家族の心理療法

子どもの心の傷を癒す家族の力

いじめ、不登校、無気力症などなど。子どもが心の傷に苦しむとき、本人と取りまく周囲の人間にも治療の視野を広げていくことが欠かせない。家族のなかでこそ、子どもは生きる力を獲得していく。家族とは何か、いかにして家族の治癒力を高めるか。具体的事例をもとにして、家族療法に学ぶ。

著者からのメッセージ

この本の内容をもっと的確に表すには『いじめの家族療法』が最適だと、あとで気がつきました。その方がより悩んでおられるご家族の手元に届く可能性が高くなるでしょう。それだけこの本は「わが子がいじめにあっているとわかった時、親はどうすればいいか」に、具体的に答えてくれる本だからです。

いじめ問題はもちろん現場は学校およびその周辺であり、家族が直接かかわることはでできません。「いじめを家族で論じても、らちがあかないでしょう。もっと学校ぐるみ地域ぐるみで対応していかないと。大きな大きな人間の本性にもとづいたテーマです」。こういうアドバイスをくださる方もおられました。確かにおっしゃるとおりです。それでもあえて「いじめの家族療法」を書きました。それはなぜでしょう。単にあまりにも「うちの子がいじめられてるんです。でもどうしていいかわかりません。だれか教えてください」という親御さんの声があまりにも多いからです。

「いじめ」にかんする本を求めて書店に足をはこぶと、人類の歴史をひもときながら歴史的考察、学校の有りようを見つめ治す教育論、地域社会をグローバルな視点で、といったいじめに関してさまざまな分野や視点から論じた本は多くでています。もうどれを買ったらいいのか迷ってしまいます。どれも「その通り」とうなづける本ばかりです。でも親御さんたちは「で、私たちは親として今ここでわが子にどう接したらいいのですか」という疑問がわいてきます。

不登校や閉じこもり、不安神経症などの治療をしながら、いじめに端を発しているケースが最近多いのです。面接のたびに具体的にだすアドバイスがとても親御さんたちを安心させ、子どもの心を癒す効果が高いことに気がつきました。「これはどうにかしてもっと多くの親御さんたちの疑問や不安にお答えできるようにしなくてはいけない」という感情がわき上がってきたのです。

そうした面接治療のなかから実際に役に立ったアドバイスや課題、言葉掛けなどを中心に集めたものがこの本です。わが子のいじめで困っておられるお父さん、お母さん、ぜひこの本を読んでみてください。こうしてみようというヒントがいっぱいありますよ。


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