチャンネルはたくさんあった方がいい」:カウンセリング(摂食障害)

紗月が何かにつまづき、そこから立ち直る度に、気持ちの切り替えチャンネルは増えていきました。
“推し”も何人か変わって・・・。
こういうことがすごく大事なのだということも、淀屋橋心理療法センターで学ばせていただきました。

娘の新しい一面との出会い

娘の新しい一面との出会い:カウンセリング(摂食障害)

正直、紗月の話しをしっかりと上手に聞いてあげるのは難しい。

紗月が楽しそうに話してくれると、母もたくさん話したくなってしまいます。
でも、私がうっかり喋りすぎてしまうと、紗月は自分が話すのをやめてしまう。
話す分量のバランスって、本当に難しい。

私の紗月への対応については、カウンセリング時に俊介先生からフィードバック(添削)をしてもらうことで、自分の対応のクセを把握して、少しずつ改善することができました。本当に助かりました。

また、「会話のどんなことに気をつけたらいいですか?」と俊介先生に質問をした時に、
「他愛ない雑談を大切にしてください」とアドバイスを受けたことを思い出し、
過食の話は極力せず、紗月の好きなことや楽しいことを聞くこと、紗月の興味に乗っかることを意識してやってみたりもしました。

そうすると、今まで私が気付けていなかった紗月の世界を感じることができるようになりました。

例えば、アイドルがデビューするまでを応援する番組を紗月と一緒に見た時。
私自身は、アイドルの追っかけにはなんとなく抵抗感があったのですが、紗月が楽しそうにたくさんの説明をしてくれて、「あ、そうか。この子はこんな風に、この若者たちの成長を見てたんだな」とわかり、新しい紗月との出会いを体験することができました。

私にとってはわけわからんYoutuber(ユーチューバー)の動画を、深夜2時頃まで一緒に見たりもしました。
それが、意外にも面白かった。

雑談って大事だな、子どもが夢中になっていることを一緒にしてみるって大事だなと改めて思いました。

俊介先生からも、
「今はとにかく紗月さんの話しをしっかり聞いてください。
今は本人がどうするか待ちましょう」と言われていたので、

内心、本当にそれで大丈夫やろか・・・と思いつつ、
色々言いたくなるのを堪えて、話をしっかり聞くことにしました。

ウォーキングをしている時が一番よく喋ってくれる:カウンセリング(摂食障害)

ウォーキングをしている時が一番よく喋ってくれるので、
一緒に歩き、紗月のいろいろな話しを聞きました。

紗月の気持ちの切り替えチャンネルが増えていき、
推しについて熱く堂々と語れるようになってくると、
たとえ私が喋りすぎてしまったとしても、
「ちょっと待って、私に喋らせて!」と、自分で会話の流れを軌道修正して、
イキイキと話しを続けるということも増えてきました。

小説出版の壁

小説出版の壁:カウンセリング(摂食障害)

小説の出版について、最初は強気だった紗月ですが、
いざ編集さんとのやり取りが始まると、

「あかんわ。このストーリー書けへんわ。無理。編集さんに『書けません』て言わなあかん」
「断るんか。断るのかなぁ。でも書けへんし・・・違うテーマに変えてもらおうかな」

と、悩みごとがどんどん出てくるのでした。
悩みに悩んで、小説のテーマを変更。
変更後のテーマは不倫スレスレの話。

私:もう、(小説のテーマが)変なのばっかりやな。

紗月:いや、こんなもんや。
でも不倫にすると、ドロドロして人気なくなるし・・・。

(ああでもないこうでもないと案を練る紗月)

紗月:あかん。先が続かん・・・。
どうしよう困ったな。
ストーリー続かへん。困った。どうしよう・・・。
悩む。もうほんまにどうしよう。

悩む。もうほんまにどうしよう。:カウンセリング(摂食障害)

ストーリーに悩んでいたと思えば、

紗月:編集さん雑すぎる。
この前校正して出したのに、出す前のやつ見て返事がくる。
あかんわ、ここ。

友達に相談したら、
「編集さん信用できんかったら断ったほうがええ」って言うんやけど、
断ってええのかな。
穴開けてしまうし。
断ったり、編集さん怒らせたりしたら、次から仕事来なくなるし・・・どうしよう。

私:そうか、それは困ったな
(言いたいことは我慢我慢)

(言いたいことは我慢我慢):カウンセリング(摂食障害)

紗月:うーん・・・でも、これはやりたくない仕事や。
続かへん続かへん。止まってしまう。

私:確かにな。嫌な仕事は遅くなるし、集中できひんよな。

紗月:おかん、嫌な仕事する時どうしてんの?

