共依存とは?

共依存とは? 

                            

共依存とは、特定の相手と自分自身が互いになくてはならない存在になり、両者にとって過度に依存し合う関係性のことを指します。つまり、お互いに相手無しではいられず、相手にばかり常に意識が向いている状態になっているとも言えるのです。また、共依存に陥るケースには、様々な要因があるのをご存じでしょうか?この記事では、共依存について詳しく解説します。

共依存とはどういうもの?

                  

共依存は、先ほども軽く触れましたが互いに過度に依存しあい、相手無しでは自分自身の維持が出来ない状態に陥ることを意味します。共依存は、1970年代にアメリカで生まれた言葉とも言われており、特にアルコール依存症に苦しむ夫を支える妻の様子を基に広まったものでもあります。

共依存は、他人との間で起こるというよりも、家族や恋人など近しい親密な関係の者同士で生じやすい状態とされており、外からは見えづらいという特徴もあります。また、お互いに、相手にとって自分がいなければだめだという考え方から、共依存に陥るケースも少なくありません。

共依存に陥りやすい人の特徴

                

次に、共依存に陥りやすい人の特徴を見ていきましょう。ここでは、主な特徴として、4つの項目に分けてお伝えします。

1.自己肯定感が低い

自己肯定感が低い人は、自分自身で自分の価値を感じるのが難しく、相手に尽くすことで自分の存在価値を見出そうとします。どんな状態の相手でも受け入れ、それが自分の存在価値に繋がっているという間違った価値観が行動へと現れ、共依存に繋がってしまうと考えられているのです。

また、相手からの行為が、自分にとってプラスになるかマイナスになるかの判断もしづらくなるので、ますます負のループから抜け出せなくなります。

2.過度に面倒見が良い

困っている人を見ると、放っておけない人を見たことはありませんか?これが過度な状態でなければ問題ないのですが、過度に面倒をみたり世話を焼くことで、相手を支配したり行動をコントロールしようとしたりする意識が入ってくると、共依存になりやすい状態が生じると言われています。

3.他人から批判されるのが怖い

自己肯定感が低い人の特徴に似ていますが、他人からの評価によって自分の価値を測ろうとする人は、相手にとって都合の良い行動を取ろうとします。つまり、相手が望む行動をすることで批判されないという安心感を得て、相手も都合よく動いてくれる人を求めるので、共依存になりやすい関係を引き寄せます。

4.相談できる人が少ない

共依存になりやすい人は、困ったことがあった時などにそれを客観的に見てくれる相談相手が少ないという特徴があります。そのため、自分にとって大切な存在だと認識した数少ない相手に過度に依存してしまう傾向があるとされています。自分と相手以外の人間関係が気薄なので、自分でも気づかないまま共依存に陥ってしまうケースが多いのです。

共依存の原因について

                   

共依存の原因には、どのようなものがあるのでしょうか?以下に、共依存の原因として挙げられやすい3つの要因をご紹介します。

1,生い立ちが影響している

例えば、「機能不全家族」と言われる環境で育った場合、相手との適切な距離感や「自分の存在はどういったものであるのか」などの価値観を正しく理解できないまま、子どもは成長することが多いと言われています。その結果、本来の家族の在り方を知らないまま他者と関わるようになるため、他者との関係性へダイレクトに影響を及ぼしてしまうのです。

2.自己肯定感が上手く育たなかった

生い立ちだけではなく、自己を確立する思春期に経験した挫折などから、自己肯定感が上手く育たず他者へ依存することで自己を保とうとするようになってしまうケースもあります。また、コンプレックスなどを抱えている場合も、自己肯定感が上手く育たず、共依存になりやすいと言われています。

3.アダルトチルドレンの立場にいた

機能不全の家族のもとで育ったり、家庭の中で傷ついた経験があったりして、アダルトチルドレンの立場にいた人も、共依存に陥りやすいとされています。具体的には、他者と良好な関係性を構築することが難しいゆえに、共依存になってしまうケースが多いです。

共依存の治療法や対策法

                   

共依存は、日常生活を送るうえで支障が出る状態になるケースがめずらしくありません。しかし、共依存は病気ではないために、直接的な治療方法はないのが現状です。表面化している症状を緩和させるために、以下のような対策方法があります。

1.薬物療法

共依存に対する薬物療法は、基本的には当事者の悩んでいる症状や問題に、対処する形での方法になります。例えば、共依存を克服する際に不安感が強くなったり、眠れなくなったりしてしまう人がいます。

そのようなケースにおいては、必要に応じて抗不安薬や睡眠導入剤などを処方し、当事者が安心して共依存克服のために、自分自身と向き合える状況を整えるように努めます。

2.心理療法

共依存に陥ってしまう要因には、心理的な問題が大きいとされています。そのため、薬物療法と併用したり、単体で心理療法を実施したりします。これを通して、正しい自己肯定感や価値観を持てるように導いて行くのです。

例えば、同じように共依存に陥ってしまった人たちが集まる自助グループへの参加や、公認心理士や臨床心理士などによるカウンセリングを受けるのも有効です。支援者が過度に関わるのではなく、適度な距離感を保った人間関係を当事者に体験させることで、徐々に依存傾向から抜け出せるのを目指します。

依存される側が共依存に気付くことが重要

          

共依存と聞くと、どうしても依存している側の問題として認識されがちな部分があります。しかし、実は支えている側の行動によって共依存が悪化しやすいというケースもあるのです。

献身的に支えることで、支える側は「良い人」という印象を持たれやすいですが、過度に相手を支えサポートし過ぎることで、相手の自由な発想をなくし、自分で行動する力を奪ってしまっている可能性が高いとされています。

共依存は、互いに依存し合う関係性のため、表面上は分かりづらいですが、どちらにも原因が潜んでいます。依存する側も依存される側も、その問題に気づき解決していく意識を持つことが、共依存から抜け出すためには非常に重要な考え方だと言えるでしょう。

まとめ

                       

共依存は、家族や恋人など、大変近しい親密な関係性の中で起きやすい状態だとされ、外部からは見えづらい関係性とも言われています。一見、支えあっている良好な人間関係に見える共依存ですが、互いに相手に過度な依存心があり、相手をコントロールすることで自分自身を保っている危うい状態でもあるのです。

共依存は、当事者がしっかりと状態を意識し、解決するために少しずつ行動していくことが重要です。しかし、当事者だけで解決しようとするとなかなか負のループから抜け出せない場合も多いため、第三者からの客観的なサポートを得ながら克服して行くことが大切になります。

淀屋橋心理療法センターの考え

                    

共依存という考え方はわかりやすい概念である反面、共依存を意識して「やめよう」「抜けよう」としても、意識すればするほど沼のように余計抜けにくかったりします。
共依存を意識するよりも、より建設的な関係のあり方について知り、工夫されたほうが上手く抜けられると思います。
当センターはそのような関係づくりのお手伝いが得意です。

2023.03.03  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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