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万引きとは?
万引きとは、商業施設などのお店で買い物をしているふりをして代金を支払わず、無断で商品を持ち去る犯罪行為のことです。警視庁の統計によると、令和3年における万引きの検挙数は50,369人で、万引き自体は近年減少傾向にあるとされています。しかし、中には示談などで検挙数にデータとしてあがっていないケースもあるため、軽視できない状態が続いているのです。
この記事では、万引きや窃盗について詳しく解説します。
万引きと窃盗の違いとは
万引きと窃盗は同じだと考えている人も多いでしょうが、定義として万引きは「主に商業施設などのお店の中にある物を盗む行為」を指します。一方、窃盗は「他人の持ち物を盗む行為」を指します。
窃盗は、刑法第235条によって「故意に他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められており、万引きは窃盗の一種に含まれます。
言葉の響きから、万引きの方が軽く捉えられがちですが、万引きも窃盗も深刻な犯罪である事には変わりはありません。
万引きをしてしまう理由(心理)
万引き行為には、さまざまな理由が存在すると言われています。どのような心理状態が影響し、万引きにつながるのかを以下に紹介します。
1.イライラや孤独感によるもの
1つ目の心理的な理由としては、イライラや孤独感によるものが挙げられます。この心理状態は、主に学生や新社会人などに多い傾向にあります。例えば、受験に対するプレッシャーや学校の成績などを親からうるさく言われてイライラしていたり、新しいクラスや職場などに馴染めず、孤独感を感じたりしている場合に当てはまります。
また、学校や職場だけではなく、家庭内でも孤独感を感じるケースもあるでしょう。親から十分な愛情を与えられない、一人で過ごすことが多いなどという場合でも、そのイライラや孤独感を紛らわせる方法として、万引きをしてしまうというケースが少なくありません。
2.欲しい物を買うお金がないから
経済的な理由から、学校でみんなが持っている物を買えなかったり、食べ物を買うお金すらなかったりという場合に、万引きをしてしまうケースがあります。実は、万引きで検挙される人の中で、万引きの理由の答えとして最も多いのが「お金がないから」だと言われています。
これは、大人だけに限らず子どもでもあり得ることで、自分の生死に関わる切羽詰まった状態になると、他に方法が思いつかず万引きをしてしまう場合もめずらしくないのです。
3.万引き行為を軽く考えている
例えば、非行傾向のある友達や先輩から誘われて、深く考えずに「みんなもやっているのだから大丈夫」という軽い考えで、万引きをしてしまうというケースもあります。特に、学生などは仲間内で自分だけが万引きをしないと仲間外れにされることもあるでしょう。そのため、「仲間外れにされるくらいなら万引きをした方が良い」と考えてしまうことも否めません。
また、バレなければ大事にはならないという思いや、ちょっとした遊びのような感覚で万引きをする場合も少なくないと言えます。
4.スリルを味わいたいから
特にお金がないわけでもなく、イライラ感もないのに万引きを繰り返す人の多くは、万引きをした時のスリルが忘れられずに、また万引きをしてしまうというケースが多いとされています。つまり、物を盗る時の緊張感や、万引きが成功した時の達成感など、日常生活の中ではなかなか味わえないスリルが、退屈な感情を忘れさせてくれる現実逃避の手段となる場合もあるのです。
いつ他人に見つかるか分からないスリルは、一時だけでも脳に快感を覚えさせ、そのスリルを味わいたくて万引きが常習化してしまう可能性が高いのです。
5.家庭環境の影響
イライラや孤独感などにも通じる部分でもありますが、機能不全家庭の中で育った子どもや、日常的に虐待されて育った子どもは、知らず知らずのうちに溜め込んでいる「辛い」という感情を発散する方法を知らないことが多くあります。そのため、何らかのきっかけで万引きをした際に一時的な快楽を覚えてしまい、再び万引きをしてしまうというケースも少なくありません。