私:え?「これ苦手です。時間かかります」って先に上司に言うとく。

紗月:そんなことしてええの?

私:うん。うちらの仕事は時間勝負やし。
人は他にもいるから他の人に変えてくれる。
それで、得意分野の仕事にまわしてもらってる。
その方が早いし、全体的にはかどるやろ。

紗月:おかんみたいにズケズケ言えへんわぁ。どうしよう・・悩む・・・。

悩み続ける紗月。

悩んで出した紗月のこたえ

悩んで出した紗月のこたえ:カウンセリング(摂食障害)

そんなことがあった次の日。

紗月:おかん、結局あの話断ることにした。

私:そうか良かった。

紗月:で、断る理由はやっぱり家庭の事情が一番無難かなーって思って、
「家の都合で」って言ったんやけど。
普通それって「そうですか」で終わらへん?
ところが「家庭の事情って何ですか?差し支えなければ教えてください」って言ってくんねん。しつこい!
で、その理由を考えてるんやけど・・・。

おかん事故で入院した。
おかんコロナで入院した。
それでおばあちゃんの世話しなければならんなった・・・とか。

私:ちょっとそれほんまにありそうやからやめてくれ。
でも「おかんが過労で倒れた」はありかな。

紗月:それいいやん。それにするわ。

こうして紗月は、
「おかんは過労で倒れ、
私自身もとても小説を書ける状態じゃないので今回は辞退します」
と断りのメールを送ったそうです。

カウンセリング卒業の予兆

カウンセリング卒業の予兆:カウンセリング(摂食障害)

その後、嘘ついたこと・仕事を放り投げたこと・ぽっかり穴が開いたことを理由に、
また例によりダラダラウジウジお菓子を食べ、最終的には隠れ食べ・・・。

けれど、次第に「そんな自分が嫌になった」と話してくれるようになり、
少しずつ、食べ物にすがることから自分で離れられるようにもなりました。

そんなある日、仕事を断ったにもかかわらず、例の出版社から契約書が届きました。

紗月:仕事先にさせておいて、今、契約書っておかしくない?

(契約書の内容を読んでみると、著作権も印税も、
作者の所有物になるものは一切会社の権利になっており、
毎回の原稿料のみが支払われるという、とんでもない契約内容でした。)

紗月:断ってよかった。先に仕事させといて、契約は後なんて変やなと思ってた。
危うく騙されるとこやった。
嘘ついたの悩んでたけど、こっちの方が大嘘やからこれでチャラや!
私は悪くない。向こうが悪い!

私:そうだそうだ。よくやった!えらい!!

そうだそうだ。よくやった!えらい!!:カウンセリング(摂食障害)

本当に偉いと思いました。

私も、社会人として働いてきて思います。
一番しんどいのは、断るときや人に仕事を頼むとき。

紗月はたくさん悩んだけれども、最後は紗月自身で決めて断ることができました。
「断る時にうそをついてしまった」と悩んでいたけれども、自分で立ち直ることができました。

「もうカウンセリングを卒業しても、大丈夫かもしれない」そう感じた瞬間でした。

カウンセリング卒業

カウンセリング卒業:カウンセリング(摂食障害)

そしてついに!先生から「そろそろ卒業しますか?」とお話しがありました。
ちょうど、紗月が友達と京都へ旅行に行くことになっていた時期でした。

旅行に一緒に行く友達はスタイルのいい子。
紗月はその子に対して劣等感を感じているようでした。
そのことを俊介先生に相談すると、
友達との旅行がうまくいって、旅行から帰ってきてからも、
”ウジウジだらだら食べ”が出なかったら卒業ということになりました。

そして、無事カウンセリングを卒業することができました。

無事カウンセリングを卒業:カウンセリング(摂食障害)

手記執筆へ

手記執筆へ:カウンセリング(摂食障害)

淀屋橋心理療法センターを卒業した後は、昔のことが嘘だったかのように日々が慌ただしく流れていきました。気がついた時には、あっという間に2年が経とうとしていました。

そんなある日、「体験談を書いてみませんか?」と俊介先生からメールが届きました。

カウンセリングに通っていた時に記録していたメモを読み返す:カウンセリング(摂食障害)

カウンセリングに通っていた時に記録していたメモを読み返すと、紗月の叫び声が聞こえてきます。
紗月の悲痛な声や、それを上手に聞いてあげられなかった母の声・・・。
あぁ、これでは悪くなるわな・・・と思いながら読み進めていくうち、
まるで大河ドラマのように面白く、
「人の人生ってこんなに面白いものなのか」
「何気ない日々の暮らしにこんなにドラマがあるのか」と、我ながら感動していました。

