うつ病とは?

うつ病について

うつ病について

ストレスの多い現代において、社会問題ともなっているうつ病。生涯有病率が100人のうち6人程度と身近な病気となったうつ病は、誰でも発症する可能性があります。うつ病は、日常生活において支障が出るほどの気分の落ち込みが続き、何事においても意欲が湧かなくなったり、喜びを感じなくなったりする精神疾患です。

この記事では、うつ病の症状や原因、治療方法などについて解説します。

うつ病の症状とは

うつ病の症状には、主に以下のような「精神的な症状」と「身体的な症状」が現れます。

精神的な症状

  • 気分が落ち込む
  • 何事にも無関心になる
  • 意欲がなくなる
  • 不安、焦り、イライラ感が増える
  • 喜んだり楽しんだりすることが出来なくなる
  • ぼんやり過ごす日が多くなる
  • 物事を悲観的に考えるようになる
  • 集中できない
  • 仕事でのミスが増える
  • 口数が少なくなる
  • 外見や服装などを気にしなくなる
  • 飲酒量が増えるなど

身体的な症状

  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • 睡眠障害(不眠や過眠)
  • 動悸
  • 耳鳴り
  • 食欲不振(または過食)
  • めまい
  • 味覚障害
  • 腹痛や胃の不快感
  • 腰痛
  • 下痢、便秘
  • 生理不順
  • 性欲減退、勃起不全
  • 肩こりなど

うつ病の原因

うつ病の明確な原因は、未だはっきりとは解明されていません。しかし、原因の候補としていくつか考えられているものがあります。

1.神経伝達物質が関与している

1つ目の原因候補としては、情動行動を制御する神経伝達物質の中の、「セロトニン」や「ドーパミン」の機能低下が関与するという考え方です。

セロトニンは、私たちの心を落ち着かせる作用のある物質で、ドーパミンは活動性を高めて喜びや快楽を感じさせる働きがあります。この2つの神経伝達物質の働きが低下することで神経の働きのバランスが取れなくなり、うつ病が発症すると言われています。

2.神経栄養因子が影響する

2つ目の原因候補としては、脳の中の海馬や前頭葉などの領域で、学習機能に重要な神経栄養因子が減少することが影響するというものです。脳の中では、外部からストレスを受けると、「グルココルチコイド(コルチゾール)」というホルモンが分泌されます。

この「グルココルチコイド(コルチゾール)」が、長期的に過剰に分泌され続けると、神経細胞が傷害されると言われており、このことによってうつ病を発症するというメカニズムです。

・当センターでは

中等度のうつ状態でも本人だけでなく本人の親御さんや、結婚している人の場合は配偶者が共に治療をする鬱病に特化した家族療法を行えば薬の投与がなくてもきれいに劇的に改善するケースが当センターでは見られています。
このことから、必ずしも脳内物質の変化が全ての原因とは考えなくても良いのではないか?というのが当センターの考えです。

うつ病の検査方法や診断

うつ病の検査方法は、薬の副作用やホルモン異常による原因でない限り、他の病気のように血液検査や画像による検査で発見することは難しいとされています。なぜなら、数値的には異常が見られることがほとんどないからです。そのため、うつ病の診断をするためには、「精神科」や「心療内科」、「メンタルクリニック」などを受診し、直接当事者と医師が話すことにより、診断が確定されます。

多くの精神科や心療内科では、事前に当事者がどのような症状で悩んでいるのかを記入した問診表をもとに、診察を進めていきます。また、現在のうつ病の診断基準は、アメリカ精神医学会による「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」と世界保健機関(WHO)による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」の2つが用いられています。

うつ病は、DSM-5においては「抑うつ障害群」という病気の1つとして分類されており、上記の診断基準に基づいて症状が2週間以上続いている場合に、「うつ病」と診断されるのです。

うつ病は他の病気との区別が難しい場合も多い

うつ病は他の病気との区別が難しい場合も多い

うつ病の基本的な症状として、気分が落ち込むなどのうつ状態が挙げられます。しかし、うつ状態を引き起こす病気は、うつ病だけではありません。そのため、他の病気との区別が難しい疾患とも言われています。

うつ病以外に、うつ状態を引き起こす病気としては、下記のようなものが存在します。

  • ・双極性障害
  • 気分変調症
  • 適応障害
  • 不安障害
  • 摂食障害
  • 統合失調症
  • 脳血管障害
  • 認知症
  • 甲状腺機能障害
  • 全身性エリテマトーデス
  • 消化器疾患
  • 心疾患
  • 腎疾患
  • 糖尿病など