子どもの場合は、辛い現実から逃避したいという理由もありますが、親に心配してほしい・意識を自分に向けてほしいなどのSOSのサインであるケースも考えられます。
6.摂食障害を持っているから
摂食障害は、本人も気づかないうちに心身に過度な負担を与えており、心身が悲鳴を上げているにも関わらず、過食や拒食をやめることができない疾患とも言えます。同時に、その状態を抜け出したいがために、何とかしてストレスを発散しようとさまざまな方法を模索します。
その方法の1つとして、万引きをしてしまう人がいるのです。摂食障害による万引きは、合併症として挙げられている問題でもあり、アメリカ精神医学会の診断基準では12%~24%の摂食障害の人が万引きを繰り返しているというデータもあります。
もちろん、摂食障害の人が全て万引きをするわけではありませんが、中には万引き行為の傾向がある方もおられます。
万引きをする人への対処法について
万引きを常習的に行っている場合、まずはその根本の原因となっているものに焦点を当てることが重要になります。万引きの理由として最も多いのが心理的な要因、つまりイライラや孤独感などその気持ちを誰にも相談できないというものが挙げられます。そのため、人とのつながりを出来るだけ持つようにして自分の素直な思いを共有できる場所を確保することが大切です。
このような場合は、自助グループやグループカウンセリングなど同じ思いをしてきた人たちが集まり、悩みや問題などを共有しながらストレスと向き合っていく場を利用するのも良いでしょう。万引きを繰り返す自分以外の人の状況を客観的に体験し、自分の行動を冷静に見つめ直す機会を持てることが期待されています。
万引きがやめられないのは窃盗症の可能性も
さて、ここまでで万引きをしてしまう心理的な理由などを解説してきましたが、実は同じ万引き行為でも精神疾患に含まれる「窃盗症(クレプトマニア)」に陥っているケースもあります。日本では、まだ認知度は低いですが、窃盗犯の1~2割を占めると言われています。
窃盗症は、盗みたいという感情をコントロールするのがとても難しく、本人の意思のみでは窃盗をやめることは困難です。また、認知度が低いゆえに、病気と気づかずに窃盗を繰り返し、何度も刑務所に入るという事例もあり、再犯防止にはきちんとした治療を受けることが重要になります。
しかし、現在の日本では、窃盗症の人を受け入れる医療機関はごくわずかしかありません。そのため、窃盗症の治療が浸透するまでには、まだ時間が必要な段階だと言えます。
当センターの治療について
当センターが得意とするのは、万引き(窃盗)を繰り返す若者の中で、寂しさが原因となって万引きが止められない人たちです。
その人たちは、寂しさが原因となっているにも関わらず、「寂しい」とはほとんど言いません。そのため、ご本人をしっかりと観察・分析してみないと寂しさが原因とはわからない場合がとても多いのです。治療のためのご本人への接し方(対応の仕方)にもコツが必要です。
当センターから親御さんへお出しするアドバイスを忠実に根気強く続けていただくと、数ヶ月で変化がやってきます。
「本当は寂しかった」と家族に本音を打ち明けるようになると、道半ばまできたと考えて良いでしょう。ご本人が完治への一歩を踏み出すことは可能です。
摂食障害の方の万引きに関しては、摂食障害を完治させてしまうというのが最も効果的な治療法なのです。そして、ご本人への対応方法に特別なコツが必要となります。
解決には正しい方向に努力することと、地道に努力することがとても大切です。
まとめ
万引きは窃盗の一種であり、年齢問わず万引きのきっかけや条件が揃えば、誰でも陥る可能性があります。特に、摂食障害が関係している万引き・窃盗や、窃盗症(クレプトマニア)による万引き・窃盗に関しては、本人の意思だけではコントロールが難しく、常習化してしまうケースが多いため、出来るだけ早く専門機関で治療につなげることが大切です。
日本では、まだ認知度が低い分野ではありますが、窃盗症は精神疾患にも分類されます。そのため、周囲も本人も病気だと自覚し、再犯防止への対処に取り組むことが重要になります。