成長の過程を見続けるのは本当に面白く楽しいことです。

小説出版と紗月がくれた言葉|後日談

小説出版と紗月がくれた言葉|後日談:カウンセリング(摂食障害)

卒業後、一年目の夏。 紆余曲折ありましたが、他の出版社からも紗月の小説を本にしないか?と声をかけてもらえ、紗月の小説は出版されました。

読んでみると、公園で歩きながら話してくれた内容が挿絵になって現れてきました。 けれど、「え?なんで??これ、なんで恋愛に発展するの?このまま友情ものの方がしっくりくるのに」と感じ、紗月にそう伝えました。

紗月:そうやねん。 そやろ?私もそう思っててん。 だから編集さんにこれは友情のまま書かせて欲しいって、何回も言うたけど、 「それじゃ売れません。読者は恋話を期待してます」って言われて、 「いつになったら恋愛に発展しますか?」って言われて・・・。 書きたない、書けへん・・ってなって、苦しかったわ。

ほんまに1行も書けへんかった。

私:これがあの1カ月スランプだった時?それは苦しかったよなぁ。

紗月:つらかった。

私:それなら、友情編、本当に書きたかったストーリーを自分だけの小説で書いて残しときよ。

紗月:いや、これはもうこれでええねん。 この子らはこういう形で世に出してもらえたから良かったと思ってる。 でも、商業で書くということは、必ずこんな葛藤があるわけで。 それにずっと耐え続けられるだけのメンタルがあるか?と言われると、それは無理だと分かった。 小説は趣味で続ける。 会社員としての仕事は、セーフティネットとして続けられることが分かったから。 会社員としての仕事は続ける。

小説は趣味で続ける。:カウンセリング(摂食障害)

カウンセリング初日に先生が言ってくださった、
「仕事も小説も、きっと自分で結論を出して進んでいけるようになりますよ」という言葉。

本当にそうなりました。

淀屋橋心理療法センターでのカウンセリングは、過食症の治療というよりは、人生の大事なことを自分で決めて進んでいける人になる過程に向き合う力をつけることであったような気がします。

本当にありがとうございました。


最後に、卒業ちょっと前に紗月が私に言ってくれたこと。

おかん。
おかんが淀屋橋心理療法センターに通ってくれて本当によかった。

違うところで違う治療を受けてたら、
一旦は治ったかもしらんけど、また繰り返してたと思う。

最初は、「治すのは私なのに何でおかんが行くの?」と思ったけど、
私だけでカウンセリングに行って、それで治っても、
おかんがそのままやったら、家で相談できる人がいないままやった。

けど、おかんがカウンセリングに行って先生に教えてもらって、
それでおかんが変わって、私の話しをちゃんと聞いてくれるようになったから、
私は家で相談できた。おかんっていう味方ができた。
何でも相談できる人がすぐそばにいるって、ほんまに大事なことなんやなってわかった。

私が良くなったのは、おかんが頑張ってくれたからや。
ほんまにありがとう。

私が良くなったのは、おかんが頑張ってくれたからや。ほんまにありがとう。:カウンセリング(摂食障害)

担当カウンセラー・福田俊介(臨床心理士)によるあとがき

担当カウンセラー・福田俊介(臨床心理士)によるあとがき:カウンセリング(摂食障害)

この体験談は、実は2022年7月にお母さんが完成させて下さいました。
(あとがき執筆時、2025年8月)

ところが、原文のまま掲載すると、個人が特定される可能性や、
カウンセリングの舞台裏が書かれてあった為、
どの部分を削ろうかなどと私が考えている内に、3年の月日が経ってしまいました。

体験談をお母さんから送って頂いて以降、
メールでその後のご家庭の様子を何度もお知らせくださいました。

摂食障害克服後、紗月さんが、お母さんや家族を助けるようになった

摂食障害克服後、紗月さんが、お母さんや家族を助けるようになった:カウンセリング(摂食障害)

私が感動したのは、摂食障害克服後は、紗月さん(仮名)がお母さんを助けるようになったことです。当センターでのカウンセリングが終了して、数カ月経った頃、紗月さんのおばあちゃんとお父さんが重い病気にかかられました。
その際、紗月さんがとても協力的だったそうです。
「おばあちゃんの容態が急変した場合はこうしよう」
「お父さんの世話をする時間をお母さんが確保できるように、こうしよう」など
と提案して、協力的に動いてくれたそうです。
その時のことを「心強かった」とお母さん。
また、大変な状況のお母さんの愚痴を一緒にお風呂に入って、聞くなど、
紗月さんもお母さんの悩みを聞いてくれるようになりました。