上記の疾患の影響で、うつ状態が引き起こされるケースもあるのに加え、治療中に用いられる「ステロイド剤」や「インターフェロン」などの薬の副作用として、うつ状態が表面化する場合もあります。

さらに、うつ病の症状は精神症状が強く出るとは限らず、身体症状の方が目立つケースも。このような場合、内科や整形外科などで異常が見つからず、見逃されてしまうことも少なくありません。このように、うつ病は他の病気との区別が難しく、発見が遅れてしまう可能性も高いのです。

うつ病になりやすい人の特徴は?

うつ病は性別や年代を問わず、誰でも陥ることのある疾患です。しかし、うつ病になりやすい人の性格には特徴もあります。例えば、

  • 生真面目
  • 完璧主義
  • 自分に厳しい
  • 人に気を遣う

このような性格が挙げられます。

また、ストレスに対しての耐性が低い人もうつ病になりやすいでしょう。例えば、受験や仕事での失敗や、家族などの死別によって受けたストレス。逆に、悲しいことではなく、新しいことへのチャレンジや環境の変化などのストレスにうまく対応できない人も、うつ病を発症する可能性もあります。

うつ病の治療方法

うつ病の原因や症状は広範囲に及ぶため、治療も様々な方向からアプローチする必要があります。しかし、基本的な治療方法は以下のとおりです。

・薬物療法

うつ病は、根気よく長い期間をかけて治療することが重要です。そのため、薬物療法は外せない方法となります。現在の日本では、主に「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」や「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」と呼ばれる「抗うつ薬」を用いた治療が主流となっています。しかし、うつ病の治療で使用される薬の効果は、服用してすぐに現れるものではなく、一定期間飲み続けることで徐々に効果が実感出来るようになっています。

そのため、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の効果が出始めるまでの間、当事者の苦痛を出来るだけ取り除くために、「抗不安薬」や「睡眠導入剤」、「非定型抗精神病薬」などを適切に用いながら治療を進めて行きます。

・精神療法

精神療法は、うつ病の治療が終わった後も再発を防止するという点において非常に有効な治療法だと言われています。精神療法の中でも、「認知行動療法」と「対人関係療法」は、効果があるとされています。

認知行動療法は、何か困難な状況にぶつかった際に、すぐに物事を悲観的に捉えるのではなく、自分の考え方の癖を改善しながら、うつ状態の悪化を招くマイナス思考の悪循環を断ち切る方法を学ぶというものです。

一方、対人関係療法は、うつ病の発症のきっかけとなった対人関係で起こっていた問題を解消し、当事者のストレスを軽減させることを目的に行われます。対人関係の問題が改善すると、当事者の感情も前向きになりやすく、治療に対して積極的に取り組めるようなるのです。

・当センターの心理療法

本人さんの治療意欲が低かったり、うつ状態が強い時は精神療法に取り組む意欲がなかったりと否定的になりがちですが、当センターでは、身近に本人さんが治るために協力を惜しまない家族の方がいれば、ご本人と家族のメンバーとの交流パターンを工夫するアドバイスを差し上げます。例えば本人の奥さんにきめ細かくアドバイスすることで軌道に乗れば、薬を飲んでいても薬を飲んでいなくても、かなりの改善治癒が見られる場合があります。 うつ病に特化した家族療法です。

うつ病・抑うつ状態・双極性障害(双極Ⅱ型)
https://www.yodoyabashift.com/symptom/depression/

・環境の調整

うつ病に陥った当事者に対する環境の調整も大変重要です。つまり、当事者が外部から受けているストレスを出来る限り減らすように努めることを行います。

例えば、仕事においては時短勤務の導入や配置の変更、休職。家庭では家事の分担などを進め、当事者が治療に専念できるようにサポートします。当事者にとって無理なく過ごすことが出来る環境が用意されると、それだけで回復への近道となります。

うつ病の回復までの流れ

うつ病の回復までの流れ

うつ病は発病から回復まで、次のような流れを取ります。

・急性期(診断~3ヵ月程度)

まず急性期と呼ばれる段階は、うつ病の診断が確定して薬物治療などを開始し、症状が少し緩和された状態を言います。また、薬の量を主治医と共に相談しながら効果が現れるまで根気強く治療を継続する時期でもあります。急性期は、特に環境の調整や休養が重要なポイントとなるので、治療の要と言える段階です。

