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全般性不安障害とは
日常生活を送る上で、不安を感じることは誰にでもあるでしょう。しかし、過度な不安感が生じたり、言いようのない不安によって自分で自分をコントロール出来なくなったりする場合があります。このように、大きな不安を抱えて社会生活に支障が出る状態になることを、全般性不安障害と呼びます。
不安を感じる対象や症状の表れ方は人によってさまざまですが、全般性不安障害を発症すると、うつ病や強迫性障害などを併発することも少なくありません。そのため、全般性不安障害の症状に気づいたら、早期の段階から治療に繋げていくことが重要だと考えられています。
全般性不安障害(GAD)の症状
全般性不安障害の症状は、「心理的症状」と「身体的症状」に分けることができます。それぞれ表面上は他の病気と混同しやすいものが多いですが、患者さんにとっては日常生活に支障を感じるほど苦痛を伴う症状であるケースがめずらしくありません。そのため、患者さんの訴える状態も併せて捉えて行くことが大切です。
心理的症状
全般性不安障害の心理的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
・払拭することが出来ない過剰な不安を感じる
・漠然とした言いようのない不安が持続する
・自分が不安だと感じる対象から回避しないと、気が済まない(落ち着かない)など
・人に会うのが煩わしくなる
・根気がなくなり、物事に集中できなくなる
このように、全般性不安障害を発症すると、通常ならば気にならないような些細な出来事でも過剰に不安に感じ、そこから逃げることしか考えられないような状態に陥るケースが多くなります。人によっては、漠然とした見えない不安感から、外出もままならなくなってしまう場合も存在します。
身体的症状
一方、全般性不安障害の身体的な症状としては、以下のようなものが代表的です。
・不眠状態になる
・頭痛
・緊張感で体がこわばる
・首や肩のこり
・めまい、動悸
・発汗
・慢性的な疲労感など
・便秘や頻尿
全般性不安障害は、特定の状況に対して不安を感じるのではなく、ありとあらゆるものや活動に対して漠然とした不安を抱くようになります。そのため、ちょっとした体の不調を感じただけで、医学的な根拠がなくても、自分が何か大きな病気なのではないかと心配したり、家族が事故に遭うのではないかと不安になったりします。つまり、漠然とした不安を拭えないため物事に集中できなくなり、疲れやすくなるのです。また、それに伴って「不眠」「震え」「緊張」「発汗」「めまい」などの症状が現れやすくなるという特徴もあります。
全般性不安障害(GAD)の原因
全般性不安障害の直接的な原因は、現在のところ明らかになっていません。ただ、その中でも、以下のような精神的な原因と環境による原因があるのではないかと考えられています。
1.精神的な原因
・まじめで小さなことでも気になる性質
・先のことや過去のことを常に心配しやすい性格
・起こった出来事に、こだわりやすい性格
2.環境による原因
・震災など生命を脅かすような突発的な体験
・信頼していた人との人間関係の破綻
このように、患者さん本人がもともと持っている精神的な気質や環境的なストレスによって、全般性不安障害が発症する可能性は多々あります。また、その他の原因として考えられているのが、全般性不安障害を持つ人の家族歴や脳機能異常などです。しかし、どれか1つだけが原因ではなく、複雑に絡み合って全般性不安障害を発症するとされています。
全般性不安障害(GAD)の検査方法や診断
全般性不安障害は、不安を生じる状況や症状の出現様式に関連した、さまざまな情報から総合的に判断して診断されます。そのためには、心理検査などを行い、患者さんがどのような状況や物事に対して不安な感情を抱くのかを細かく確認する場合もあります。
さらに、全般性不安障害は甲状腺機能亢進症などの身体的な病気が原因で生じる可能性があることから、血液検査なども実施します。このように、心理的な側面と身体的な側面の両方からの検査を経て、最終的にはDSM-5などの診断基準を参考にしながら全般性不安障害の診断を確定して行くのです。
全般性不安障害(GAD)の治療方法
上記でも触れましたが、全般性不安障害の原因は、まだはっきりと解明されてはいません。そのため、根本的な治療というよりも、患者さんが苦しんでいる症状に対して、対処療法のような形で症状を抑えつつ、徐々に感情のコントロールを出来るようにすることが大切だとされています。
全般性不安障害の治療は、もともと自分の身を守るために備わっている感情のバランスを正常な状態に戻すことを念頭に行われます。つまり、過剰なストレスや心のバランスの乱れを整えながら、患者さんが感じている不安症状のコントロールを図っていくのです。
1.薬物療法
薬物療法では、不安症状のコントロールに必要な「抗不安薬」や、心のバランスの乱れを整えるための「抗うつ薬」を中心に、患者さんが本来持っている力を取り戻していけるよう、治療を進めます。また、不安症状が強くて眠れない場合には、「睡眠薬」なども処方するケースがあります。
さらに、薬物療法はカウンセリングなどの心理(精神)療法と並行して行うことが重要です。正常な日常生活を維持できるようにするためには、薬のみで症状を抑えるのは効果的ではありません。患者さんがもともと持っている感情のコントロール機能を取り戻すことが大切だと言えるのです。
2.心理(精神)療法
全般性不安障害の治療には、カウンセリングなどの心理(精神)療法が重要な役割を担っています。その中でも認知行動療法は、不安を感じる状況において、今までとは異なった捉え方や考え方に自ら気づき、より良い行動に修正するよう方向づける治療方法です。しかし、不安を感じる対象や不安の感じ方は、人によって全く異なります。そのため、1人1人に対して適切な方法を選択しながら治療を進めて行くことが重要です。
家族療法
全般性不安障害の家族療法は2段階に分かれます。気力の落ちている人も多いので、そういう方には親御さんや配偶者の方に協力していただいて、我々と共に本人さんの元気の出るパターンを探り当てます。元気になっただけでは、不安は解決しないので次の段階では、不安に対する耐性を高めるトレーニングを行います。系統的脱感作と呼ばれるものに近いものです。この段階では、本人さんの参加が必要になります。
全般性不安障害(GAD)の予防方法
全般性不安障害の発症自体を予防することは、患者さん自身がいつ不安を感じる状況や物事が起きるか予測できないため、難しいと言えるでしょう。しかし、全般性不安障害を悪化させないためには、不安だと感じている状況に対して、「大丈夫」「不安と思っている出来事は起こらない」という実体験を積み重ねていくことにより、解消されていきます。
早期の段階で医療機関を受診し、服薬で一時的に不安を抑えながら、不安だと感じてしまう考え方の癖や捉え方を修正していくことが一番有効な方法です。また、全般性不安障害は複数の原因が複雑に絡み合って発症することが多いため、普段から自分の思考の癖を認識しておく点も予防に役立つと考えられています。
まとめ
全般性不安障害は、突然何かしらのきっかけによって発症し、予想できない状況に対して患者さん自身もコントロールが難しい病気でもあります。そのため、全般性不安障害を発症すると、自力で不安を解消するのはとても困難だと言われています。日常生活に支障が出るような不安が頻繁に生じるようであれば、早めに医療機関を受診し、適切な治療に結びつけることが重要です。