また、紗月さんのご実家は家業もされているのですが、
その仕事が忙しくなってきた時期に、従業員の方が突然辞めることになったそうです。
その時に、普段の会社員の仕事を続けながらも、「私が手伝う!」と家業を手伝ってくれたのは紗月さんでした。

摂食障害を克服後は、紗月さんがこのご家族のピンチを救ったのです。
「娘が強くなりました」とお母さまからのメールに書いてありました。

カウンセリング卒業後も続く紗月さんの変化

カウンセリング卒業後も続く紗月さんの変化:カウンセリング(摂食障害)

紗月さんが摂食障害だった時は、ご家族と一緒に食事ができない時期があったのですが、
克服後はこのようなメールを頂きました。
「家族で餃子の具を皮で包む作業ができて楽しかったです」
「娘が私の職場での愚痴を聞いてくれました。クリームパンを半分こにして食べながら」

体験談、HP掲載できるのか?

体験談、HP掲載できるのか?:カウンセリング(摂食障害)

さて、この体験談を掲載するにあたり、もう一つ問題がありました。
お母さんが紗月さんご本人の了解を得てなかったのです。
これをどうしたものか?

お母さんから紗月さんに当センターHPへの掲載許可を取ってもらうか?
でも、もしそれで「掲載しないで」、と言われたら。

そんなやり取りを私とお母さんがメールでしていると、
どうやらそのやり取りが、紗月さんに見つかってしまったようです。

そして、紗月さんは体験談を読み、こう言ったそうです。
「なんでRadwimpsやねん!私が好きなバンドは○○○○やろ!」
(個人が特定されない為、好きなバンド名を変更していた)

そこは突っ込んだそうですが、
体験談の掲載には反対されなかったそうです。

「以前の娘なら、こんなことが見つかったら、大パニックになっていたと思います。本当に娘は変わりました」
と、その後のお母さんのメールに書いてありました。
メールが見つかり、ヒヤッとしましたが、
思わぬ治療効果を確認することができました。

何度も壁を乗り越えたお母さん

何度も壁を乗り越えたお母さん:カウンセリング(摂食障害)

このケースでは、紗月さんがとっても不機嫌になることが何度も起こりました。
「なんで娘のためにここまでしないといけないんだ!」とお母さんも
何度もそう思われたのではないかと思います。

そして、その問題を乗り越える度に、紗月さんとお母さんの信頼関係は
強くなっていきました。
このお母さんは、本当に頑張られました。
お母さんの娘さんへの深い愛を感じました。

摂食障害の子を持つ親御さんへ

摂食障害の子を持つ親御さんへ:カウンセリング(摂食障害)

摂食障害のお子さんには、適した関わり方があります。
まず、それを頭で知識として理解頂く。
そこまでは割と簡単です。
難易度が上がるのは、頭で理解したことを、お子さんに対して実践すること。
これはなかなか容易ではありません。
また、効果をあげる為には学んでいただいた対応を継続して
頂く必要があります。この継続ができる親御さんとそうでない方に分かれます。

お子さんに合った対応を継続して頂くと、
徐々に手ごたえがでてきます。「うちの子、変わってきました」と。
その後もどんどんお子さんの成長を感じられるでしょう。

さー、このままスムーズにいけばよいのですが、
大抵の親御さんは何度か壁に向き合わなければいけなくなります。

順調に良くなってきていたのに、また過食して、すごく不機嫌になり、
親御さんとすごく揉めたり。
どんどん変化が起きていたのに、ある時から目に見える変化がなくなってしまい、
「本当にこれで大丈夫なのか?」と親御さんがすごく不安になられたり。
症状が重いケースでは、家出をしたり、部屋から出てこなくなってしまったり。

この何度か訪れる壁を乗り越えることができたら、
摂食障害が綺麗になったという状態がやってくるのです。

そして、この簡単ではないことを親御さんに継続して頂く際に、
伴走させて頂くのが我々カウンセラーです。

頑張って走って頂いた先に、明るい未来、明るい家庭が待っています。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

淀屋橋心理療法センター 臨床心理士・福田俊介

【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記 バックナンバーはこちらから

5章に渡る「過食症カウンセリング体験手記」をお読みいただきましてありがとうございました。以下にvol.1〜vol.4のバックナンバーをまとめておりますので、もう一度ご覧になりたい方は以下よりご覧ください。

【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.1〜vol.4

過食症カウンセリング体験手記| vol.1 「またみんなで食事ができるようになりたい!」:カウンセリング(摂食障害)
過食症カウンセリング体験手記| vol.2 「紗月にうまく対応するのは難しい」
過食症カウンセリング体験手記| vol.3 大荒れ、嵐の始まりと収束
過食症カウンセリング体験手記|vol.4 親子和気あいあい:カウンセリング(摂食障害)
               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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