・回復期(4~6ヶ月以上)

回復期は、うつ状態が良い時と悪い時の差が激しい時期でもあり、回復したと思って勝手に薬を減らしてしまう危険性が高いとも言われています。回復まであと少しという段階なので、当事者の焦りが出やすい時期でもあります。しかし、今まで通り薬物治療と精神療法を継続していくことが重要です。

特に、この時期は感情の波が激しいため、焦って職場へ復帰してしまうのは危険です。再発を防ぐためにも、この時期は社会復帰後のシミュレーションをしつつ、主治医と話し合いながら無理なく出来ることを行っていくようにします。

・再発予防期(薬物治療1~2年)

回復期を過ぎて、症状の波が小さくなってくるのが再発予防期です。少しずつ復職できるように体を慣らしていく時期でもあります。しかし、再発も多く、家族や周囲の人と話し合い、調子が悪くなり始めるサインや環境を再度把握しておきましょう。そうすることで、確実にうつ病からの回復が可能になります。

うつ病の予防方法について

うつ病の最大の予防方法としては、十分な睡眠と適度に休息を取ることが大切です。うつ病は、精神的・身体的なストレスが引き金となり発症する疾患でもあるため、同じような条件が重なれば再発の危険性はあります。そのため、無理をせず過ごすことが予防として有効なのです。

また、体のリズムを整えることも意識しましょう。うつ病になると、生活リズムが逆転してしまう人が多く、体のリズムが乱れがちになります。うつ病を予防するためには、1日24時間の周期に体を合わせるため、日光の光を浴びるように心がけたり、就寝・起床の時間を一定にしたりすることが大切です。

さらに栄養バランスのとれた食事を心がけるのも重要です。うつ病の原因であるストレスに対抗するためには、体内の栄養素が整っている必要があります。脂質や糖質の多いジャンクフードばかりを摂っていると体に負担がかかりやすいので、注意してください。

注意が必要な女性のうつ病

女性は、女性特有のホルモンバランスの変動によって体調を崩しやすい時期が多く、その後も結婚や子育てなどのライフステージごとに、様々なイベントが起こります。そのため、男性よりも女性がうつ病を発症しやすいと言われています。

・思春期

思春期の女性は大人の体へと変化していく時期でもあり、生理の始まりによってホルモンバランスが乱れやすくなります。この時期のうつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が顕著で、反抗的になったり自傷行為に走ったりしてしまうケースもあります。

うつ状態がきっかけで不登校になってしまったり、自分でコントロール出来ないイライラなどによって感情が不安定になったりしやすい人が多いのです。

・妊娠、出産時

妊娠期の女性がうつ病を発症する割合は、6.5~12.9%と言われており、8人~12人に1人がうつ病を経験しているというデータもあります。特に妊娠時のうつ病は、「産後うつ病」の危険因子ともされ、出産を控えたこの時期の女性の心身の状態には、注意をしましょう。

・子育て期間

出産後の子育て期間は、慣れない生活リズムによって体調を崩しやすくなります。また、ストレスを一人で抱え込むことが原因で、うつ病を発症するケースが増える時期でもあるでしょう。特に、実家が遠くて里帰り出産が出来ない女性の場合は、子育て中の悩みを相談できる人がいなく、不安や負担に押しつぶされてしまう場合も。

初めて出産・育児をする女性は、特にこの時期は注意が必要になります。

・摂食障害

摂食障害は主に思春期に発症し、自分の体型や体重に著しくこだわり、痩せを追求する病気です。どんどん痩せていく拒食症、たくさん食べて太ったり嘔吐を繰り返す過食症があります。特に、過食症は痩せを追求したり、太ることを拒否しながら食欲に負けている状態なので、自己肯定感が低くなり、うつ状態に陥るケースがしばしば見られます。

うつ病のまとめ

まとめ

うつ病は、真面目で責任感の強い人が発症しやすいケースが多く、本人も気づかないまま病状が悪化してしまう危険性のある病気です。特に、努力家の人は残業が続いていたり、自分ひとりが家事を負担していたりしていても、もっと頑張らなければと思いがちで、病気の発見が遅れてしまう場合が多いと言われています。

そのため、心身の状態がいつもと違うと感じたり、規則正しい生活リズムが送れていないと思ったりする時は、早めに対処することがうつ病の発症を防ぐ近道だと言えます。

2022.12.19  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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